データ保存に関する欧州指令の草案に関する情報が漏洩し、欧州連合(EU)が加盟国に対し、全ての通信記録を最低半年間保存するよう要請する予定であることが明らかになった。
この欧州指令の最新版は、欧州の公民権擁護団体であるEuropean Digital Rights(EDRI)が発表した。それによると、通信サービスプロバイダには、顧客の電話、メール、ファックス、ショートメッセージサービス(SMS)、インスタントメッセージ(IM)、さらには、携帯電話による通話がなされた詳細な情報の保存が義務付けられるという。同指令は保存されるそれらの情報の量、種類、時間の長さの統一を目的としている。
仮に同指令が可決されれば、通信企業各社は、「固定/移動体通信サービス」に関する情報を1年間、そして、インターネットプロトコル(IP)ベースの通信に関する情報を6カ月間保存することが義務付けられる。
VoIP(Voice over IP)ユーザー同士の通話に関する情報の保存期間は6カ月だが、IPネットワークからで発信され、通常の固定電話や携帯電話に接続された通話のデータは1年間保存される。
通信会社が保存するデータには、通話やメールの内容そのものは含まれない。だが、警察はそれらのデータにより、送信者と受信者を特定し、さらに、携帯電話通話の場合は発信者がいた位置を確認することができる。
EUはこの指令について、「プライバシーの侵害の程度は限定的」であり、また欧州中の通信企業が顧客に関する大量のデータの収集/保存を義務付けられるため、「通信業界の競争力への影響も限定的」であると説明している。ただしISPなどについては、指令が導入された結果、負担させられた費用を補償する必要があるとしている。
欧州委員会(EC)は、これら措置は今や「緊急」を要し、犯罪者やテロリストの「活動阻止、捜査、発見、訴追」に必要だと主張している。
多くの人権団体や公民権擁護団体が一致団結してこのデータ保存に関する指令に反対しており、ECに対し計画を中止するよう嘆願している。団体らは嘆願書の中で、「犯罪/テロ対策を目的とした、そのような(通信に関する)機密データを含む、かくも大規模なデータベースを作成する必要性を裏付ける調査は、欧州のどの国においても全く行われていない」と主張している。
先月、欧州議会(EP)でも、今回の指令とは別の、同じようなデータ保存案について同様の結論が下された。この案はEUに加盟する4カ国が推進していたが、EPは同案の必要性を疑問視する報告書の意見を採用した。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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