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トレンドマイクロ、パターンファイル配布問題で「嵐を乗り越え虹が見えた」

藤本京子(編集部)2005年06月23日 22時17分

 トレンドマイクロは6月23日、東京都内にて記者会見を開催し、4月23日に発生したウイルスパターンファイル配布問題の改善施策および進捗状況を報告するとともに、今後の事業戦略について説明した。

 トレンドマイクロ 代表取締役社長 兼 CEOのエバ・チェン氏はまず、今回のような問題が発生したことに対して「多くのお客様に大変ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」と謝罪の言葉を述べた上で、「これまでウイルス対策企業は、いかにして競合企業より早くパターンファイルを配布できるかを考えていたが、競合ではなく顧客にフォーカスすることが大切だと痛感した」と語った。また、「製品のイノベーションだけでなく、作業プロセスを改善することに注力する」と述べた。

トレンドマイクロ 代表取締役社長 兼 CEO エバ・チェン氏

 トレンドマイクロでは、5月9日から6月15日まで、影響のあった顧客の復旧サポートとして復旧窓口を設置し、費用負担などの相談を受け付けていた。この間に窓口で対応した件数は、個人顧客で2万8300件、法人顧客で700件となった。同社では今回の問題を受け、顧客サポートの強化や製品の品質向上への取り組み、ネット社会におけるセキュリティの向上、パートナー企業との連携を柱とした事業戦略を実行するとしている。

 中でも同社が重視しているのは、今回の問題の根源となったパターンファイルのテスト体制の仕組みを改善することだ。同社では、6月20日に日本IBM研究施設内に設置した「トレンドマイクロ テストセンター」をはじめとする3つのテストセンターの開設を発表しており、テストプロセスの多重化を図るとしている。チェン氏は、「すべてのパターンファイルはまずテストセンターに送られ、顧客のPC環境を想定してテストする。その上で問題がなければ、通常のアップデートサーバにアップロードする」と、テストプロセスについて説明した。

 同時に、パターンファイルを開発するTrendLabsにおいても大きく改善されている。パターンファイルの動作検証や配信テストに利用する機材を大幅に増強し、検証プロセスを自動化した。また、監視体制を充実させるため、社内の監視体制の改善のみならず、外部のプロセスマネジメント専門家に依頼し、国際的な規約に基づいた対応策を施し、運用されているかを判断する。さらに、定期的なスタッフトレーニングや、ダブルチェック体制の拡充などを図っている。

 こうした品質改善への取り組みを踏まえた上でトレンドマイクロは、5月に発表したスパイウェア対策ソリューションを提供するInterMuteの買収や、6月に発表したスパムメール対策ソリューションを提供するKelkeaの買収を通じ、製品に新たな機能を追加するとしている。また、2006年にはネットワーク統合ソリューションにも注力することなどを今後のロードマップとして示した。

 チェン氏は、「顧客のニーズとイノベーションをリンクさせることで、困難に立ち向かうことができる」と述べ、「トレンドマイクロはやっと嵐を乗り越え、雲の合間から虹が見える状況となった」とした。

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