米Apple Computerが、いよいよ2005年8月上旬から日本でインターネットによる有料音楽配信をスタートさせるようだ。これに伴い、国内主要音源ソフト会社の大半が楽曲を提供する見通しで、日本でもネットによる音楽配信が本格スタートすることになる。
この音楽のネット化に伴って、最もメリットを享受する企業の1社と目されているのが、独立系音楽ソフト会社のエイベックス・グループ・ホールディングスだ。その強さの背景と、今後の株価見通しを探った。
エイベックスの2005年3月期の連結経常利益は、44億3100万円(前々期比37.8%減)と大きく減少した。これは主力アーチストの浜崎あゆみ、BoA、EXILEのアルバムがいずれもミリオンセラーのヒットとなったものの、音楽CDの主力購買層の人口が減少傾向にあるなど、業界全体の抱えるマイナス要因が影響したためだ。
しかし、今期2006年3月期以降の業績については、再び経常利益が増益軌道に復帰することが期待されている。この業績拡大期待の背景となっているのが、携帯電話向けの着うたなども含めたインターネットを媒体とした広い意味での音楽配信事業の拡大だ。
携帯電話向けの着メロが飛躍的に普及して、1000億円を大きく超える巨大市場に拡大する過程で利益を大きく伸ばしたのは配信会社だった。これは、少額の著作権料をJASRAC(社団法人日本音楽著作権協会)に支払えば権利処理の対応は終了し、自由に販売することが可能だったためだ。
しかし、音楽配信の場合は、実在する音楽CDを利用するため、原盤権の保有権利者やアーティストの著作隣接の権利処理が必要となり、原盤保有者には必ずロイヤリティが支払われることになるため、音楽ソフト会社には大きな利益が発生することになる。
エイベックスは、日本でもトップクラスの音楽CD市場シェアを保有しているのに加え、携帯電話で着うた利用する10〜20歳代の年齢層と、同社の制作する音楽CDの購買層が共通で、この層がそのまま音楽配信のヘビーユーザーとなる可能性が高い。
現状で携帯電話の本体自体に保存可能な楽曲数は20〜40曲に限られている。しかし、大手のノキアをはじめ携帯電話端末メーカー各社は、小型のHDD(ハードディスク駆動装置)を内蔵した次世代機種を開発中で、現在のアップル「iPod」に匹敵する1000曲以上の記憶容量を持った新機種が今秋以降発売される見通しだ。そうなれば、インターネット経由の音楽配信が爆発的に普及して、エイベックスのメリットも大きく拡大することになりそうだ。
一部にある「フル音楽配信が普及するとCDが売れなくなる」との見方については、1曲あたりの配信での楽曲提供の価格設定が重要になってくる。万が一、音楽CDの販売枚数が減少したとしても、その減少した分は確実に音楽配信として購入される可能性が高い。音楽CD盤の素材メーカーへのマイナス影響は考えられるものの、ソフト関連会社への影響は軽微に止まる可能性が高そうだ。
エイベックスの株価は、2005年4月12日に年初来高値の1823円をつけたものの、その後は前期の2005年3月期の連結経常利益が減益となったことなどから調整を強いられた。6月6日には1376円の安値をつけたが、米Appleによる音楽配信の日本本格上陸が報じられたことをきっかけに、株価は反発に転じてきてきいる。中期的には1800円台乗せの可能性もありそうだ。
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