欧州議会が、電話会社やインターネットサービスプロバイダ(ISP)に対して、顧客の通信に関する情報の保存を義務付ける法案を否決したにも関わらず、この法案の立法化作業が今後も継続されることになった。
警察によるテロ対策の支援を目的とした同法の草案は、フランス、アイルランド、スウェーデン、英国の4カ国が共同で提出したもので、これが立法化されれば、電話会社やISPには顧客が電子メールを送受信したり、電話を掛けた日時や場所といったデータを1〜3年間保存することが義務付けられる。ただし、通信内容の保存は含まれない。
欧州議会は7日、違法の疑いがあるなどの理由から同法案を否決した。
欧州議会の市民的自由、公正、内政に関する委員会(LIBE)は報告書の中で、「法的根拠の選択および手段の公正さに関して大いに疑問がある。また同法案には、欧州人権条約第8条に違反する可能性もある」と指摘している。
LIBEは同法案に対し、データの分析は困難であり、犯罪者らが抜け道を見つける可能性もあるとの批判も加えている。
この報告書のなかで、LIBEは「通信、特にインターネットに関する膨大なデータが保存されることを考えると、適切なデータ分析を行なうのはほとんど不可能」とし、さらに「組織犯罪やテロに加担する犯罪者たちは、データをたどられないようにする手段を簡単に見つけるだろう」と述べている。
LIBEの報告書によると、収集されるデータ量は2〜4万テラバイトに上り、「これをファイルに換算した場合、一列に並べると地球と月を5往復する量に匹敵する」という。またデータ保存が義務付けられる企業各社では、年間1億8000万ポンドのコスト負担増となる。
しかし、欧州議会で否決されたにも関わらず、ルクセンブルクのNicolas Schmit外務大臣は6日、閣僚会議は同法案を支持すると語った。同法案はすでにLIBEに差し戻されている。
この問題には欧州委員会(EC)も関与している。ECは、異なる法的根拠に基づいた通信データ保持に関する新法案を、今年夏までに提出するとしている。
ただ英国では、捜査権限規正法(Regulation of Investigatory Powers Act:RIPA)が存在するため、同国の通信サービスプロバイダは、欧州の立法とは関係なく、すでに顧客の通話、電子メール、ウェブ上での行動に関する記録を1年間保存している。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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