RTGSドル
RTGSドル (RTGS dollar) は、2019年6月から2024年4月まで流通していたジンバブエの通貨である。2019年11月までは唯一の公式通貨であった。RTGSは即時グロス決済 (Real Time Gross Settlement) の略称である。ジンダラー (Zimdollar)[3]やゾラー (zollar)[4]とも呼ばれる。また日本の外務省はジンバブエ・ドルと紹介し、これまでの通貨との連続性を強調している[5]。
RTGSドル | |
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Real Time Gross Settlement dollar (Zimbabwean dollar) | |
ISO 4217 コード | ZWL |
中央銀行 | ジンバブエ準備銀行 |
ウェブサイト | www |
使用開始日 | 2019年2月25日 |
情報源 | [1] |
使用 国・地域 | ジンバブエ |
インフレ率 | 55.34% |
情報源 | RBZ, 2024年3月 |
指数 | CPI |
補助単位 | |
1⁄100 | セント |
通貨記号 | $ |
セント | ¢ |
通称 | Zimdollar, Zollar |
硬貨 | |
流通は稀 | 1¢, 5¢, 10¢, 25¢, 50¢, $1, $2 |
紙幣 | |
広く流通 | $10, $20, $50, $100 |
流通は稀 | $2, $5[2] |
紙幣製造 | |
硬貨鋳造 | South African Mint |
このinfoboxは、通貨が変更される直前の値を示している。 |
2019年2月21日にジンバブエ準備銀行総裁ジョン・マングディヤによって制定された金融政策の一環として導入された[6][7]。この通貨は債券硬貨、債券紙幣、RTGS残高で構成される[8]。当初の債券紙幣(ジンバブエ債券)は、当時の米ドルの現金不足を緩和するために2016年に導入されたものである。2019年にはRTGSドルと改名され、2019年6月にはマルチカレンシー制度に代わってジンバブエで唯一の合法通貨となった[9]。
RTGSドルのインフレ率が300%を超えた2019年10月29日、中央銀行は2019年11月中旬に導入される「新しい」通貨を発表した[10][11]。この「新しい」通貨は当初、RTGSドルと並んで取引され、同等の価値とされていたが、RTGSドルのような裏付けはなかった[11][12]。
2024年4月6日、新通貨として金に裏付けされたジンバブエ・ゴールド(ZiG)が発表され、4月8日より導入されたことで通貨としての役目を終え[13][14]、4月29日限りで交換も停止され失効した。RGTSドルのインフレ率は2023年に3桁まで上昇した後、2024年3月時点では55%まで下がったものの、過去1年間で対米ドルで価値のほぼ100パーセントを失った。追跡業者のジム・プライス・チェックによると、新通貨発表時点の米ドルとの為替レートは公式では約3万ドル、闇市場では4万ドルと推定されていた[15]。
目的
編集この通貨の目的は他の通貨と同様に、以下のようなものである。
しかし、RTGSドルの中心的な目的は、ジンバブエが直面している経済的・金融的課題に対処することであり、特に政府が保有している外貨の相対的な不足に対処することであった[9]。公式には以下のものが含まれている。
- 外貨市場の正常化
- ディアスポラ送金の促進
- 外国人投資家の保護
- 輸出の促進
- 外貨によってのみ行われる価格設定からの国民の保護
価値
編集公式には当初、1米ドル=2.50RTGSドル(1RTGSドル=0.40米ドル)とされていたが、オープン市場ではそうではなく、2019年上半期には 1米ドル=7RTGSドル から 1米ドル=13RTGSドル の間で変動した[17][18][19][20]。2020年3月までに、1米ドル=25RTGSドル でペッグする試みが行われたが[21]、インフレーションは継続しており、この試みは断念された[22][23]。
2020年7月期の年間インフレ率は、ジンバブエ国家統計局(ZIMSTAT) の報告によれば837.53%だった[24]。
為替レートは、RTGSドルの発表に伴いジンバブエ準備銀行が設置したオークション市場での需要と供給の力によって決定される。この市場は銀行間外貨両替市場と呼ばれ、銀行と外貨両替店で構成されている[25]。
紙幣と硬貨
編集2014年、ジンバブエボンドコイン(債券硬貨)として1, 5, 10, 25, 50セント硬貨が発行された。2016年には1ドル硬貨が、2018年には2ドル硬貨が発行された。
これらの硬貨は、材質については、1セントが銅メッキ鋼鉄、5, 10セントが黄銅メッキ鋼鉄、25, 50セントがニッケルメッキ鋼鉄、1ドルが外周黄銅・内側ニッケルのメッキによる鋼鉄(外見上バイメタル貨)、2ドルが外周黄銅、内側アルミニウム青銅のメッキによる鋼鉄(同じく外見上バイメタル貨)となっていたが、インフレの進行に伴い次第に使用されなくなった。
2016年、ジンバブエボンドノート(債券硬貨)として2, 5ドル紙幣が発行され、これらは2019年にRTGSドル紙幣に置き換えられた。2020年にはRTGSドルとして10, 20, 50, 100ドル紙幣が発行された。
これらのジンバブエボンドノート及びRTGSドル紙幣については、表面にバランシング・ロックス(重なる3つの岩)がデザインされていたが、これもインフレの進行に伴い、2, 5ドル紙幣は使用されなくなっていった。
他の通貨
編集2019年2月にRTGSドルが導入された時点で、ジンバブエでは米ドル、南アフリカランド、中国人民元などの外貨が混在して使用されていた[26]。2019年6月には、新たな国家通貨の導入計画の一環として、現地取引における外貨の使用が禁止された[9]。
しかし、インフレーションで現物紙幣の不足が生じ、2020年3月に再び米ドルの現地使用が認められた[27]。政府は、現地取引での米ドルの使用許可は一時的なものに過ぎないとしている[28]が、2020年6月にはすでにジンバブエの公務員の中には、ハイパーインフレーションの影響で、給料の支払いを米ドルで要求する者も出てきていた[22]。2021年にはインフレ率が350%を超えた[29]。
脚注
編集- ^ Winning, Alexander (25 February 2019). “Analysis: Zimbabwe struggles to convince doubters as it launches new currency”. Thomson Reuters Foundation. Reuters (London: Thomson Reuters). オリジナルの2 May 2019時点におけるアーカイブ。 12 December 2022閲覧。
- ^ “RBZ Announces Imminent Introduction Of $100 Banknote”. Pindula News. Pindula (6 April 2022). 6 April 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。10 December 2022閲覧。
- ^ Muronzi, Chris (3 July 2019). “Hyperinflation trauma: Zimbabweans' uneasy new dollar”. Al Jazeera
- ^ “Zimbabwe struggles to keep its fledgling currency alive”. The Economist. (23 May 2019) .
- ^ “ジンバブエ共和国 > 経済”. 外務省 (2021年5月24日). 2022年2月21日閲覧。
- ^ Chaparadza, Alvine (2018年10月1日). “Banks Given Two Weeks To Separate Nostro US Dollar Accounts And Local RTGS/Bond Accounts”. Techzim. 6 May 2019閲覧。
- ^ “Does Zimbabwe have a new currency?”. (26 February 2019) 6 May 2019閲覧。
- ^ Reporter, Staff (20 February 2019). “RBZ introduces "RTGS Dollars"”. The Zimbabwe Mail. 6 May 2019閲覧。
- ^ a b c “Why Zimbabwe has banned foreign currencies”. BBC News. (26 June 2019)
- ^ Nyoka, Shingai (29 October 2019). “Zimbabwe to roll out new bank notes”. BBC News
- ^ a b Muronzi, Chris (29 October 2019). “Zimbabwe is getting another 'new' currency”. Al Jazeera. オリジナルの30 October 2019時点におけるアーカイブ。
- ^ “Is it a new currency or new notes? What does this mean?”. Zimbabwe: Market Watch (1 November 2019). 3 November 2019時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年8月18日閲覧。
- ^ “Zimbabwe launches new gold-backed currency - ZiG”. BBC (2024年4月6日). 2024年4月6日閲覧。
- ^ “新通貨ジンバブエ・ゴールド、波乱のスタート 旧通貨は無価値に”. AFP通信社 (2024年4月10日). 2024年4月22日閲覧。
- ^ “Zimbabwe launches new gold-backed currency”. フランス24 (2024年4月5日). 2024年4月6日閲覧。
- ^ “Monetary Policy Statement: Establishment of an Inter-bank Foreign Exchange Market to Restore Competitiveness”. Reserve Bank of Zimbabwe. 6 May 2019閲覧。
- ^ Stoddard, Ed (1 July 2019). “Zimbabwe takes a big gamble in its bid to dump the greenback”. Business Maverick. オリジナルの3 July 2019時点におけるアーカイブ。
- ^ Zwinoira, Tatira (22 March 2019). “RTGS$ weakens 16% in first month”. 23 March 2019時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年8月18日閲覧。
- ^ “RTGS dollar plunges by 140%”. NewsDay (Zimbabwe). (12 June 2019). オリジナルの13 June 2019時点におけるアーカイブ。
- ^ Latham, Brian (4 June 2019). “Zimbabwe's Quasi-Currency Continues on Its Precipitous Slide”. Bloomberg. オリジナルの4 September 2019時点におけるアーカイブ。
- ^ Stoddard, Ed (30 March 2020). “Zimbabwe brings back US dollar peg for fictional currency”. The Daily Maverick. オリジナルの31 March 2020時点におけるアーカイブ。
- ^ a b Ndlovu, Ray (14 July 2020). “Zimbabwe Steps Closer to Hyperinflation With 737.3% Annual Rate”. Bloomberg. オリジナルの14 July 2020時点におけるアーカイブ。
- ^ “Zimbabwe’s worst economic crisis in more than a decade”. The Economist. (11 July 2020) .
- ^ https://rbz.co.zw/
- ^ “Zimbabwe’s RTGS dollars explained | IOL Business Report”. www.iol.co.za. 6 May 2019閲覧。
- ^ Hungwe, Brian (6 February 2014). “Zimbabwe's multi-currency confusion” 5 September 2016閲覧。
- ^ Matiashe, Faral (15 April 2020). “Zimbabwe is on lockdown, but money-changers are still busy”. Al Jazeera. オリジナルの16 April 2020時点におけるアーカイブ。
- ^ “Zimbabwe to start phasing out use of US dollars at the end of 2022”. Polity (Creamer Media). (16 April 2020). オリジナルの19 April 2020時点におけるアーカイブ。
- ^ “Volatile exchange rate big threat to economy”. www.theindependent.co.zw. www.theindependent.co.zw. 2021年12月2日閲覧。
関連項目
編集外部リンク
編集先代 ジンバブエ・ドル 理由:インフレーション 備考:2015年に廃止 |
ジンバブエの通貨 2019年 – 2024年 Note:2019年6月から2020年3月までは唯一の法定通貨 |
次代 ジンバブエ・ゴールド 理由:インフレーションの進行 |
先代 ジンバブエ債券 備考:準貨幣 | ||
先代 米ドル ユーロ 英ポンド 南アフリカ・ランド ボツワナ・プラ 人民元 インド・ルピー 豪ドル 日本円 理由:外貨の使用禁止 |
次代 米ドル 南アフリカ・ランドなど 理由:2020年3月より流通再開 |