IEC 80000-6:2008は、電磁気に関するとその単位について定めた国際規格である。

国際電気標準会議 (IEC) によって2008年に発行された。規格の名称は「量及び単位―第6部:電磁気」(Quantities and units -- Part 6: Electromagnetism)である。

この規格は、それまでのISO 31-5およびIEC 60027-1を置き換えたもので、国際標準化機構(ISO)と国際電気標準会議(IEC)が共同で発行しているISO/IEC 80000の一部である[1]日本工業規格(JIS)ではJIS Z 8000-6:2014が相当する。

内容

編集

IEC 80000-6は以下の章からなる。

  • 序文 (Foreword)
  • 0 (導入) (Introduction)
  • 1 適用範囲 (Scope)
  • 2 引用規格 (Normative references)
  • 3 名称、記号及び定義 (Names, symbols and definitions)
  • 附属書 A(参考)特別な名称をもつガウス系CGS単位 (Units in the Gaussian CGS system with special names)

名称・記号・定義

編集

IEC 80000-6では、空間と時間に関する以下の量とその単位が定義されている。量の番号と記号の番号の"."より左側が対応している。 なお、IEC 80000-6には量の定義も記されているが、ここではそれは記載しない。個別の項目を参照のこと。

単位 備考
番号 名称 記号 番号 名称 記号 定義
6-1 電流 Ii 6-1.a アンペア A 真空中に1メートルの間隔で平行に置いた,無限に小さい円形断面積をもつ無限に長い2本の導体のそれぞれを流れ,これらの導体の1メートルの長さにつき 2×10−7ニュートンの力を及ぼし合う一定の電流。
6-2 電荷 Qq 6-2.a クーロン C 1 C = 1 A・s 蓄電池などにはアンペア時を用いる。1 A・h = 3.6 kC
6-3 電荷密度体積電荷 ρ 6-3.a クーロン毎立方メートル C/m3
6-4 電荷の表面密度,表面電荷 ρAσA 6-4.a クーロン毎平方メートル C/m2
6-5 電荷の線密度,電荷線密度 ρlτl 6-5.a クーロン毎メートル C/m
6-6 電気双極子モーメント p 6-6.a クーロンメートル C・m
6-7 電気分極 P 6-7.a クーロン毎平方メートル C/m2
6-8 電流密度電流面密度 J 6-8.a アンペア毎平方メートル A/m2
6-9 線電流密度電流線密度 JS 6-9.a アンペア毎メートル A/m
6-10 電界強度電界の強さ E 6-10.a ボルト毎メートル V/m 1 V/m = 1 N/C
6-11.1 電位 Vφ 6-11.a ボルト V 1 V = 1 W/A
6-11.2 電位差 Vab
6-11.3 電圧 UUab
6-12 電束密度電気変位 D 6-12.a クーロン毎平方メートル C/m2
6-13 静電容量キャパシタンス C 6-13.a ファラド F 1 F = 1 C/V
6-14.1 電気定数真空の誘電率 ε0 6-14.a ファラド毎メートル F/m 1 F/m = 1 C/(V・m) ε0 ≈ 8.854 188×10−12 F/m
6-14.2 誘電率 ε
6-15 比誘電率 εr 6-15.a (数の)1
6-16 電気感受率 χ 6-16.a (数の)1
6-17 電束 Ψ 6-17.a クーロン C
6-18 変位電流密度 JD 6-18.a アンペア毎平方メートル A/m2
6-19.1 変位電流 ID 6-19.a アンペア A
6-19.2 全電流 ItotIt
6-20 全電流密度 JtotJt 6-20.a アンペア毎平方メートル A/m2
6-21 磁束密度 B 6-21.a テスラ T 1 T = 1 N/(A・m)
1 T = 1 Wb/m2
6-22.1 磁束 Φ 6-22.a ウェーバ Wb 1 Wb = 1 V・s
6-22.2 全磁束 ΨmΨ
6-23 磁気モーメント面磁気モーメント m 6-23.a アンペア平方メートル A・m2
6-24 磁化 MHi 6-24.a アンペア毎メートル A/m
6-25 磁界強度 H 6-25.a アンペア毎メートル A/m
6-26.1 磁気定数真空の透磁率 μ0 6-26.a ヘンリー毎メートル H/m 1 H/m = 1 V・s/(A・m) μ0 ≈ 1.256 637×10−6 H/m
6-26.2 透磁率 μ
6-27 比透磁率 μr 6-27.a (数の)1
6-28 磁化率 κ,(χm) 6-28.a (数の)1
6-29 磁気分極 Jm 6-29.a テスラ T
6-30 磁気双極子モーメント jmj 6-30.a ウェーバメートル Wb・m
6-31 保磁力 Hc, B 6-31.a アンペア毎メートル A/m
6-32 磁気ベクトルポテンシャル A 6-32.a ウェーバ毎メートル Wb/m
6-33 電磁エネルギー密度体積電磁エネルギー w 6-33.a ジュール毎立方メートル J/m3
6-34 ポインティングベクトル S 6-34.a ワット毎平方メートル W/m2
6-35.1 電磁波の位相速さ c 6-35.a メートル毎秒 m/s
6-35.2 光の速さ光速 c0 真空中の電磁波の速さ c0 = 299 792 458 m/s
6-36 電源電圧 Us 6-36.a ボルト V 日本の計量法ではこれを「起電力」としているが、ISOでは電源電圧(source voltage)を起電力(electromotive force)と呼ぶことを推奨していない。
6-37.1 スカラー磁位 Vmφ 6-37.a アンペア A
6-37.2 磁位差 Um
6-37.3 起磁力 Fm
6-37.4 電流鎖交数 Θ
6-38 巻線の巻数 N 6-38.a (数の)1
6-39 磁気抵抗 RmR 6-39.a 毎ヘンリー H−1
6-40 パーミアンス Λ 6-40.a ヘンリー H
6-41.1 インダクタンス自己インダクタンス LLm 6-41.a ヘンリー H
6-41.2 相互インダクタンス Lmn
6-42.1 結合係数 k 6-42.a (数の)1
6-42.2 漏れ係数 σ
6-43 導電率 σγ 6-43.a ジーメンス毎メートル S/m
6-44 抵抗率 ρ 6-44.a オームメートル Ω・m
6-45 電力瞬時電力 p 6-45.a ワット W
6-46 抵抗 R 6-46.a オーム Ω 1 Ω = 1 V/A
6-47 コンダクタンス G 6-47.a ジーメンス S 1 S = 1/Ω
6-48 位相差 φ 6-48.a ラジアン rad
6-49 電流フェーザ(複素表現 I 6-49.a アンペア A
6-50 電圧フェーザ(複素表現) U 6-50.a ボルト V
6-51.1 インピーダンス複素インピーダンス Z 6-51.a オーム Ω Z = U/I
6-51.2 (交流)抵抗 R R = Re Z
6-51.3 リアクタンス X X = Im Z
6-51.4 インピーダンスの大きさ Z Z = |Z|
6-52.1 アドミタンス複素アドミタンス Y 6-52.a ジーメンス S Y = 1/Z
6-52.2 (交流)コンダクタンス G G = Re Y
6-52.3 サセプタンス B B = Im Y
6-52.4 アドミタンスの大きさ Y Y = |Y|
6-53 キュー,尖鋭度Q値 Q 6-53.a (数の)1 Q = |X|/R
6-54 損失率 d 6-54.a (数の)1 d = 1/Q
6-55 損失角 δ 6-55.a ラジアン rad δ = arctan d
6-56 有効電力 P 6-56.a ワット W
6-57 皮相電力 |S| 6-57.a ボルトアンペア V・A |S| = UI
6-58 力率 λ 6-58.a (数の)1 λ = |P|/|S|
6-59 複素電力 S 6-59.a ボルトアンペア V・A S = UI*(U:電圧フェーザ、I*:電流フェーザの複素共役)
6-60 無効電力 Q 6-60.a ボルトアンペア V・A Q = Im S
6-60.b バール(var) var 1 var = 1 V・A
6-61 非有効電力 Q' 6-61.a ボルトアンペア V・A Q' = S2 - P2
6-62 有効電力量 W 6-62.a ジュール J
6-62.b ワット時 W・h 1 W・h = 3 600 J

附属書 A 特別な名称をもつガウス系CGS単位

編集

特別な名称を持つガウス系CGS単位として、以下のものが挙げられている。なお、この附属書は参考として記載されたもので、規定の一部ではなく、ここに挙げた単位は使用するべきではないとしている。ガウス系CGS単位は他にもあるが、IEC 80000-6にはBIPMのSI文書に記載されている3つのみが掲載されている。

単位 備考
番号 名称 番号 名称 記号 定義
6-21 ガウス系磁束密度 6-21.A.a ガウス G 1 G = 10−4 T 記号は Gs とも
6-22.1 ガウス系磁束 6-22.A.a マクスウェル Mx 1Mx = 10−8 Wb
6-25 ガウス系磁界強度 6-25.A.a エルステッド Oe 1 Oe = 103/(4π) A/m

脚注

編集

関連項目

編集

外部リンク

編集