裸体と衣裳
『裸体と衣裳』(らたいといしょう)は、三島由紀夫の公開日記形式の評論・随筆。文芸評論からオペラ観劇の感想まで、三島の幅広い芸術観がみられる随筆である。日記の日付は、1958年(昭和33年)2月17日から、1959年(昭和34年)6月29日までの約1年半の、長編小説『鏡子の家』の起草から完成までの期間となっており、『鏡子の家』の進行状況を基軸にして、様々な身辺雑記や交友録、評論が日記形式で綴られている[1][2]。
裸体と衣裳 | |
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作者 | 三島由紀夫 |
国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
ジャンル | 日記、随筆、評論 |
発表形態 | 雑誌連載 |
初出情報 | |
初出 | 『新潮』1958年4月号-1959年9月号 |
初出時の題名 | 「日記」 |
刊本情報 | |
刊行 | 『裸体と衣裳――日記』 |
出版元 | 新潮社 |
出版年月日 | 1959年11月30日 |
装幀 | 藤野一友 |
総ページ数 | 261 |
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発表経過
編集1958年(昭和33年)、文芸雑誌『新潮』4月号から翌年1959年(昭和34年)9月号まで「日記」のタイトルで連載された[3]。単行本は1959年(昭和34年)11月30日に新潮社より『裸体と衣裳――日記』として刊行された[4]。文庫版は新潮文庫で刊行されたが絶版となり、講談社文芸文庫の『三島由紀夫文学論集 II』に収録されている[注釈 1]。
内容
編集以下のような戯曲創作方法、小説家論、様々な読書感想、身辺雑記が綴られている。
武田泰淳『おとなしい目撃者』、『司馬遷――史記の世界』、ガルシア・ロルカ『ドン・クリストバル』、『血の婚礼』、モオリヤック『仔羊』、フロオベエル『感情教育』、トオマス・マン『ワイマールのロッテ』、ホーフマンスタール『アンドレアス』、ヨハン・ホイジンガ『中世の秋』、古代マヤの聖典『ポポル・ヴフ』、田中千禾夫『寝物語』、吉田健一『ロレンス論』)、大江健三郎論、ボクシング観戦、文壇・舞台関係者(鉢の木会の面々、川端康成、黛敏郎、田中澄江、朝吹登水子、など)、ボクシング関係者との交流、映画鑑賞(『女優志願』、『ローレンの反撃』、『結婚のすべて』、『美徳のよろめき』、『若い獣』、『手錠のままの脱獄』、『無分別』、『完全な遊戯』、『SOSタイタニック』、『大いなる西部』、『ニューヨークの王様』、『危険な曲り角』)、結婚観、千夜一夜譚考(『モスルのイブラヒムと悪魔』、『モスルのイシャクとその恋人と悪魔』)、結婚式、新婚旅行記、映画『炎上』撮影見学、歌舞伎・舞台観劇、映画論、時事政治評(「悪と政治と」)、ポール・アンカ・ショー観賞、ゲーテ論、ガルシア・ロルカ論、ポオ論、新居建設、春日井建論、ボディビル・剣道稽古、オペラ観劇(『アイーダ』、『ペレアスとメリザンド』、『オテロ』、『椿姫』)、映画『不道徳教育講座』出演苦戦報告、仲人体験、海外来客案内、バレエ観劇(『白鳥の湖』、『眠れる森の美女』、『フランチェスカ・ダ・リミニ』、『白の組曲』、『ロメオとジュリエット』、『高電圧』)、皇太子御成婚、園遊会、新居引越、長女誕生、『鏡子の家』完成報告、など。
1958年(昭和33年)11月25日付の日記文中に、以下のようにタイトルに由来する文章がある。
外遊日記
編集『裸体と衣裳』が「日記」のタイトルで雑誌連載されていた際、随所に挟み込まれていたもので、刊行本にあたり、その部分を年月日順に編成し直して、「附・外遊日記」としてまとめて巻末に付されている[1]。
日付は、1957年(昭和32年)8月15日から、1958年(昭和33年)1月9日までで、クノップ社の社長と面会したこと、小説家ジェイムス・メリルのニュージャージー州の家に招かれたこと、プエルトリコ、メキシコシティ、ニューヨーク、ローマ滞在の日記が綴られている。『近代能楽集』の上演計画や、『仮面の告白』の翻訳企画のことも書かれている。
おもな刊行本
編集- 『裸体と衣裳――日記』(新潮社、1959年11月30日) NCID BN11646935
- 装幀:藤野一友。布装。橙色帯。261頁
- 収録作品:「裸体と衣裳――日記」「附・外遊日記」
- 文庫版『裸体と衣裳』(新潮文庫、1983年12月25日)
- カバー装画:荒川修作。解説:西尾幹二
- 収録作品:「裸体と衣裳――日記」「ドルヂェル伯の舞踏会」(三島による評論)、「戯曲を書きたがる小説書きのノート」「空白の役割」「芸術にエロスは必要か」「現代小説は古典たり得るか」「谷崎潤一郎論」「変質した優雅」「文化防衛論」
- 『三島由紀夫文学論集 II 』虫明亜呂無編(講談社文芸文庫、2006年5月10日)
- 装幀:菊地信義。解説:橋本治「肉体と身体と実体等について」
- 収録作品:「裸体と衣裳」「アポロの杯――パリ」「ジョルジュ・バタイユ『エロチシズム』」「陶酔について」「個性の鍛錬場」「ナルシシズム論」「『純文学とは?』その他」「余暇善用」「私の遍歴時代」
全集収録
編集- 『三島由紀夫全集28巻(評論IV)』(新潮社、1975年8月25日)
- 『決定版 三島由紀夫全集30巻・評論5』(新潮社、2003年5月10日)
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ a b 関谷一郎「裸体と衣裳」(事典 2000, pp. 405–406)
- ^ 「第三章 問題性の高い作家」(佐藤 2006, pp. 73–109)
- ^ 井上隆史「作品目録――昭和33年-昭和34年」(42巻 2005, pp. 416–422)
- ^ 山中剛史「著書目録――目次」(42巻 2005, pp. 540–561)
- ^ 「序文」(『三島由紀夫文学論集』講談社、1970年3月)。36巻 2003, pp. 64–65、論集I 2006, pp. 9–11
- ^ 「昭和33年11月25日(火)」(『裸体と衣裳――日記』(新潮社、1959年11月。新潮文庫、1983年12月)。論集II 2006, pp. 123–126
参考文献
編集- 三島由紀夫『決定版 三島由紀夫全集30巻 評論5』新潮社、2003年5月。ISBN 978-4106425707。
- 三島由紀夫『決定版 三島由紀夫全集36巻 評論11』新潮社、2003年11月。ISBN 978-4106425769。
- 佐藤秀明; 井上隆史; 山中剛史 編『決定版 三島由紀夫全集42巻 年譜・書誌』新潮社、2005年8月。ISBN 978-4106425820。
- 三島由紀夫『外遊日記』ちくま文庫〈三島由紀夫のエッセイ3〉、1995年6月。ISBN 978-4480030467。
- 井上隆史; 佐藤秀明; 松本徹 編『三島由紀夫事典』勉誠出版、2000年11月。ISBN 978-4585060185。
- 佐藤秀明『三島由紀夫――人と文学』勉誠出版〈日本の作家100人〉、2006年2月。ISBN 978-4585051848。
- 長谷川泉; 武田勝彦 編『三島由紀夫事典』明治書院、1976年1月。NCID BN01686605。
- 虫明亜呂無 編『三島由紀夫文学論集I』講談社文芸文庫、2006年4月。ISBN 978-4061984394。
- 虫明亜呂無 編『三島由紀夫文学論集II』講談社文芸文庫、2006年5月。ISBN 978-4061984424。