蕩減

世界基督教統一神霊協会の宗教用語

蕩減(とうげん)とは、借金を全部帳消しにすること。借債を悉く免除してやること。remission

解説

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原義

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蕩減탕감 , tang-gam)
朝鮮起源の漢字語)借金を全部帳消しにすること。借債を悉く免除してやること。remission。[1][2][3] 「蕩」の字義は「すっかり無くする。『蕩尽/掃蕩』」[4]
用法
韓国では一般に金融用語として「債務の減免」の意味で使われ頻繁にマスコミに登場する。[5][6][7]また韓国語聖書で罪や負債の「ゆるし」の訳に用いられており、[注 1]韓国のキリスト教会の説教でも罪や負債の「ゆるし」の意味で頻繁に用いられる。[10][11][12]
「앞서 정부는 문 대통령 공약대로 1000만원 이하 장기 소액 연체자의 빚을 전액 탕감줬다.」[13]
先に政府は、文大統領の公約通り、1000万ウォン以下の長期少額延滞者の借金を全額帳消しにした。(免除)

「박근혜 정부 때도 원금을 최대 90% 탕감해주는 등 여러 차례 빚 탕감 대책이 나왔지만. 」[14]
朴槿恵政府も、元金を最大90%帳消しにするなど、複数回借金帳消し対策が出てきた。(減額)

「주님은 우리가 죄인이었을 때에, 하나님과 원수 되어서 용서 받을 자격과 능력이 없을 때에 그 크신 사랑으로 우리 믿는 자들의 죄를 탕감해 주셨고」[15]
主は、私たちが罪人であったときに、神の怨讐(敵)になって赦される資格と能力がないときに、その大きな愛で私たち信じる者の罪を帳消しにしてくださった。
用法に特殊性があり、日本的表現では債権者が「帳消しにする」と言い、債務者は「帳消しにしてもらう」と言うが、韓国では債務者も「帳消しにする(蕩減する 탕감 하다)」と言う。韓国語では他動詞の受動態がない場合があり「蕩減」はそれにあたる。例として韓国ベストセラー小説「商道(상도)」(崔仁浩 著)の日本語版で、債務者が「帳消しにしてもらうよりほかなかった」[16]という部分は、韓国語原文では「탕감 할 수밖에 없었다(帳消しにするほかなかった)」[17]となっており、和訳の際校正されているのがわかる。
解説
朝鮮半島では歴史的に漢字教育に様々な変遷があった影響により、朝鮮起源の常識的な言葉であるが老若に関わらず知る層と知らない層に別れ、特に漢字の認知度は低い。[18][19]


統一教会用語(原理用語)

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朝鮮起源の漢字語のため一般的に朝鮮半島以外で使われることはない。日本では統一教会(世界基督教統一神霊協会)[20]においてのみ教会用語(原理用語)として使われている。

文鮮明教祖の定義
統一教会の教義「統一原理[21][22]」の救済観を「蕩減復帰原理」[23][24]という。統一教会の教祖文鮮明は「蕩減」と「蕩減復帰」の意味を次のように語っている。
「蕩減とは何か。百をすべきことを、一をすることによって百をしたものと認定してあげることです。」 — 1980年7月1日の説教「蕩減の歴史的基準」
「蕩減の本当の意味は何でしょうか。神は私達が負っている負債の総額に充当するために、その内の一定額を支払うことを求めておられます。しかし私達がその条件を満たすことにより、総額が返済されたという立場に立つのです。神は常に誰もが救いを受ける機会が得られるように(負債総額よりも)小さな条件を設定されています。」 — 1981年2月10日の説教「蕩減復帰摂理歴史」
「蕩減復帰とは、小さな条件を通して大きなことを蕩減する(赦す)ことです。例をあげれば百人を赦してあげるために、善なる一人の人間が打たれることを代価として百人の罪が蕩減される(赦される)のです。人間百人の代表として一人を立て、彼が百人の代身として打たれることによって、百人が打たれることを赦され、悪なる立場から善の立場へ帰ってゆくのが蕩減復帰というのです。」 — 1967年6月4日の説教「蕩減が行く道」
文鮮明教祖より「統一原理」体系化の最終版「原理」の執筆を任された李相憲[25]は「蕩減」について論文「統一民族史観」[26]の中で、キリスト教の「赦し」の説明に頻繁に引用される新約聖書マタイによる福音書第18章21節~35節「仲間を赦さない僕」のたとえ[27]に基づいて説明している。

「僕の主人はあわれに思って彼をゆるし、その負債を免じてやった。」
(그 종의 주인이 불쌍히 여겨 놓아 보내며 그 빚을 탕감⦅蕩減⦆하여 주었다)
                             ―マタイによる福音書第18章27節

「イエス様は、人間が犯した罪は借金をすることと同じだとしばしば表現されています。例えばイエス様は王様から借りた一万タラントの借金を返す事が出来ないでいる僕の例を挙げています。王様は『もし一万タラントの借金を返すことが出来ないのであれば、お前と妻子と持ち物全部を売って返しなさい』と命じました。それらを全部売っても一万タラントにならないかも知れないが、それで一万タラントの借金と相殺してやるという意味です。これも蕩減を意味します。(減額)
 ところが僕がひれ伏して『必ず借金を返しますから、暫くお待ち下さい』と言って哀願しました。その姿を見て気の毒に思った王様は『お前の心掛けは殊勝だ。負債を免じてやるから帰りなさい』と言って彼を赦してやったのです。これもやはり蕩減なのです。(免除)
イエスの御言葉によって蕩減の意義が明らかにされたと思います。
第一に、蕩減とは、負債に関する概念であると同時に、罪に関する概念です。
第二に、蕩減とは、一定の条件を立てて、借金を減らすか相殺するのと同様に、罪を減らすか、なくしてもらうこと、罪を赦してもらうことを意味します。
第三に、蕩減には、必ず債務者と債権者、または罪人は神様に一定の条件を立てなければ蕩減(赦してもらうこと)を受けることが出来ないことを意味します。
第四に、蕩減(赦してもらうこと)は一定の条件を立てて、借金のない、あるいは罪を犯さない状態に戻ること、つまり復帰を意味します。」 — 月刊「ファミリー1993年5月号」李相憲著「統一民族史観」

文鮮明教祖、李相憲共に原義に則り、また聖書に基づいた説明をしているため既成神学との連続性が認められる。ただ統一原理が異なるのは「条件」という言葉を使ったことである。[注 2]既成神学が「無条件の赦し」[29]を説くのに対し、統一原理は「神の赦しには一定の条件(蕩減条件)を満たす必要があり、それが人間の責任分担」と説く。但し、統一教会内部に於いて文鮮明教祖の定義を正確に理解していた記録が存在するのは李相憲のみである。[26]
原理講論(Divine Principle)の定義
「どのようなものであっても、その本来の位置と状態を失ったとき、それらを本来の位置と状態にまで復帰しようとすれば、必ずそこに、その必要を埋めるに足る何らかの条件を立てなければならない。このような条件を立てることを『蕩減』というのである。」[24]

「무엇이든지 그 본연의 위치와 상태 등을 잃어버리게 되었을 때, 그것들을 본래의 위치와 상태에로 복귀하려면 반드시 거기에 필요한 어떠한 조건을 세워야 한다. 이러한 조건을 세우는 것을 "탕감"이라고 하는 것이다.」[30]

「When someone has lost his original position or state, he must make some condition to be restored to it. The making of such conditions of restitution is called "indemnity".」[31] — 緒論 (一)蕩減復帰原理 (1)蕩減復帰[32]

用法
統一教会信者達は原義である「赦し」の意味で使うことはない。原理講論の影響で「蕩減とは償い、罪滅ぼし」[33]と原義とは真逆に解釈する。その理由について統一教会は何の説明もしていない。
統一教会では無原罪で生まれた再臨のキリストとされる文鮮明教祖(妻・韓鶴子現教祖[34])が生誕した韓国を最も迫害したとする日本が支払うべき「賠償(indemnity)」の意味で使われることもある。

脚注

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注釈

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  1. ^ 聖書に記載されている箇所、申命記15/1、2、3、9、31/10、ネヘミヤ10/31、マタイ18/27、マタイ18/32、ルカ7/42、ルカ7/43。[8][9]
  2. ^ 一般にキリスト教会は「神の赦し」に「条件」があると解釈することを拒む。[28]

出典

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  1. ^ 精解「韓日辞典」高麗書林
  2. ^ Naver辞典'탕감'
  3. ^ remissionの意味・使い方・読み方 | Weblio英和辞書
  4. ^ 小学館 大辞泉
  5. ^ 「借金最大90%蕩減11万人」(한겨레)
  6. ^ 「青年の借金の蕩減議論」(신동아)
  7. ^ 「借金蕩減90%線を越えた」(매일경제)
  8. ^ goognews-가톨릭정보-성경검색
  9. ^ 다국어 성경 Holy-Bible "탕감"
  10. ^ 「借金蕩減の聖書的根拠」(NEWS&JOY)
  11. ^ 「一万タラントの債務者の譬え話」(성경의 진리)
  12. ^ 「説教文 借金書類を燃やした金持ち」(大韓聖書公会)
  13. ^ ソウル経済 2017.8.27
  14. ^ 朝鮮日報 2019.02.19
  15. ^ Weekly good news / Korea 2014.10.25
  16. ^ 日本語版「商道」<上> P.19・11行目(崔仁浩著 全2巻)
  17. ^ 韓国語版「商道」第一巻 P.120・11行目(崔仁浩著 全5巻)
  18. ^ 豊田有恒著「韓国が漢字を復活できない理由」P3、8~11行目
  19. ^ 呉善華著「漢字廃止で韓国に何が起きたか」(PHP研究所)
  20. ^ 統一教会(世界基督教統一神霊協会)
  21. ^ 統一原理
  22. ^ 原理講論
  23. ^ 統一思想研究院顧問 野村健二著「天下の愚論-『洗脳の時代』を裸にする」大学と理想83年4月号
  24. ^ a b 緒論 (一)蕩減復帰原理
  25. ^ 統一思想研究院院長、「勝共論」「統一思想」著者
  26. ^ a b 李相憲著「統一民族史観」月刊「ファミリー1993年5月号」
  27. ^ 「仲間を赦さない僕」のたとえ
  28. ^ 中川健一著「<聖書流>生き方指南」P.124 2~6行)
  29. ^ 牧師の部屋から「無条件に無限に赦しなさい」
  30. ^ 원리강론 I.탕감복귀원리
  31. ^ Divine Principle
  32. ^ 世界平和統一家庭連合 原理講論 緒論
  33. ^ 林恵子著「統一原理への架け橋」(広和)
  34. ^ 真のお母様の「無原罪性」―「血統転換、私は母胎からなのです」の意味について | 真の父母様宣布文サイト

関連項目

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