自由港
自由港(じゆうこう、英: free port; free trade zone; free zone[1])は、港湾の全域あるいは一部を[2][3]関税制度上は外国とみなし[4][5]、輸入貨物に関税を課さず[4][6]、外国貨物および船舶の[6]国外との自由な出入りを認める制度[2][6]。保税制度を拡張したものであり[5]、国全体としては関税による保護政策を維持しつつ[2]、中継貿易や加工貿易の促進を図る目的で行なわれる[2][3][4][5][6]。関税を免除された外国貨物は区域内での積み込み[2][5]、陸揚げ[2][5]、保管[2][4][5]、消費[4]、(現地製品も含めた[1])混合[5]、改装[5]、再包装[1]、仕分け[1](仕訳[5]、荷分け[2])、組立[1]、加工[1][2][4][5]、製造[4]などが認められ、これにより海運、倉庫、保険といった商港産業の発展が促される[2]。
種別
編集- 自由港市 (free port city[3]) - いわゆる本来の自由港にあたる[2]。港湾都市全体が関税区域外とみなされ[2]、個人の居住が許される[2][4]。しかし市内・市外間の利害対立が激化しやすく[1][2]、脱税や[2]密貿易の取り締まりも難しいため[1][2][3]現存せず[3]、香港とシンガポールがそれに近い形で残るのみである[2][3]。
- 自由港区 (free port quarter[1]) - 自由港市より範囲を狭め[2]、開放地域の全部あるいは一部のみを関税区域外とし[2]、そこでの貨物の輸出入、保管、加工などが認められる[2]。区域内の居住は認められない[2]。現在の代表例としてハンブルク[2]、コペンハーゲン[3]、ロッテルダム[3]、グダニスク[3]が挙げられる。
- 自由地区 (free district[1]) - 自由港区よりさらに制限を加え[2]、港湾内の自由地域 (free port zone) で[3]貨物の搬入と再輸出[2][3]、および倉庫保管のみが認められる[2]。加工は認められない[2]。もっぱら港湾設備の利用率向上と[3]中継貿易の発展に目的をおいたものである[2][3]。現在の代表例としてニューヨーク[3]、ニューオーリンズ[3]、サンフランシスコ[3]が挙げられる。
歴史
編集自由港は古代カルタゴやローマ帝国でも見られたが[3]、近世のものは中世イタリア[2]の自由都市[2][5]に由来があり、16-17世紀イタリアのリボルノ、ベネチア、ナポリ、ジェノバといった主要港を原型とする[3]。これらの自由港市は外国人の居住も認めていた[3]。のち中欧・北欧が発展するにつれ、ハンブルク、ブレーメン、ダンチヒ(グダニスク)などにも自由港市は広がったが[3]、自由港市は19世紀には多くが廃止され[5]、現在では自由港区または自由地区として運用されるか[1]、より弾力性のある保税制度を利用する場合が多い[2][3]。日本に自由港は無い[5]。
脚注
編集- ^ a b c d e f g h i j k 石田貞夫(編)、中村那詮 編『貿易用語辞典』(改訂第2版)白桃書房、2013年、172-173頁。ISBN 978-4561741947。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae 秋山憲治『日本大百科全書』 第11巻、小学館、1986年、485頁。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u 平山健二郎 著、加藤周一 編『世界大百科事典』 第13巻(改訂新版)、平凡社、2007年、62頁。
- ^ a b c d e f g h i 竹之内秀行 著、宮澤永光(監) 編『基本流通用語辞典』白桃書房、1999年、120頁。ISBN 978-4561751311。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n 村本孜 著、吉野昌甫 編『貿易・為替小辞典』有斐閣、1983年、141頁。ISBN 978-4641056411。
- ^ a b c d 小学館国語辞典編集部 編『日本国語大辞典』 第6巻(第2版)、小学館、2001年、1229頁。