準有限射
数学の1分野である代数幾何学において、スキームの射 f : X → Y が準有限(じゅんゆうげん、英: quasi-finite)であるとは、有限型かつ以下の同値な条件をいずれか1つ、したがって全てを満たすことを言う[1]。
- X の全ての点 x はファイバー f−1(f(x)) の中で孤立している。言い換えれば、全てのファイバーは離散集合(したがって有限集合)である。
- X の全ての点 x に対して、スキーム f−1(f(x)) = X ×YSpec κ(f(x)) は有限 κ(f(x)) スキームである。ここで、κ(p) は点 p での剰余体である。
- X の全ての点 x に対して、 は 上有限生成である。
準有限射はアレクサンドル・グロタンディークにより SGA 1 の中で初めて定義されたが、そのときは有限型という仮定はついていなかった。この仮定は、のちに EGA II 6.2 で定義されたときに、準有限性を茎を使って代数的に特徴づけるために追加された。
スキームの射 f : X → Y と X の点 x に対して、f が x で準有限とは、x の開アフィン近傍 U と f(x) の開アフィン近傍 V が存在して、f(U) が V に含まれ、制限 f : U → V が準有限であることを言う。f が局所的に準有限(locally quasi-finite)とは、X の全ての点で準有限であることを言う[2]。準コンパクトかつ局所的に準有限な射は準有限射である。
性質
編集f を射とすると、以下が成り立つ[3]。
- f が準有限なら、被約スキームの間に誘導された射 fred も準有限である。
- f が閉埋入なら f は準有限である。
- X がネーターで f がはめ込み(immersion)なら f は準有限である。
- 射 g : Y → Z に対し、g ∘ f が準有限で、さらに以下のいずれかが満たされるなら、f は準有限である。
- g は分離射
- X はネーター
- X ×Z Y は局所ネーター
準有限性は基底変換で保たれる。準有限射の合成やファイバー積は準有限である[3]。f が点 x で不分岐なら、f は x で準有限である。逆に、f が x で準有限で、ファイバー f−1(f(x)) での x の局所環 が体でしかも κ(f(x)) の有限次分離拡大になっているなら、f は x で不分岐である[4]。
有限射は準有限である[5]。局所的に有限表示な準有限固有射は有限である[6]。実は、射が有限であるのは固有かつ準有限のとき、かつそのときに限る(ドリーニュ)。
一般化されたザリスキの主定理(Zariski's main theorem)とは次の主張である[7]。Y を準コンパクトかつ準分離的、f を準有限かつ分離的かつ有限表示とする。このとき、f は と分解する。ここで、最初の射は開埋入で、次の射は有限射である。つまり、X は Y 上有限なスキームの開集合である。
脚注
編集参考文献
編集- Grothendieck, Alexandre; Michèle Raynaud (2003) (フランス語). Séminaire de Géométrie Algébrique du Bois Marie - 1960-61 - Revêtements étales et groupe fondamental - (SGA 1) (Documents Mathématiques 3) (Updated ed.). Société Mathématique de France. p. xviii+327. ISBN 2-85629-141-4
- Grothendieck, Alexandre; Jean Dieudonné (1961). “Éléments de géométrie algébrique (rédigés avec la collaboration de Jean Dieudonné) : II. Étude globale élémentaire de quelques classes de morphismes”. Publications Mathématiques de l'IHÉS 8: 5–222. doi:10.1007/bf02699291 .
- Grothendieck, Alexandre; Jean Dieudonné (1966). “Éléments de géométrie algébrique (rédigés avec la collaboration de Jean Dieudonné) : IV. Étude locale des schémas et des morphismes de schémas, Troisième partie”. Publications Mathématiques de l'IHÉS 28: 5–255 .