清原惟
清原 惟(きよはら ゆい、1992年 - )は、日本の映画監督・映像作家。東京都出身[1]。
きよはら ゆい 清原 惟 | |
---|---|
生年月日 | 1992年 |
出身地 | 日本・東京都 |
職業 | 映画監督 |
ジャンル | 映画 |
主な作品 | |
監督・脚本 『わたしたちの家』 『すべての夜を思いだす』 |
概要
編集和光高等学校(東京都)に在学中から自主映画の製作を開始[2][3]。武蔵野美術大学映像学科で監督した作品がPFFアワードで連続入選を果たして関係者から注目を集めた。卒業後、東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻監督領域で黒沢清・諏訪敦彦らに映画製作を学ぶ[4]。
同大学院で修了作品として監督した初の長篇作品『わたしたちの家』が、ぴあフィルムフェスティバル2017でグランプリを受賞[5]。これも高い注目を集め、全国各地で上映されたのち第68回ベルリン国際映画祭・フォーラム部門に正式出品。続いて、ニューヨークの映画協会と近代美術館(MoMA)が共催で各国の新進監督を紹介する「ニューディレクターズ/ニューフィルムズ(New Directors/New Films)」でも上映された[6]。
短編製作やオムニバス作品への参加を経て、2022年、PFFスカラシップ作品として商業映画第1作『すべての夜を思いだす』を監督[7]。同作は同年9月に日本国内で初公開されたのち、2023年2月に第73回ベルリン国際映画祭・フォーラム部門に正式出品 。4月には再び、ニューヨークで「ニューディレクターズ/ニューフィルムズ」[8]の1本として参加[9]、同年秋には北米で一般上映された。[10][11]。北米、日本国内に続いて、イギリスで公開中。[12]
出品上映
編集- 『わたしたちの家』
第48回香港国際映画祭、第20回台北映画祭(台北電影節)、第21回上海国際映画祭、第22回プチョン国際ファンタスティック映画祭、第67回メルボルン国際映画祭、第6回サンフランシスコ日本映画祭、第18回クリチパ国際映画祭(Olhar de Cinema)、第2回ウィーン日本映画祭、第25回バルディビア国際映画祭、第26回ブリスベン国際映画祭、第27回釜山国際映画祭[13][4]など。
- 『すべての夜を思いだす』
第23回クリチパ国際映画祭、第13回北京国際映画、第25回台北映画祭[14]、第72回メルボルン国際映画祭、第71回サン・セバスティアン国際映画祭[15]、第28回釜山国際映画祭[16]、第20回香港アジア映画祭[17]、第64回テッサロニキ国際映画祭[18]など。
評価
編集米国の映画批評で大きな影響力をもつ『ハリウッド・リポーター』誌は『わたしたちの家』が2018年に海外で上映され始めるとすぐに注目し、これは黒沢清『岸辺の旅』(2015) を思わせる冷ややかな亡霊のドラマで、清原はその繊細な脚本・謎を未解決のまま終わらせる大胆な手法によって、デビュー作でいきなり日本のインディーズ映画の最前線に立った、と紹介した[19]。
この映画から多くの霊感を受け取りました。わたしは、その油断のならない簡潔なスタイルと、日常の美しさを楽しみました。『わたしたちの家』は、わたしたちの存在の問いを投げかけます。それは、わたしたちの経験が、わたしたちだけではなく、他者たちの想い出によって造られていることを教えてくれるのです。アピチャッポン・ウィーラセタクン[20]
『ニューヨーク・タイムズ』紙は多摩ニュータウンを舞台とした『すべての夜を思いだす』について、構成・脚本があいまいで力強さを欠くものの、東京郊外で暮らす3人の女性の姿を優美に描いており、画面のいたるところに溢れている森とあざやかな緑が、鋼鉄とコンクリートの大都市で生きる生の周辺性を象徴するかのようだ、などと評している[21]。
『すべての夜を思いだす』は、冒頭のカットから、これは特別な映画だ、と直感しました。3人の女性の一日を、離れたところから、ゆったりと見つめる。その「場所」の素晴らしさにときめきながら、一緒に歩いていく。クリスティーナ・ノード ベルリン国際映画祭フォーラム部門元ディレクター[22]
表彰
編集- 2014年 - PFFアワード2014入選『暁の石』
- 2015年 - PFFアワード2015入選『ひとつのバガテル』
- 2017年 - PFFアワード2017グランプリ『わたしたちの家』
- 2018年 - 第18回クリチパ国際映画祭(ブラジル)グランプリ『わたしたちの家』
- 2018年 - スペインムービングイメージフェスティバル2018 グランプリ『わたしたちの家』
- 2018年 - 第21回上海国際映画祭「Asian New Talent Award」部門 最優秀監督賞『わたしたちの家』[23]
- 2023年 - 第13回北京国際映画祭「Forward Future Award」部門 審査員特別表彰『すべての夜を思いだす』[24][25]
監督作品
編集公開年 | 題名 | 脚本 | 主な出演 | |
---|---|---|---|---|
2009 | 白と三角[26][27] | 清原惟 | ||
2013 | ムーンドーン[26][28](※飛田みちるとの共同監督) | 清原惟・飛田みちる | 85分 | |
2014 | 暁の石[29][30](※飛田みちるとの共同監督) | 清原惟 | 30分 | 坂藤加菜、橋本日香里、菊沢将憲、吉村英治 |
2015 | ひとつのバガテル[31] | 清原惟 | 72分 | 青木悠里、原 浩子、加藤周生、中島あかね、菊沢将憲 |
2015 | しじゅうご円[32] | 加藤法子 | 15分 | 小畑みなみ 横田光亮 上野みき |
2016 | 音日記[33] | 清原惟、峰尾賢人、加藤法子 | 30分 | 横田光亮、守谷周人、堀夏子 |
2017 | 波[34] | 清原惟 | 5分 | 青木悠里、福地脩平 |
2017 | 火星の日[35] | 清原惟 | 11分 | 青木悠里 |
2017 | わたしたちの家[36] | 清原惟・加藤法子 | 80分 | 河西和香、安野由記子、大沢まりを、藤原芽生、菊沢将憲 |
2018 | 網目をとおる すんでいる[4] | 清原惟・青木悠里ほか | 15分 | 坂藤加菜、よだまりえ |
2020 | これが星の歩きかた | 清原惟 | 村上由規乃、石倉来輝、菊沢将憲、青木悠里 | |
2021 | 三月の光(※オムニバス作品『MADE IN YAMATO』より)[37] | 清原惟 | 小山薫子、石倉来輝、田中真琴、南辻史人 | |
2021 | バストリオ+松本一哉『黒と白と幽霊たち』パフォーマンス記録映像[38] | 清原惟 | ||
2022 | すべての夜を思いだす | 清原惟 | 116分 | 兵藤公美、大場みなみ、見上 愛、内田紅甘、遊屋慎太郎、奥野 匡 |
2022 | 建築作品「海老名芸術高速」記録映像(部屋)[39] | 清原惟 | ||
2022 | ユートピアのすごろく 映像インスタレーション作品(部屋)[40] | 清原惟 | ||
2022 | 7日間のままごと(ままごと 瀬戸内国際芸術祭2022 ドキュメンタリー)[41] | 清原惟 | ||
2023 | A Window of Memories[42] | 清原惟 | 67分 | 砂子旭子、清原磋智子、小山薫子、坂藤加菜 |
関連文献
編集- 三浦哲哉「映画川特別編・清原惟レトロスペクティブ」 (2017年6月30日)
- 清原惟「映画『わたしたちの家』上映会&清原監督講演会」『立教大学ジェンダーフォーラム年報 : Gender-Forum』第21巻、2019年、73-84頁、CRID 1390009224787024384、doi:10.14992/00019447、ISSN 21853789。
- 「新時代の映像作家たち:清原惟インタビュー」(批評誌『エクリヲ』2018年3月19日)
- 「『わたしたちの家』:清原惟監督インタビュー」(『i-D』2018年1月17日)
- 若き最優秀アジア新人監督が映す「パラレルワールド」#NEXT_U30 清原惟映画監督 (Forbes JAPAN日本編集部 2019年1月9日)
- 「清原惟インタビュー」(Cinemarche, 2019年5月7日)
- 『すべての夜を思いだす』(井戸沼紀美のエッセイ「二十二日の半券 2022年9月22日)
- 『新映画論 ポストシネマ』渡邉大輔著 2022年2月
- 『彼女たちのまなざし 日本映画の女性作家』北村匡平・児玉美月著 2023年12月
- De Luca, Tiago and Nuno Barradas Jorge eds., Slow Cinema (Edinburgh University Press, 2015)
- Ira Jaffe, Slow Movies: Countering the Cinema of Action (Wall Flower Press, 2014)
- 『すべての夜を思いだす』清原惟監督インタビュー(NOBODY,2024)
- 太田達成 × 清原惟。日本映画の次代を照らす、監督2人のフレンドシップ (BRUTUS,2024)
- 映画「すべての夜を思いだす」 清原惟監督 他人を風景にしたくない(東京新聞 2024年2月25日)
- 風景のスクリーン・プラクティス/ 佐々木友輔 第3回高畑勲と清原惟の遊歩=風景論(かみのたね・フィルムアート社ウエッブマガジン 2024年12月20日)
関連項目
編集脚注
編集- ^ “ベルリン映画祭正式出品、映画『わたしたちの家』 監督清原惟インタビュー”. Tokyo Art Beat. 2023年9月17日閲覧。
- ^ “清原惟監督 3度目の入選 ぴあフィルムフェスティバル | 町田”. タウンニュース (2017年7月20日). 2023年9月17日閲覧。
- ^ “わたしたちの映画”. SCOOL (2017年4月15日). 2023年9月17日閲覧。
- ^ a b c “清原惟 監督特集「おとめ心・あそび心」②”. 第10回ちば映画祭「上映作品」. ちば映画祭. 2023年9月15日閲覧。
- ^ “清原惟監督作品 『わたしたちの家』”. faderbyheadz.com. 2023年9月15日閲覧。
- ^ “New Directors/New Films 2018” (英語). Film at Lincoln Center. 2023年10月13日閲覧。
- ^ “清原惟監督『すべての夜を思いだす』ベルリン映画祭に正式出品決定。初長編から2作品連続で選出の快挙!”. PFF(ぴあフィルムフェスティバル)公式サイト. ニュース (2023年1月16日). 2023年9月15日閲覧。
- ^ (日本語) Yui Kiyohara on Remembering Every Night | ND/NF 2023 2023年10月9日閲覧。
- ^ “New Directors/New Films 2023” (英語). Film at Lincoln Center. 2023年9月15日閲覧。
- ^ “Yui Kiyohara on Her Critically Acclaimed New Feature, Remembering Every Night” (英語). Film at Lincoln Center (2023年9月14日). 2023年9月16日閲覧。
- ^ “Remembering Every Night – KimStim” (英語). 2023年10月9日閲覧。
- ^ “ICA | Remembering Every Night”. www.ica.art. 2024年12月20日閲覧。
- ^ “清原惟監督『すべての夜を思いだす』ベルリン映画祭に正式出品決定。初長編から2作品連続で選出の快挙!|ニュース|PFF(ぴあフィルムフェスティバル)公式サイト”. PFF(ぴあフィルムフェスティバル)公式サイト. 2023年9月17日閲覧。
- ^ “直到夜色深沉 Remembering Every Night - 台北電影節 Taipei Film Festival”. www.taipeiff.taipei. 2023年10月9日閲覧。
- ^ “San Sebastian Film Festival” (英語). sansebastianfestival. 2023年10月9日閲覧。
- ^ “Busan International Film Festival”. Busan International Film Festival. 2023年12月15日閲覧。
- ^ HKAFF. “Remembering Every Night - HKAFF - Hong Kong Asian Film Festival” (英語). HKAFF. 2023年12月15日閲覧。
- ^ (英語) Remembering Every Night 2023年12月15日閲覧。
- ^ Tsui, Clarence (2018年3月19日). “‘Our House’ (‘Watashitachi no ie’): Film Review | Filmart 2018” (英語). The Hollywood Reporter. 2023年9月25日閲覧。
- ^ “清原惟監督作品 『わたしたちの家』”. faderbyheadz.com. 2024年12月20日閲覧。
- ^ Considine, Austin (2023年9月14日). “‘Remembering Every Night’ Review: Separate Lives, Intertwined” (英語). The New York Times. ISSN 0362-4331. OCLC 990059982 2023年9月15日閲覧。
- ^ “映画『すべての夜を思いだす』2024年3月2日 ユーロスペース渋谷” (英語). subete-no-yoru.com. 2024年12月20日閲覧。
- ^ “中国最大の映画祭「上海国際映画祭」で『わたしたちの家』清原 惟監督が最優秀アジア新人監督賞受賞!|ニュース|PFF(ぴあフィルムフェスティバル)公式サイト”. PFF(ぴあフィルムフェスティバル)公式サイト. 2023年10月9日閲覧。
- ^ “北京映画祭で新人特別表彰 清原惟監督「すべての夜を―」 | 山陰中央新報デジタル”. 北京映画祭で新人特別表彰 清原惟監督「すべての夜を―」 | 山陰中央新報デジタル (2023年5月17日). 2023年9月17日閲覧。
- ^ “Yui Kiyohara - Awards” (英語). IMDb. 2023年9月17日閲覧。
- ^ a b “清原惟小論、あるいはなぜ私は『わたしたちの家』を自ら配給しようと思ったか?”. Tumblr. 2023年9月17日閲覧。
- ^ TSUKINAGA, RIE. “『わたしたちの家』:清原惟監督インタビュー”. i-d.vice.com. 2023年10月9日閲覧。
- ^ “PFFアワード2014『暁の石』(監督:清原惟、飛田みちる)”. 第36回PFF公式サイト. 2023年9月17日閲覧。
- ^ “暁の石”. PFF(ぴあフィルムフェスティバル)公式サイト. 作品データベース. 2023年9月15日閲覧。
- ^ “PFFアワード2014『暁の石』(監督:清原惟、飛田みちる)”. 第36回PFF公式サイト. 2023年9月17日閲覧。
- ^ “ひとつのバガテル”. PFF(ぴあフィルムフェスティバル)公式サイト. 作品データベース. 2023年9月15日閲覧。
- ^ “東京藝術大学大学院映像研究科「OPEN THEATER 2015-16 みんなで映画のつくり方を学ぶために友達に書き送る手紙 vol.1」を横浜で開催!”. プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES (2016年2月26日). 2023年9月17日閲覧。
- ^ 伊藤元晴 (2018年3月22日). “音と次元のフレームアウト──清原惟論”. 批評誌「エクリヲ」. 2023年10月9日閲覧。
- ^ “【イベントレポート】清原惟監督 短編集|ちば映画祭 & cafe STAND 映画とお話のブレイクタイム”. note(ノート) (2019年10月5日). 2023年9月16日閲覧。
- ^ TSUKINAGA, RIE. “『わたしたちの家』:清原惟監督インタビュー”. i-d.vice.com. 2023年9月16日閲覧。
- ^ “わたしたちの家”. PFF(ぴあフィルムフェスティバル)公式サイト. 作品データベース. 2023年9月15日閲覧。
- ^ “MADE IN YAMATO”. 映画.com. 株式会社エイガ・ドット・コム. 2023年9月15日閲覧。
- ^ “バストリオ+松本一哉『黒と白と幽霊たち』DVD”. 2023年10月9日閲覧。
- ^ “海老名のアトリエ付きシェアハウス”. 新建築オンライン. 2023年10月9日閲覧。
- ^ “「ユートピアのテーブル」 (The 5th Floor(花園アレイ))”. Tokyo Art Beat. 2023年10月9日閲覧。
- ^ “オフィシャルツアー「女木島名画座上映会」8/19(土) のお知らせ”. 瀬戸内国際芸術祭 2022. 2023年10月9日閲覧。
- ^ “第27回アートフィルム・フェスティバル | 展覧会 | 愛知県美術館”. www-art.aac.pref.aichi.jp. 2023年10月18日閲覧。