機能性構音障害
機能性構音障害(きのうせいこうおんしょうがい、functional articulation disorder)は構音障害の一種。
はっきりとした原因が見当たらないにもかかわらず、現実に構音の誤りが見られる場合[1]を言う。詳しくは、人体構造的、生理機能的、神経学的に明らかな原因が認められない、標準的語音から逸脱した語音の産生[2]を言う。言えない音があるからと言って構音障害であるということはなく、機能性構音障害は年齢、知的発達、運動発達、成育環境などから総合的に判断される[3]。
幼児に見られる種類は、音の置換、省略、側音化構音、声門破裂音、鼻咽腔構音、口蓋化構音などさまざまである[4]。 成人に見られるものは、側音化構音がもっとも多く、次いでサ行とラ行の構音操作不良、口蓋化構音と続き、声門破裂音、鼻咽腔構音はまれで、音の置換、省略はほとんど見られない[5]。
種類
編集- 音の置換
- 目的音を別の音と混同しているもの。たとえば、「メガネ」を「メダネ」という場合。
- 省略
- 発音の一部が脱落するもの。音節の中の子音がしっかりと発音されず母音に聞こえる誤り[3]として、ラ行音の「ラッパ」が「アッパ」と、「べんり」が「べんい」と、「ころす」が「こぉす」と、ワ行音について「あわ」が「あぁ」と舌足らずのように聴取される場合。母音がしっかり発音されない例として、「しゅと」が「しと」と、「なの」が「なん」と、「せつぞく」が「せっぞく」と聴取される場合。「〜という」が「〜つ」と舌足らずのように聴取される場合。
- 歪み
- 置換にも省略にも分類されない、音が歪んで聞こえるもの[3]。
機能性構音障害のタイプ
編集- 未熟構音
- 異常構音
- 側音化構音(呼気が左右に逸れて音価の歪んだもの)・声門破裂音(口内での破裂を声門での破裂で代替するもの)・鼻咽腔構音(口内での破裂や摩擦を口蓋帆と咽頭壁で代替するもの)・口蓋化構音(前舌での構音をより後部で代替するものである)・サ行の構音操作不良(不適当な舌の位置、形状によって正しい摩擦音が出ていないもの)・ラ行の構音操作不良 (前舌の位置または動作の不適当なものである)などがある。この種類の構音障害は他の種類と異なり、音声学的構音訓練で治癒すると言われている。
原因
編集機能性構音障害を生じる明らかな原因は特定できない[3]。
評価
編集新版構音検査が用いられる[6]。
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ 本間慎治 2000, p. 11.
- ^ Nicolosi,L., Harryman,E. & Kresheck,J. : Speech-Language-Hearing(4th ed),Terminology of Communication Disorders, p.19, 94, Baltimore, MD, Williams & Wilkins, 1996.
- ^ a b c d 小嶋知幸(編) 2016, p. 152.
- ^ 阿部雅子 2003, p. 8.
- ^ 成人の機能性構音障害(2020年1月5日閲覧)
- ^ 小嶋知幸(編) 2016, p. 156.
参考文献
編集- 阿部雅子『構音障害の臨床』金原出版、2003年。
- 小嶋知幸(編)『図解 やさしくわかる言語聴覚障害』ナツメ社、2016年。ISBN 978-4-8163-5944-6。
- 本間慎治『機能性構音障害-言語聴覚療法シリーズ7-』建帛社、2000年。