森のくまさん (曲)
「森のくまさん」(もりのくまさん、森の熊さん)は、アメリカ民謡を原曲とする童謡。また曲のメロディーは異なる歌詞で複数の曲に使用されている。
「森のくまさん」 | ||
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楽曲 | ||
作詞者 | キャリー・モーガン | |
作曲者 | リー・デビッド | |
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概要
編集原曲は「The Other Day, I Met a Bear」[2]あるいは「I Met a Bear」「The Bear in the Forest」「Bear in Tennis Shoes」「(The) Bear Song」などのタイトルで歌われてきたアメリカのスカウトソングである。主唱者が歌った節を伴唱者達が繰り返す「エコーソング」の典型である。スカウトのリーダーが発声者(エールマスター)となり、他のスカウトメンバーが掛け合うという形で歌われる。
日本での受容
編集「森の熊さん」 | ||||
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ダークダックス の シングル | ||||
B面 | つる | |||
リリース | ||||
ジャンル |
民謡 子供向け楽曲 | |||
レーベル | キングレコード | |||
作詞・作曲 | アメリカ民謡、馬場祥弘 | |||
ダークダックス シングル 年表 | ||||
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日本では、1969年7月に日本レクリエーション協会から出版された月刊誌『レクリエーション 第105号 特集/新しいキャンプ』において「親切な熊さん」という題名で現在も歌われる「森の熊さん」と同じ楽譜と歌詞を作詞作曲者不詳で紹介された。その後、1972年8月 - 9月にNHKの音楽番組『みんなのうた』で「森の熊さん」という題名で紹介され広く知られるようになった。これはNHKの番組プロデューサー(当時)の後藤田純生がこの曲を見つけて玉木宏樹が編曲したものである[3]。当時、日本語作詞者は不詳とされていたため、テロップでは作詞者の記載がなく、「アメリカ民謡」と編曲者の表記のみである。
同年10月25日、『みんなのうた』版のシングルレコード「森の熊さん」(「熊」の表記は漢字。キングレコード BS-1608)が発売された。
その後、同じくNHKの『おかあさんといっしょ』『ワンツー・どん』『ドレミノテレビ』などでも歌われた。
1974年以後、音楽教科書にもたびたび掲載されている[1]。
日本ではスカウトソングとして歌われることはほとんどないが、教師がエールマスターとなり児童がそれに続くという形で歌わせやすいため、幼児教育の現場では重宝されている。
シングル収録曲
編集全曲、歌:ダークダックス
歌詞
編集原詞
編集作者不詳で、細部が異なる多くのバリエーションがあるが、左は古いタイプのその一例[4]。(echo) は、直前にリーダーが歌ったフレーズの追唱。Altogether: は、リーダーと追唱グループの全員で唱和する部分で、詞はその直前と同じなので2番以降では省略した。右は子供向けによく歌われている英語歌詞。
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主人公が森を出る途中にばったりと熊に出会い、(お互いに見合ってという部分がある歌詞もある)君は逃げないのか? 銃を持っていないようだけどと熊から言われて、主人公が走り出して熊が追いかけてくる。主人公は樹に飛び移って難を逃れるという話である。運動靴(テニスシューズ)を履いている熊には話しかけるなというオチ(教訓)もついている小咄のような内容である。
熊にあって逃げるという骨子は日本語詞に似ているが、日本語詞と異なり、主人公の性別は不明で、熊も友好的ではない。主人公が銃を持っていたならば、逃げるのは熊の方であったという状況からすると主人公は猟師のようでもある。日本語詞で印象的なアイテムである貝殻のイヤリング、あるいはそれに相当する品物も全く登場しない。
日本語詞
編集日本語の歌詞はストーリー仕立てとなっている。各番の後半の、全員で唱和する部分は、原詞のように前半の繰り返しではなく、前半の続きの話になっている。
- ある日女性が森を歩いていると熊に出会った。
- 熊は女性に「お逃げなさい」と言ったので、女性は逃げた。
- 女性が走って逃げていると、熊が追いかけてきた。
- 追いついた熊は忘れ物だといって、貝殻でできたイヤリングを女性に渡した。
- 女性は熊に礼をいい、お礼に歌いだす。
日本語詞の作者
編集諸般の事情により著作者表記が変遷している。
『みんなのうた』で紹介された当時は、日本語作詞者は不詳とされていたため、「作詞・作曲:不明(アメリカ民謡)、編曲:玉木宏樹」とされていた。その後、馬場祥弘による「『森のくまさん』は自身が作詞・作曲した作品である」という主張が認められ(1980年頃に馬場祥弘が作者として認められた[5])、一時期は「作詞・作曲:馬場祥弘」としてJASRACに登録されたが、その後の調査で原曲となるアメリカ民謡の存在が判明し[5]、「作詞・作曲:不明(アメリカ民謡)、日本語訳詞:馬場祥弘、編曲:玉木宏樹」となった。その一方で、『みんなのうた』編曲者の玉木宏樹は、真の日本語作詞者は不明であると最後まで主張し続けていた[3]。
原曲がスカウトソングであることから、世界的なスカウト交流の大会である第12回世界ジャンボリー(1967年にアメリカで開催)か第13回世界ジャンボリー(1971年に日本で開催)のいずれかの世界ジャンボリーのキャンプ地にて日本のスカウト経由で訳されて伝播した説がある。
熊はなぜ逃げろと言うのか
編集クマが逃げろと言っているのに、追いかけてくるのはおかしいのではないかと考える人は多い。これには2つの説がある[注 1]。日本語作詞者が不明とすれば、口承によって伝わって変遷したものと考えられる。1975年に全音楽譜出版社から発行された楽譜では、2番でクマではなく「小鳥さん」が逃げろと忠告している。これだとストーリーに不自然な部分はなくなる。1985年発行の『季刊どうよう』第3号(チャイルド本社)において、「1970年頃、小鳥だった」と証言する人もいた[6]。
もう一つの説では、このクマは争いを好まない性格なので、暗い森から逃げたほうがいいよと忠告しているからである。この説は2005年12月16日、テレビ東京系列で放送されたテレビ番組『所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!』において「自身が日本語作詞者」と主張していた馬場祥弘が説明している[7]。また、この説は英語の歌詞で主人公が逃げろと言われる理由と近い。
メロディー
編集この曲の作曲者は米国の作曲家キャリー・モーガン (Carey Morgan, 1884-1960)とリー・デイヴィド (Lee David)である。1919年にノベルティ・ソングの『Sipping Cider Through a Straw』の歌詞に付ける形で作曲された。この歌は『小さな虫(The littlest worm)』『サイダーを飲む( Sippin Cider,The Prettiest Girl)』などの題名でも知られる。どちらにもサイダーとストローという単語が歌詞に含まれる。
『サイダーを飲む』の歌詞はアメリカで1894年に『Sucking cider thro' a straw』として発表された(作者はW. Freearとされる)ものがオリジナルであるが、上記のモーガンとデイヴィッドが作曲した歌詞は原版とは一部が異なっている。
類似のメロディーの曲として、カナダ軍の行進曲として使用された『Princess Pat』がある。
みんなのうた
編集みんなのうた 森の熊さん | |
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歌手 | ダークダックス |
作詞者 | 馬場祥弘(訳詞、諸説あり) |
作曲者 | アメリカ民謡 |
編曲者 | 玉木宏樹 |
映像 | アニメーション |
映像制作者 | 久里洋二 |
初放送月 | 1972年8月 - 9月 |
再放送月 |
1973年6月 - 7月 2005年10月-11月 2008年10月 - 11月 2012年6月 - 7月 2015年6月 - 7月(ラジオのみ) 2021年8月[注 2] |
その他 | 1974年12月31日に『特集』で再放送。 |
前述の通り、『みんなのうた』では1972年8月 - 9月に『森の熊さん』というタイトルで紹介。編曲は玉木宏樹で、ディキシーランド・ジャズ風なアレンジになっている。歌はダークダックス。映像は常連・久里洋二製作のアニメでクマが逆立ちしたり前転したりして女の子を追いかけてくる内容。放送では1番と2番・2番と3番の間に間奏、3番と4番の間にインストゥルメンタルを流し、5番はラストがアレンジされた。
1973年6月- 7月に再放送された後は、1974年12月31日に『特集みんなのうた』で再放送されたのみで、定時番組では長期に渡って再放送されなかったが、2005年10月 - 11月に32年3ヶ月ぶりに再放送され[注 3]、2012年6月 - 7月にも再放送し[注 4]、2015年6月 - 7月には初めてラジオのみの再放送もされた。
録音した歌手
編集- ダークダックス
- たいらいさお、岡崎裕美、タンポポ児童合唱団
- 山野さと子、森の木児童合唱団
- 少年隊 - 1987年、アルバム『Magical 童謡 Tour』収録。
- グッチ裕三とグッチーズ - ハッチポッチステーションより
- まゆのり - けんたろうとミクのワイワイキッズより
- 鈴置洋孝、島津冴子 - 『らんま1/2』の九能帯刀(タッチィ)役と九能小太刀(コッチィ)役。1992年、アルバム『らんま1/2 格闘歌かるた』収録。
絵本
編集- 『えほん 「NHKみんなのうた」から 森の熊さん』絵:久里洋二、日本放送出版協会、1977年。
- 『NHKみんなのうた絵本〈2〉森の熊さん/クラリネットをこわしちゃった』絵:久里洋二、童話屋、2006年、ISBN 4-88747-062-2 / ISBN 978-4-88747-062-0。 - 編曲:亀山耕一郎、合唱:森の木児童合唱団によるCDが付属。
編曲
編集- くまさん変奏曲 - 鈴木奈美の編曲。『おもしろ変奏曲にアレンジ! 〜童謡唱歌〜』(ヤマハミュージックメディア)に掲載。
使用
編集替え歌
編集映像外部リンク | |
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パーマ大佐 - 「森のくまさん」 ショートver. - YouTube | |
森のくまさん-パーマ大佐 ウクレレフルver. - YouTube | |
伊藤ハム チーズイン 「ヤタヤタヤッター」篇 - YouTube | |
サニクリーン中国CM紹介 | |
【NCT CM】「インターネットNCT ギガギガ」編 - YouTube |
- 嘉門達夫が『帰ってきた替え唄メドレー4』にて、1番をTHE ALFEEのメンバー(の姓)に置き換えた替え歌を披露。
- 1995年放送のカルビー「焼きもろこし」CM、2013年放送のカルビー「ポテトチップス ギザギザ」CM、2012年から2013年放送の競艇のCMで替え歌を使用。
- お笑い芸人のパーマ大佐が、馬場祥弘の日本語訳詞に新たな歌詞を追加し、2016年12月7日にシングルCDとして発売。一時は馬場祥弘より著作権侵害を主張されていた[8]が、新たに歌詞の改変者としてパーマ大佐の名前を記載する等を条件に円満解決で合意したと発表された[9]。
- 2016年放送の伊藤ハム「チーズイン」のテレビCMで、馬場祥弘が自らオリジナルの歌詞を書き下ろした上で、ワタナベイビーが歌唱している[10]。
- サニクリーン中国(旧:サニクリーン広島)のテレビCMで替え歌が使われている[11]。
- ケーブルテレビ局エヌ・シィ・ティ「ギガギガ」編のテレビCMで替え歌が使われている。
- 森永製菓「DARS」のテレビCMで、乃木坂46を起用した替え歌が使われている。
曲のみ
編集- 大村競艇場が、締め切り前告知BGMに使用[12]。
- 東武鉄道赤城駅で、かつて[いつ?]運転士に出発信号機が開通したことを知らせるメロディとして使用していた。
- 西日本旅客鉄道大阪環状線森ノ宮駅で、2014年3月15日ダイヤ改正から発車メロディとして使用している[13]。
- テレビドラマ『やまとなでしこ』で、主人公の神野桜子(演:松嶋菜々子)の持つ携帯電話の着信メロディとして使われていた。
- プロ野球ファミリースタジアムが、アレンジを試合開始時および試合終了時のBGMとして使用した。
- 浜名湖自動車学校(静岡県湖西市)のコマーシャルで、2011年以降BGMとして流れている。
- アーケードゲームのプーヤン(コナミ)で、ゲームスタート時に流れる。
- スターダム のプロレスラーコグマの入場テーマ曲として使用されている。
詞のみ
編集歌をそのまま使用
編集- 2000年4月22日に公開された映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶジャングル』でジャングルの真ん中を歩くかすかべ防衛隊が猛獣対策として、鼓笛で演奏しながら歌っている(1番のみ)。
その他
編集脚注
編集出典
編集- ^ a b c 『歌い継がれる名曲案内 音楽教科書掲載作品10000』日本アソシエイツ、2011年、25頁、556頁。ISBN 978-4816922916。
- ^ 森のくまさん アメリカ民謡 歌詞・日本語訳・試聴
- ^ a b 最も悪質な著作権泥棒、阪神応援団、著作権コーナー (2005年)3月8日版、玉木宏樹。(インターネットアーカイブのキャッシュ)
- ^ Songs for ASC/Summer Playground Logan Parks and Recreation
- ^ a b 長田暁二『童謡名曲事典』全音楽譜出版社、2020年、554頁。ISBN 978-4-11-880235-0。
- ^ 池田小百合なっとく童謡・唱歌
- ^ 所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!「そこんトコロ抜き打ちテスト」、テレビ東京。
- ^ パーマ大佐の「森のくまさん」パロディ曲 作詞家が著作権侵害を主張 販売差し止め求める産経WEST 2017年1月18日
- ^ パーマ大佐、「森のくまさん」騒動「円満解決で合意」作詞家一転パフォーマンス許可スポーツ報知 2017年2月2日
- ^ ロングセラー商品「チーズイン」 24年ぶりTVCM放映 伊藤ハム 2016年9月21日
- ^ サニクリーン サニクリーン広島 広島県、ぐろ~かるCM研究所 - 2019年4月23日閲覧。
- ^ ボートレース大村 お客様の声 2008年12月08日付
- ^ 平成26年3月15日(土曜日)ダイヤ改正に合わせて森ノ宮駅・京橋駅・西九条駅に発車メロディを導入し、賑わいを創出します! - 西日本旅客鉄道プレスリリース 2014年3月7日
- ^ あいみょん、珠玉の新バラード“ハート”――そのすべてを語る、rockinon.com、2021年11月24日。
注釈
編集- ^ 日本語作詞者による説明があるが、その前提となる日本語作詞者について編曲者が「作詞者不詳」を主張しているため。
- ^ 本曲のほか、『おしゃべりあひる』(ひばり児童合唱団、東京マイスタージンガー)、『ドラキュラのうた』(クニ河内、東京放送児童合唱団)、『四人目の王さま』(坂本九)とまとめて放送、全曲とも視聴者からの曲に対する思い出のナレーションが被り、また『四人目の王さま』のみフルコーラスだったが、本曲・『おしゃべりあひる』『ドラキュラのうた』はワンコーラスとした。これに対しラジオは本曲と『四人目の王さま』をまとめて放送し、思い出のナレーションは省かれた。
- ^ ただしタイトル画面と音声を除いて、映像は家庭用VTRと推測される解像度の低いもので、かなり画面は荒れていた。
- ^ その時にはテロップは上から新しいものをかぶせている。