梓弓
梓弓(あずさゆみ、あづさゆみ)は、武具のほか、神事などに使用される梓(アズサ)の丸木で作られた弓[1]。名は梓巫女(東北地方等に分布する巫女)が使用したことに由来する[1]。枕詞の一つになっている。
概要
編集梓で弓を作った記述は『古事記』にある[2]。信濃国、特に諏訪の八ヶ岳山麓の材料を使った梓弓は強靭で名高く朝廷に献上され、九州大宰府に送られて防人たちに手渡されたという[2]。梓弓には遺品として残されている例がいくつかある(正倉院中倉の3張など)。
梓弓は古くから霊を招くために使われた巫具(採物、呪具)である[1][3]。弦には麻糸や樹皮などが用いられた[1]。これを叩いて音を出すことで霊を招く[1][3]。
梓弓という固定された様式が有るわけではなく、伏見稲荷大社の奉射祭ではアズサの木の枝にそのまま弦を張っただけの弓が使用され、また式年遷宮に奉納される弓は京弓師柴田勘十郎に代々伝わる製法で作られるなど、使われる場ごとにその様相を異にする。
使用
編集枕詞としての梓弓
編集万葉集などにおいては、春(張る)、引くなどを導く。 ほかにも、いる、はる、本、末、弦、おす、寄る、かへる、ふす、たつ、矢、音なども導く。
例:梓弓 おしてはるさめ けふふりぬ あすさへふらば わかなつみてむ(古今和歌集20)
出典
編集- ^ a b c d e f 大森康宏「梓弓とイラタカ数珠」 国立民族学博物館(2007年3月14日)2022年9月14日閲覧
- ^ a b 諏訪のいろはかるた(9) 天理大学考古学研究室(2013年3月)2022年9月14日閲覧
- ^ a b 波部綾乃「弓神事の民俗的機能-名張市・天理市の宮座行事を中心に-」古事 : 天理大学考古学・民俗学研究室紀要 17 23-36頁 天理大学考古学研究室(2013年3月)2022年9月14日閲覧