南アフリカ空軍
南アフリカ空軍(英語: South African Air Force、略称SAAF)は、南アフリカ共和国の空軍組織[1]。
南アフリカ空軍 | |
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South African Air Force | |
南アフリカ空軍のエンブレム | |
創設 | 1920年 |
国籍 | 南アフリカ共和国 |
軍種 | 空軍 |
上級部隊 | 南アフリカ国防軍 |
主な戦歴 | 第二次世界大戦、ベルリン大空輸、朝鮮戦争、南アフリカ国境戦争 |
概要
編集1920年に創設され、第二次世界大戦、ベルリン大空輸、朝鮮戦争、南アフリカ国境戦争に参加した[1]。朝鮮戦争では埼玉県のジョンソン基地(現:入間基地)にF-51D戦闘機を展開させている[1]。
かつては6発の戦術核兵器(18キロトン規模)を装備していたが、1991年に核弾頭を解体して核拡散防止条約(NPT)に加盟、1993年に完全廃棄を公式に発表した[1][2]。
2023年時点で9,800名の現役兵と850名の予備役兵を有し、106機の固定翼機と84機の回転翼機を装備している[3]。司令部はプレトリアに所在する[3]。航空部隊は、1個戦闘/対地攻撃飛行隊(JAS 39装備)、1個練習/対地攻撃飛行隊(ホーク装備)、4個輸送飛行隊、1個攻撃ヘリ隊、4個輸送ヘリ隊で構成されている[3]。
軍事費の不足により、2023年10月時点で保有機の約85%は非稼働状態にあるとされる[4][5]。また、2024年2月には空軍司令部ビルの空調設備が予算不足と整備不良、老朽化により故障し、内部の環境が悪化してビルが一時閉鎖される事態となっている[6]。
保有装備
編集現役
編集機種名 | 画像 | 生産国 | 種別 | バージョン | 導入年 | 運用数 | 備考 |
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戦闘機 | |||||||
JAS 39 グリペン[3] | スウェーデン | マルチロール機 | C/D[1][3][7] | 2006年[7] | 26[4] | 1998年11月にアトラス チーターの後継として選定された[7]。調達数は26機[8]。
主にマカド基地の第2飛行隊に配備されている[7]。2023年10月時点で稼働機は2機に減少しており、24機は飛行停止状態にある[4]。 | |
輸送機 | |||||||
C-130 ハーキュリーズ[3] | アメリカ | 中型輸送機 | B/BZ[3] | 6[3] | C-130B×2機[3]、C-130BZ×4機[3]。 | ||
ビーチ200 キングエア[3] | アメリカ | 軽輸送機 | C[3] | 3[3] | |||
ビーチ300 キングエア[3] | アメリカ | 軽輸送機 | 1[3] | ||||
C-47[3] | アメリカ | 軽輸送機 | TP[3] | 1943年[10] | 3[3] | イスタープラート基地の第35飛行隊に配備され、海洋哨戒機として運用されていた[11]。
部品不足から近年は飛行しておらず、2024年5月には退役予定が発表されたが、正確な予定日は不明[11]。 | |
CASA C-212 アヴィオカー[3] | スペイン | 軽輸送機 | 200/300[3] | 3[3] | C-212-200×2機[3]。C-212-300×1機[3]。
1994年に南アフリカに再統合されたバントゥースタンのボプタツワナ空軍、トランスカイ国防軍、ヴェンダ国防軍より計4機を移管。[12]。 | ||
セスナ550 サイテーションII[3] | アメリカ | 軽輸送機 | 2[3] | ||||
ピラタス PC-12[3] | アメリカ | 軽輸送機 | 1[3][13] | ウォータークルーフ基地の第41飛行隊に配備[13]。 | |||
セスナ208 キャラバン[3] | アメリカ | 軽輸送機 | 208[3] | 9[3] | 保管中[3] | ||
ボーイング737[3] | アメリカ | 人員輸送機 | BBJ[3] | 1[3] | |||
ファルコン50[3] | フランス | 人員輸送機 | 2[3] | 第21飛行隊に配備[14]。 | |||
ファルコン900[3] | フランス | 人員輸送機 | 1[3] | 第21飛行隊に配備[15]。 | |||
練習機 | |||||||
BAE ホーク[3] | イギリス | 練習機 | Mk. 120[3][1] | 24[3][4] | 武装も可能[1]。
1990年代後半の「戦略防衛調達パッケージ」により24機を導入[8]。2023年10月時点で稼働機は3機に減少しており、21機は飛行停止状態にある[4]。 | ||
ピラタス PC-7[3] | スイス | 練習機 | Mk. II アストラ[3][16] | 35[3] | 2023年時点で稼働機は2機[9]。 | ||
回転翼機 | |||||||
AH-2 ローイファルク[3] | 南アフリカ | 攻撃ヘリコプター | 11[3] | ブルームスプロイト基地の第16飛行隊に配備されている[17]。2023年時点で稼働機は2機[9]。 | |||
スーパーリンクス[3] | イギリス | 汎用ヘリコプター | Mk. 300[3] | 4[3] | イスタープラート基地の第22飛行隊に配備されている[18]。海洋哨戒ヘリとして運用[9]。2023年時点で稼働機は1機[9]。 | ||
アトラス オリックス[3] | 南アフリカ | 輸送ヘリコプター | 36[3] | 2023年時点で稼働機は6機[9]。 | |||
AW109[3] | イタリア | 輸送ヘリコプター | LUH[19] | 25[3] | 30機を発注、うち25機は南アフリカで組立[19]。 | ||
BK117[3] | 日本/ドイツ | 輸送ヘリコプター | 8[3] | 1990年代後半の「戦略防衛調達パッケージ」により30機を導入[8]。 | |||
兵装 | |||||||
IRIS-T[3] | ドイツ | 空対空ミサイル | |||||
A-ダーター[20] | 南アフリカ | 空対空ミサイル | 2024年10月に訓練弾を納入[20]。2025年から実弾を納入予定[20]。 | ||||
GBU-12 ペイブウェイII[3] | アメリカ | レーザー誘導爆弾 | |||||
小火器 | |||||||
軽機関銃[21] | 軽機関銃 | 基地防衛用[21]。 | |||||
ベクター R5[21] | 南アフリカ | 自動小銃 | 基地防衛用[21]。 | ||||
12ゲージ散弾銃[21] | 散弾銃 | 基地防衛用[21]。 | |||||
9mm拳銃[21] | 拳銃 | 基地防衛用[21]。 |
退役
編集退役した装備としては、以下のようなものがある。
- パターソン(英語版) - 南アフリカの飛行士訓練に使用された最初期の機体[22]
- ホーカー フューリー[23]
- スーパーマリン スピットファイア[24]
- ノースアメリカン ハーバード[25]
- F-51 - 朝鮮戦争に参加[1]。
- カナディア セイバー[26]
- ダッソー ミラージュIII - 1962年4月に発注し、同年12月から納入を開始[26]。ミラージュIIICZ×16機、ミラージュIIIBZ/DZ/D2Z×17機、ミラージュIIIRZ/R2Z×8機、ミラージュIIIEZ×17機を導入[26]。一部の機体はチーターに改修された[26]。
- ブラックバーン バッカニア - 1965年にS.Mk50×16機を受領[27]。1991年退役[27]。
- アトラス インパラ - MB-326をキット組立ておよびライセンス生産[28]。複座型のMk1は1966年に初飛行し、151機を生産[28]。単座型のMk2は1974年から配備が始まり、100機を生産[28]。
- ダッソー ミラージュF1 - 1974年9月から1976年10月にかけて、ミラージュF1AZ×32機、ミラージュF1CZ×16機を導入[29]。1981年11月にアンゴラのMiG-21を1機撃墜、1982年10月にも1機にミサイルを命中させ不時着させているが、1989年には2機のミラージュF1AZが撃墜されている[29]。退役機の一部はコンゴとガボンに売却された[29]。
- クフィル - クフィルC2/T2(イスラエルの余剰機)を購入し、チーターに改修したとする資料がある[26]。
- アトラス チーター - ミラージュIIIの近代化改修機[26][30]。1986年に公表された[30]。
- イングリッシュ・エレクトリック キャンベラ[31]
- Ju86[18]
- アブロ アンソン[18]
- ロッキード ベンチュラ[18]
- ピアッジオ P166S アルバトロス(英語版)[32]
- アブロ シャクルトン - MR-3[33]
- DC-4[33]
- HS.125 マーキュリーズ[33]
- バイカウント781[33]
- トランザール C-160[33]
- メルリンIV A[33]
- セスナ185[33]
- AM.3C ボスボク(英語版)[33]
- C.4M クードー(英語版)[33]
- ボーイング707 - 5機の707-320Bを運用[34]。うち4機は電子戦機兼空中給油機、1機は輸送機として使用されていた[34][35]。
- ウェストランド ワスプ[18] - HAS-1[33]。1990年に退役[18]。
- アルエットII[33]
- アルエットIII[31]
- SA330 ピューマ[18]
- シュペルフルロン[33]
- R530[33]
- R550マジック[33]
- AS30[36]
事件・事故等
編集脚注
編集出典
編集- ^ a b c d e f g h 柿谷 哲也『万物図鑑シリーズ 全164か国 これが世界の空軍力だ!』笠倉出版社、2014年6月23日。ISBN 978-4-7730-8717-8。
- ^ “広島世界平和ミッション 南アフリカ編―核廃絶への歩み”. 中国新聞ヒロシマ平和メディアセンター (2004年5月10日). 2024年12月21日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at au av aw ax ay az ba bb bc bd be The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. pp. 476-478. ISBN 978-1-032-50895-5
- ^ a b c d e “「戦わずして空軍が瀕死の状態!」南アフリカ政府が驚愕の稼働率を発表 どうしてこうなった!?”. 乗りものニュース (2023年10月28日). 2024年12月20日閲覧。
- ^ Gareth Jennings (2023年10月23日). “South African Air Force largely grounded, government reports”. janes.com. 2024年12月20日閲覧。
- ^ Guy Martin (2024年2月28日). “Another government security cluster building shut over unsafe conditions”. defenceweb.co.za. 2024年12月21日閲覧。
- ^ a b c d 『世界の名機シリーズ JAS39 グリペン〈増補版〉』イカロス出版、2017年10月30日、52頁。ISBN 9784802204118。
- ^ a b c “Budget cuts, not mismanagement, at the heart of SANDF maintenance issues”. defenceweb.co.za (2024年10月8日). 2024年12月21日閲覧。
- ^ a b c d e f g “Gloomy picture of SANDF prime mission equipment readiness”. defenceweb.co.za (2023年5月25日). 2024年12月21日閲覧。
- ^ Kim Helfrich (2023年6月28日). “C-47 racks up 80 years in the SAAF”. defenceweb.co.za. 2024年12月21日閲覧。
- ^ a b “C47-TP grounding leaves SAAF with no maritime eyes in the sky”. defenceweb.co.za (2024年9月9日). 2024年12月21日閲覧。
- ^ Guy Martin (2023年12月22日). “SAAF C212 damaged in crash-landing at Lohatlha”. defenceweb.co.za. 2024年12月21日閲覧。
- ^ a b “SA Air Force transports first bulk batch of vaccines to the Western Cape”. defenceweb.co.za (2021年2月18日). 2024年12月21日閲覧。
- ^ “Use of SAAF aircraft for party political purposes slammed”. defenceweb.co.za (2024年1月24日). 2024年12月21日閲覧。
- ^ “Discrepancies in Ministerial reports on Harare flight”. defenceweb.co.za (2020年10月2日). 2024年12月21日閲覧。
- ^ 『週刊ワールド・ウェポン No.62』デアゴスティーニ、2003年12月2日、28頁。
- ^ Kim Helfrich (2024年12月10日). “A year’s worth of work ahead to make three Rooivalks airworthy after DRC return”. defenceweb.co.za. 2024年12月21日閲覧。
- ^ a b c d e f g Dean Wingrin (2022年8月8日). “22 Squadron celebrates 80th anniversary”. defenceweb.co.za. 2024年12月21日閲覧。
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- ^ a b c d e f g h “SAAF’s 508 Squadron sharpens musketry skills”. defenceweb.co.za (2023年11月9日). 2024年12月21日閲覧。
- ^ “SAAF Museum re-establishes ties with McGregor Museum”. defenceweb.co.za (2021年3月21日). 2024年12月21日閲覧。
- ^ 『週刊ワールド・ウェポン No.27』デアゴスティーニ、2003年4月1日、20頁。
- ^ “Spitfire 5518 restoration progressing despite COVID hiccups”. defenceweb.co.za (2021年5月13日). 2024年12月21日閲覧。
- ^ “Air Force Association SAAF 100 book project progressing”. defenceweb.co.za (2021年5月4日). 2024年12月21日閲覧。
- ^ a b c d e f 『世界の傑作機 NO.70 ダッソー・ミラージュIII』文林堂、1998年5月5日、16,46頁。
- ^ a b 『週刊ワールド・ウェポン No.99』デアゴスティーニ、2004年8月24日。
- ^ a b c 『週刊ワールド・ウェポン No.118』デアゴスティーニ、2005年1月11日、17頁。
- ^ a b c 『世界の名機シリーズSE ミラージュF1』イカロス出版、2024年9月30日、66-67頁。
- ^ a b 『週刊ワールド・ウェポン No.56』デアゴスティーニ、2003年10月21日、12頁。
- ^ a b 『週刊ワールド・ウェポン No.102』デアゴスティーニ、2004年9月14日、29-30頁。
- ^ “New home at SAAF Museum for Dawid Stuurman gate guards”. defenceweb.co.za (2022年5月13日). 2024年12月21日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n 国際戦略研究所 編、防衛庁防衛局調査第二課 訳『ミリタリー・バランス 1981-1982』朝雲新聞社、1981年11月25日、171-172頁。ISBN 4-7509-3003-2。
- ^ a b 『週刊ワールド・ウェポン No.111』デアゴスティーニ、2004年11月16日、21頁。
- ^ “SAAF Boeing 707 spares up for sale”. defenceweb.co.za (2023年4月21日). 2024年12月21日閲覧。
- ^ 『週刊ワールド・ウェポン No.95』デアゴスティーニ、2004年7月27日、25頁。