停限年齢
停限年齢(ていげんねんれい)は、大日本帝国で定められた、官吏その他が法規・規則上、当然退職しなければならない年齢である。
概要
編集停限年齢、あるいは停年制は、老年者が勇退し後進のために途を開き譲ろうとする世代交代の趣旨で設けられるとされる。
大日本帝国の一般文官は文官分限令の規定によって老年に達せずして退官する者も多いため特別に停限年齢のようなものが設けられる必要は認めがたいが、司法官および陸軍海軍軍人のような終身官は、放任しておくと、年ごとに官制において定員を超過する過員が生ずるおそれがないではないため、かかる事態が出来するのを未然に防止するために停限年齢という制度が設けられる必要性があるとされた。
終身官の官吏は停限年齢によって退職してもなお官吏としての身分を失うものではないが、以後、俸給を受けずして恩給法によって恩給を受給することとなる。
停限年齢の実際を列挙すれば以下のとおり。
司法
編集司法官の停年制は、大審院長の職にある者は65歳に、その他の判事の職にある者は63歳に達したとき当然退職する。ただし控訴院または大審院の総会において3年以内の期間を定めて在職させるものと決議したときはその期間の満了のときまで退職を延期する(裁判所構成法74条ノ2)。
検事総長の職にある者は65歳に、その他の検事の職にある者は63歳に達したとき当然退職する。ただし司法大臣は3年以内の期間を定めてこれを在職させることができる(80条ノ2)。
陸軍
編集陸軍軍人の停限年齢(陸軍武官服役令7条)は、将校同相当官の現役定限年齢は次の表のとおり。
将校 | |||||||
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大将 | 中将 | 少将 | 大佐 | 中佐 | 少佐 | 大尉 | 中、少尉 |
65歳 | 62歳 | 58歳 | 55歳 | 53歳 | 50歳 | 48歳 | 45歳 |
将校相当官 | |||||||
主計総監 軍医総監 薬剤総監 獣医総監 |
主計監 軍医監 薬剤監 獣医監 |
一等主計正 一等軍医正 一等薬剤正 一等獣医正 |
二等主計正 二等軍医正 二等薬剤正 二等獣医正 |
三等主計正 三等軍医正 三等薬剤正 三等獣医正 |
一等主計 一等軍医 一等薬剤官 一等看護官 一等獣医 一、二、三等楽長 |
二、三等主計 二、三等軍医 二、三等薬剤官 二、三等看護官 二、三等獣医 | |
62歳 | 60歳 | 56歳 | 54歳 | 52歳 | 50歳 | 47歳 |
元帥である大将の現役定限年齢には制限がない(終身制)。
予備役将校の服役期間の終期は現役定限年齢に達した翌年の3月31日である。
海軍
編集海軍軍人の停限年齢(海軍武官服役令8条)は、現役士官の現役定限年齢は次の表のとおり。
将校 | |||||||
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大将 | 中将 | 少将 | 大佐 機関大佐 |
中佐 機関中佐 |
少佐 機関少佐 |
大尉 機関大尉 |
中、少尉 機関中、少尉 |
65歳 | 60歳 | 56歳 | 52歳 | 48歳 | 45歳 | 43歳 | 38歳 |
将校相当官 | |||||||
軍医中将 主計中将 造船中将 造機中将 造兵中将 |
軍医少将 薬剤少将 主計少将 造船少将 造機少将 造兵少将 |
軍医大佐 薬剤大佐 主計大佐 造船大佐 造機大佐 造兵大佐 水路大佐 |
軍医中佐 薬剤中佐 主計中佐 造船中佐 造機中佐 造兵中佐 水路中佐 |
軍医少佐 薬剤少佐 主計少佐 造船少佐 造機少佐 造兵少佐 水路少佐 |
軍医大尉 薬剤大尉 主計大尉 造船大尉 造機大尉 造兵大尉 水路大尉 |
軍医中、少尉 薬剤中、少尉 主計中、少尉 造船中、少尉 造機中、少尉 造兵中、少尉 水路中、少尉 | |
62歳 | 58歳 | 54歳 | 50歳 | 47歳 | 44歳 | 40歳 |
元帥である大将の現役定限年齢は陸軍と同様に制限がない。
各科特務大尉 | 各科特務中、少尉 | 准士官 |
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52歳 | 50歳 | 48歳 |
なお、軍人の場合、佐官以下では停限年齢ぎりぎりまで現役にとどまる例はほとんどなかった。たとえば海軍将校の少尉の場合、普通なら海軍兵学校を出た直後になる少尉に、そのまま停限年齢の38歳まで進級も退役もせずに留まっていることはありえないためである。
以上のほかにそれぞれの帝国大学において内規で教授の停限制が設けられていることがある。