ワルナスビ

ナス科の多年草

ワルナスビ(悪茄子、学名: Solanum carolinense )はナス科多年草日本も含め世界的に帰化している外来種である。

ワルナスビ
ワルナスビ
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: ナス目 Solanales
: ナス科 Solanaceae
: ナス属 Solanum
: ワルナスビ S. carolinense
学名
Solanum carolinense L. (1753)[1]
和名
ワルナスビ(悪茄子)
英名
Carolina horsenettle
Horse Nettle[2]
Apple of Sodom[2]
ワルナスビの果実

名前

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和名は、これらのたちが悪い生態により付けられた[3]。別名で、ノハラナスビ、オニナスビなどの名もある[2]

英語でも「Apple of Sodomソドムのリンゴ)」、「Devil's tomato悪魔のトマト)」などの悪名で呼ばれている。花言葉は「悪戯」である。

分布

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アメリカ合衆国南東部(カロライナ周辺)の原産。ヨーロッパアジアオセアニアに移入分布する。

日本では関東地方で広い範囲にわたって害草化し、他の地方でも局部的に広がりつつある[2]

特徴

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多年生の草本[2]。地下に長い根茎を伸ばす[2]は高さ40 - 70センチメートル (cm) になり、節ごとにくの字形に曲がる[2]。茎やには鋭いとげが多い[2]。葉は両面ともビロード状の星状毛を密生して中央脈にトゲがある[2]

花期は夏から秋[2]。茎の節間部に花枝がつき、数個から10個ほどのをつける[2]。花は白色または淡青色で同科のナスジャガイモに似ている。萼片は尖って、背面にまばらに毛がある[2]花冠は先が5裂して星形から五角形となり、径2.5 cm前後[2]は黄色で花糸よりも長い[2]

果実は径1.5 cmの球形で、基部にが残存し、黄橙色に熟しプチトマトに似るが[2]、全草がソラニンを含み有毒であるため食用にはできず、家畜が食べると場合によっては中毒死することがある。また、美味しそうに見える果実でもあるため、子供などがトマトなどと勘違いして口にしてしまう危険性も高い。厄介な雑草である。

外来種問題

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日本では1906年明治39年)に千葉県成田市御料牧場牧野富太郎により発見及び命名され、以降は北海道から沖縄まで全国に広がっている[4]。牧野は三里塚で採ったものを自宅に植えたら、根茎で殖えてなかなか絶えず、ワルナスビと呼んでいたことを記している[2]1980年代頃から有害雑草として認識されるようになった[4]。鋭い刺や毒を有するため、家畜に被害を与え、作物の品質を低下させる[5]

種子が家畜の糞などに混じって広がり、垂直および水平に広がる地下茎を張ってよく繁茂する。耕耘機などですきこむと、切れた地下茎のひとつひとつから芽が出てかえって増殖する。除草剤も効きにくいため、一度生えると完全に駆除するのは難しい。特にナス科であるため、畑に生えるとナス、トマト、ジャガイモなど同科の作物に2年の連作障害を与える。また、直接畑などに生えなくとも、付近の土地に生えただけで、ナス科作物の害虫であるニジュウヤホシテントウの温床ともなり[3]、付近の作物に飛び火する恐れのある厄介な害草である。

外来生物法により要注意外来生物に指定されている。

参考文献

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  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Solanum carolinense L. ワルナスビ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年8月24日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 長田武正 1976, p. 118.
  3. ^ a b 岩槻秀明『街でよく見かける雑草や野草がよーくわかる本』秀和システム、2006年11月5日。ISBN 4-7980-1485-0  pp.278-279
  4. ^ a b 宮崎桂「多年草雑草ワルナスビの根系による栄養繁殖」(PDF)『根の研究』第14巻第3号、2005年、99-104頁、2011年9月6日閲覧 
  5. ^ 多紀保彦(監修) 財団法人自然環境研究センター(編著)『決定版 日本の外来生物』平凡社、2008年4月21日。ISBN 978-4-582-54241-7  pp.326-327

参考文献

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