ロピバカイン
ロピバカインは、アミド型の局所麻酔薬である。ロピバカインという名前は、ラセミ体と市販されているS-エナンチオマーの両方を指す。S-エナンチオマーの塩酸塩が、サンドファーマからアナペインという商品名で販売されている。
IUPAC命名法による物質名 | |
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臨床データ | |
販売名 | アナペイン |
Drugs.com | monograph |
胎児危険度分類 |
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法的規制 |
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薬物動態データ | |
生物学的利用能 | 87%–98% (epidural) |
代謝 | Liver (CYP1A2-mediated) |
半減期 | 1.6–6 hours (varies with administration route) |
排泄 | Kidney 86% |
データベースID | |
CAS番号 | 84057-95-4 |
ATCコード | N01BB09 (WHO) |
PubChem | CID: 175805 |
IUPHAR/BPS | 7602 |
DrugBank | DB00296 |
ChemSpider | 153165 |
UNII | 7IO5LYA57N |
KEGG | D08490 |
ChEBI | CHEBI:8890 |
ChEMBL | CHEMBL1077896 |
化学的データ | |
化学式 | C17H26N2O |
分子量 | 274.41 g·mol−1 |
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物理的データ | |
融点 | 144 - 146 °C (291 - 295 °F) |
歴史
編集ロピバカインは、特に妊婦においてブピバカインが心停止と関連していることが指摘された後に開発された[1]。動物モデルでは、ロピバカインはブピバカインよりも心毒性が少ないことがわかった。日本での薬価収載は2001年6月[2]。
臨床使用
編集薬理作用
編集ロピバカインはアミド型の長時間作用性の局所麻酔薬で,pKa(解離恒数)は8.1,蛋白結合率は94%とブピバカインとほぼ同等であるが,脂溶性はブピバカインより低く,メピバカインやリドカインよりは高い[3]。本薬は,毒性の低いとされるS(-)-エナンチオマーのみから構成されているため,中枢神経毒性の指標とされる痙攣閾値がブピバカインよりも1.5~2.5倍高く,レボブピバカインと同等である[3]。心毒性(催不整脈作用,心収縮力低下,循環虚脱後の蘇生)においても,ブピバカインおよびレボブピバカインと比較して,ロピバカインでより毒性が低いとされている[3]。等用量を投与する場合には,ロピバカインの中枢神経毒性や心毒性はブピバカインおよびレボブピバカインよりも低いと考えられる[3]。ただし,臨床的に同じ麻酔効果を発現するには,ロピバカインはブピバカインやレボブピバカインに比較して1.3~1.5倍の用量が必要である[3]。低濃度で用いれば、運動ブロックを最小限にして感覚ブロックが可能であり(分離麻酔)、この特性は無痛分娩や術後鎮痛において特に重要(患者の離床を妨げないため)だが、この点においてもロピバカインはレボブピバカインと大きな違いは無いとされる[4]。
禁忌
編集ロピバカインは、静脈内局所麻酔(IVRA) には禁忌である。しかし、最近のデータによれば、ロピバカイン (1.2-1.8 mg/kg in 40ml) もレボブピバカイン (40 ml の 0.125% 溶液) も、ラセミ体ブピバカインよりも心血管および中枢神経系への毒性が少ないため、使用できるとされる[5]。静脈内への誤注入をさけるための相互接続防止コネクタ対応製品の開発が進められていたが、2022年12月時点では発売断念が公表された[6]。
有害な影響
編集薬物有害反応(ADR) は、正しく投与されている場合はまれである。ほとんどの ADR は、投与技術 (全身暴露をもたらす) または麻酔の薬理学的影響に関連しているが、アレルギー反応はめったに発生しない。
過度の量のロピバカインへの全身暴露は、主に中枢神経系(CNS) および心血管への影響をもたらす。CNS への影響は通常、血漿濃度が低い場合に発生し、さらに高濃度では心血管への影響が現れるが、低濃度でも心血管の虚脱も発生する可能性はある。中枢神経系への影響には、中枢神経系の興奮(神経過敏、口の周りのうずき、耳鳴り、振戦、めまい、かすみ目、痙攣に続く抑うつ(眠気、意識喪失)、呼吸抑制、無呼吸)が含まれる場合がある。心血管への影響には、低血圧、徐脈、不整脈、および/または心停止が含まれる。その一部は、呼吸抑制に続発する低酸素血症が原因である可能性がある。
関節鏡視下術後肩甲上腕関節軟骨融解症
編集ロピバカインは軟骨に対して有毒であり、関節内注入は関節鏡下手術後の肩甲上腕関節の軟骨融解を引き起こす可能性がある[7]。
過剰投与時の治療
編集ブピバカインに関しては、一般的に入手可能な静脈内脂質エマルジョンであるセレピッドは、動物実験[8]およびリピッドレスキューと呼ばれる手順でのヒトにおける局所麻酔薬の過剰摂取に起因する重度の心毒性の治療に効果的である[9][10][11]。
脚注
編集- ^ 照井克生 (2009). “帝王切開・無痛分娩における ロピバカインの臨床使用の実際”. 日本臨床麻酔学会誌 29: 708 .
- ^ “医療用医薬品 : アナペイン (商品詳細情報)”. www.kegg.jp. 2023年8月23日閲覧。
- ^ a b c d e “麻酔薬および麻酔関連薬使用ガイドライン第3版 Ⅴ 局所麻酔薬”. 日本麻酔科学会. p. 138 (2015年3月13日). 2022年12月18日閲覧。
- ^ Casati, Andrea; Putzu, Marta (2005-06-01). “Bupivacaine, levobupivacaine and ropivacaine: are they clinically different?”. Best Practice & Research Clinical Anaesthesiology 19 (2): 247–268. doi:10.1016/j.bpa.2004.12.003. ISSN 1521-6896 .
- ^ (Basic of Anesthesia, Robert Stoelting, page 289)
- ^ “※続報※【周知】アナペイン、ポプスカイン相互接続防止コネクタ対応製品の発売断念|公益社団法人 日本麻酔科学会”. anesth.or.jp. 2023年1月4日閲覧。
- ^ “Articular cartilage and local anaesthetic: A systematic review of the current literature”. Journal of Orthopaedics 12 (Suppl 2): S200-10. (December 2015). doi:10.1016/j.jor.2015.10.005. PMC 4796530. PMID 27047224 .
- ^ “Lipid emulsion infusion rescues dogs from bupivacaine-induced cardiac toxicity”. Regional Anesthesia and Pain Medicine 28 (3): 198–202. (2003). doi:10.1053/rapm.2003.50041. PMID 12772136.
- ^ “Lipid emulsion to treat overdose of local anaesthetic: the gift of the glob”. Anaesthesia 61 (2): 107–9. (February 2006). doi:10.1111/j.1365-2044.2005.04494.x. PMID 16430560.
- ^ “Successful use of a 20% lipid emulsion to resuscitate a patient after a presumed bupivacaine-related cardiac arrest”. Anesthesiology 105 (1): 217–8. (July 2006). doi:10.1097/00000542-200607000-00033. PMID 16810015.
- ^ “Successful resuscitation of a patient with ropivacaine-induced asystole after axillary plexus block using lipid infusion”. Anaesthesia 61 (8): 800–1. (August 2006). doi:10.1111/j.1365-2044.2006.04740.x. PMID 16867094.
外部リンク
編集- “Ropivacaine”. Drug Information Portal. U.S. National Library of Medicine. 2022年11月26日閲覧。
- “Ropivacaine hydrochloride”. Drug Information Portal. U.S. National Library of Medicine. 2022年11月26日閲覧。