ラメント英語lament, またはlamentation, ラメンテーションフランス語およびドイツ語Lamentoイタリア語lamentazione, ラメンタツィオーネ)とは、嘆き、遺憾、哀悼を表した、楽曲。日本語では哀歌(あいか)、嘆き歌(なげきうた)、悲歌(ひか)、挽歌(ばんか)と訳される。

文学のラメント

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ラメントは古くからあり、『イーリアス』、『オデュッセイア』、『ベーオウルフ』、ヒンドゥー(Hindu)のヴェーダ、それに『ウル市滅亡哀歌英語版』などのメソポタミアの都市のラメントやユダヤ教タナハ旧約聖書)を含む古代中東(Ancient Near East)の宗教的テキストの中にも登場する。古代・近代を問わず、多くの口承の中では、ラメントは普通女性によって演じられるジャンルだった。

「lamentation(哀歌)」という語は旧約聖書の『Lamentations of Jeremiah(エレミアの哀歌)』の短い書名として使われる。芸術においては、「キリストの哀悼(Lamentation of Christ)」は「キリストの生涯(Life of Christ)」からのよくあるテーマで、磔刑後、人々に悼まれるキリストの遺骸を描いたものである。

音楽のラメント

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音楽で、ラメントは悲しみの歌を指す。記録に残っているもので最古のものは13世紀の作者不詳のエスタンピー『トリスタンの哀歌(Lamento di Tristano)』である。

クラシック音楽には、『エレミアの哀歌』をテキスト使用または題材にした曲が多くある。主のものは以下の通り。

他には、次のような曲がある。

17世紀になって、クラウディオ・モンテヴェルディの『アリアンナの嘆き(Lamento d'Arianna)』(1608年)、『ニンフの嘆き(Lamento della Ninfa)』(1638年)で「ラメント・バスLamento bass)」という楽式が生まれた。「a-g-f-e」あるいは「a-gis-g-fis-f-e」と音階が全音階または半音階ずつ完全4度まで下がってゆくものである。オスティナートとしてはとくに珍しいものではなく、たとえば、ヘンリー・パーセルの『ディドとエネアス』のアリア『ディドの嘆き』や、J・S・バッハの『ミサ曲 ロ短調』の『クルシフィクス(十字架につけられ)』、モーツァルトの『大ミサ曲』などに使われている。

他に、グレート・ハイランド・バグパイプのためのピーブロホク(Pìobaireachd)の形式にも「ラメント(lament)」と呼ばれるものがある。

関連項目

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参考文献

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  • Margaret Alexiou, The ritual lament in Greek tradition. Cambridge: Cambridge University Press, 1974.
  • H. Munro Chadwick, Nora Kershaw Chadwick, The growth of literature (Cambridge: Cambridge University Press, 1932-40), e.g. vol. 2 p. 229.
  • Andrew Dalby, Rediscovering Homer (New York: Norton, 2006. ISBN 0393057887) pp. 141-143.
  • Gail Holst-Warhaft, Dangerous voices: women's laments and Greek literature. London: Routledge, 1992. ISBN 0415121655.
  • Claus Westermann, Praise and Lament in the Psalms. Westminster: John Knox Press, 1981. ISBN 0804217920.
  • Ulrich Kaiser: Lamentobass, Ein musikalischer Topos von Monteverdi bis zu den Eagles. Applaus 24. Leipzig 2006, ISBN 3-12-177822-6

外部リンク

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