ペトロ (通貨)
ペトロ(Petro)は、ベネズエラ政府によって発行されていた暗号通貨。
ペトロ | |
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petro | |
使用開始日 | 2018年11月5日 |
使用 国・地域 | ベネズエラ |
通貨記号 | PTR |
複数形 | Petros |
概要
編集2017年12月3日、ニコラス・マドゥロ大統領により導入が発表された[1]。国家レベルで暗号通貨を発行し流通させるのは世界初とされている[2]。裏付けは地下資源とされているが、交換が可能なわけではなく、制度的に不透明である[3]。当初のレートは1ペトロ=60アメリカ合衆国ドルとされた[3]。
ベネズエラでは深刻なハイパーインフレーションが進行しており、ベネズエラ政府は当初ペトロを国際決済手段として考えていたが、取引に応じる国はなかった[3]。このため国内流通に切り替え、度々ペトロの流通促進措置をとっている[3]。しかし国内市場でも下落が続き、2020年1月には公定価格の半額で取引が行われていた[3]。
しかし、利用は低迷。政府による利用促進策も功を奏さず、2024年1月15日をもって運用を停止し、残ったトークンは現地通貨であるボリバルに交換された[4]。
沿革
編集アメリカの反応
編集2018年1月、アメリカ合衆国財務省はペトロの仮想通貨の作成がベネズエラへの制裁に違反する可能性があると警告した[8]。ドナルド・トランプ大統領(当時)は、ペトロはベネズエラに対する制裁を分かりにくくするように設計されていると主張した。2018年3月19日発効で、アメリカ人またはアメリカ国内でのペトロの取引を禁止する大統領令に署名した[9][10]。
ブルッキングス研究所は「基軸通貨をほとんど持たない独裁国家が、ペトロ導入のような欺瞞的な手段に訴えたことは比較的驚くべきことではない。ペトロは、何もないところから外貨準備を生み出すために存在している」と述べた。ペトロの販売は仮想通貨の評判を傷つけ、制裁対象国はベネズエラと同じ詐欺的戦略を追求する可能性があると危険性を示していた[11]。
脚注
編集- ^ “ベネズエラ、仮想通貨「ペトロ」導入へ 埋蔵資源が裏付け”. ロイター. (2017年12月4日) 2018年1月4日閲覧。
- ^ “ベネズエラ政府が独自の仮想通貨「Petro」を法令で発行”. Coin Choice. (2018年1月6日) 2018年1月6日閲覧。
- ^ a b c d e f g 坂口安紀 (2020年7月). “第7回 破綻経済と仮想通貨(ベネズエラ)《新興国発イノベーション》(坂口安紀)”. アジア経済研究所. 2020年10月12日閲覧。
- ^ “Venezuela Kills Off Petro Cryptocurrency”. バロンズ. (2024年1月12日) 2024年2月6日閲覧。
- ^ “ベネズエラ政府が11月5日から仮想通貨ペトロの販売を開始”. CoinHack News(コインハックニュース). (2018年10月7日)
- ^ “ベネズエラ、パスポートの支払いを仮想通貨で”. スプートニク日本. (2018年10月6日)
- ^ “Venezuela Kills Off Petro Cryptocurrency”. バロンズ. (2024年1月12日) 2024年3月10日閲覧。
- ^ Wroughton, Lesley (12018-01-16). “U.S. warns investors over Venezuela's 'petro' cryptocurrency”. Reuters 2024年1月6日閲覧。
- ^ “Executive Order on Taking Additional Steps to Address the Situation in Venezuela”. whitehouse.gov. 2024年2月6日閲覧。
- ^ “Trump Bans US Use of Venezuelan Cryptocurrency”. 2024年2月6日閲覧。
- ^ West, Jack Karsten and Darrell M. (9 March 2018). “Venezuela's "petro" undermines other cryptocurrencies – and international sanctions” (英語). ブルッキングス研究所 2024年2月6日閲覧。