ハーリング (料理)
用語
編集原義からすれば、西ゲルマン語群に見られる「ニシン属の魚[注 1]」を意味する語(オランダ語の haring、ドイツ語の Hering、英語の herring 等)の仮名音写(表記揺れ:ヘリング、ヘーリング)と言える。とはいえ、日本で外来語として通用しているわけではなく、新鰊/新ニシン(しんにしん)と意訳されもするオランダ発祥の塩漬け魚料理の一種である。タイセイヨウニシン(アトランティックハーリング)の若魚[注 2]を生の状態でマリネにした料理であるところの、Hollandse Nieuwe[注 3](日本語音写例〈以下同様〉:ホーランセ ニウエ)を指す。逆を言えば、「ハーリング[注 4]」という単語一つで料理名を指すのは日本語だけである[注 5]。
なお、かかる食文化が定着している地域では、それぞれフラマン語で maatjesharing (マーチェスハリング。原意:若くて小さいハーリング)もしくは maatjes (マーチェス。原意:若いの、小さいの)[注 6]、ドイツ語で Matjes (マティエス)、英語で Soused herring〈サウズド ハーリング。原意:塩漬けハーリング〉もしくは matjes herring (マーチェス ハーリング)という。
調理法
編集マリネの漬け汁は、食酢、リンゴ酒、ワインまたは紅茶、ハーブ(ローリエ等)、スパイス(ナツメグ等)やニンニクから作られている。
オランダ、ドイツ、スウェーデンでは少し塩を利かせて発酵させたものが多く、イギリスやカナダではロールキャベツのように巻いた形のロールモップスで売られることもある。
日本では、オランダの露天で売られている生のニシン料理がよく知られている。
歴史・食文化
編集このニシンの調理法は中世のオランダで生み出された。ニシン漁が解禁される5月末から6月初めにかけて、デンマークからノルウェーの沖の北海で獲れたものが使われる[2]。なぜなら、この頃のタイセイヨウニシンは魚卵や白子がまだ発達せず、脂が乗っているからである。オランダでは夏の風物詩のように食べられており、スヘフェニンゲンの「旗の日」(6月14日)のように新ニシンを味わう催事が開かれる地域もある。タマネギが付き物で、切り方や食べ方に地域差がある。ハーグやスヘフェニンゲン周辺では、尾を指でつまんで持ち上げて丸ごと一匹を食べるスタイルが好まれる。アムステルダムなどでは一口大に切って爪楊枝で刺して食べ、ピクルスを付け合せる[1]。
ドイツよりオランダの方が薄塩のマイルドな味付けである。また、ドイツの基準では寄生虫対策として、酢漬けにする前に氷点下45℃以下にする必要性がある。
ギャラリー
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アムステルダムの Koningsplein のニシン屋台
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キュウリのピクルスが添えられたハーリング(オランダ)
脚注
編集注釈
編集- ^ 生物学的・歴史学的にニシン属と比定され、欧米においては主にタイセイヨウニシンを指す。
- ^ 成魚一歩手前の未成魚が「若魚(わかうお)」。
- ^ 原意は[Hollandse (オランダの)+ Nieuwe (新しもの)]であり、転じて「オランダの、初物ニシン(を使った料理)」とでも言うべき意味合いになる。そしてこのオランダ料理に限った、あるいはこのオランダ料理を起源とする同種の料理に限った日本語訳名「新鰊/新ニシン」が散見されるのも、オランダ語の原意あってのこと。
- ^ 稀ではあるが、この意味での「ヘリング」「ヘーリング」も表記揺れとして見られる。
- ^ もっとも、現地語などでは、この料理に使うニシンを指して「若くて小さいハーリング」といい、そのままでこの料理をも意味することがある(フラマン語: maatjesharing, 英語: matjesherring など)。成魚のハーリングで新ニシンは作れず、若魚のハーリングを使った料理と言えば新ニシンだからである。
- ^ フランス語では、オランダ語のまま、もしくはフラマン語の maatjes (マーチェス)に同じ。
出典
編集- ^ a b 【食紀行】オランダ、夏告げる「ハーリング」/塩漬けニシン、豪快に『日本経済新聞』夕刊2018年7月19日(くらしナビ面)2018年8月4日閲覧
- ^ “オランダで「ニシンの酢漬け」初競り、45匹に史上最高値940万円”. AFPBB News (フランス通信社). (2012年6月9日) 2012年6月10日閲覧。