シバ属(シバぞく、学名:Zoysia)は、単子葉植物イネ科の植物の一群である。匍匐茎を伸ばし、節毎に直立する茎を出して葉をつける。花序は棒状で小穂には1個の小花のみを含む。芝生に使われる種が含まれる。

シバ属
Zoysia macrantha
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 単子葉類 monocots
: イネ目 Poales
: イネ科 Poaceae
亜科 : ヒゲシバ亜科 Poaceae
: シバ連 Poaceae
亜連 : シバ亜連 Zosiinae
: シバ属 Zoysia
  • 本文参照
Zoysia matrella・図版

特徴

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小柄な多年生の草本[1]。質は硬い。茎は伸びて蔓状になり、地面を這って分枝を出す。節毎に花茎を出し、花茎は直立する。はは線形で先端は尖る[2]。葉身は長く伸びない。花序は狭い総状花序で[3]、円柱状で小さく、短い枝がある。

小穂には柄がある。小穂は1個の小花のみを含み、また左右から扁平になっている。第1包頴は退化して無くなっているか、あるいはあっても小型で膜質となっており、早くに脱落する。第2包頴は卵形から長楕円形で、内側に折り曲がっており、革質で光沢があり、これが小穂の外側を覆う形となる。護頴は小型で膜質、はっきりしない3本の脈がある。内頴は発達しないが、膜質で短いものを持つものもある[4]

学名はオーストリアの植物学者である Karl von Zois (1756-1800?) に因む[5]。和名のシバの名は標準和名をシバとする種に基づき、細葉(ほせは)や繁葉(しげは)からである、とされる[6]。なお、地表を這い、地面を覆うイネ科としては他にギョウギシバやハイシバなど多くの種があり、しばしばシバの名を与えられている。これについては下に纏める。

種と分布

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アフリカから東アジア、オーストラリアにかけて10種前後がある[7]。日本には5種ほどが知られる[8]。以下、日本産のものには標準和名と通称名、及び全種の分布域[9]を示す。

分類

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現在のイネ科の分類ではイネ科を12の亜科に分けるが、これはタケ亜科やイネ亜科を含むBOPクレードとPACMAD クレードの2つに大きく分けられ、本種は後者に属するヒゲシバ亜科のシバ連に含まれる[10]。シバ連は更にシバ亜連 Zosiinae とネズミノオ亜連 Sporobolinae に分けられ、本属はもちろん前者に含まれる。後者にはネズミノオ属 Sporobolus が含まれ、日本ではネズミノオ S. fertilis が本州以南で普通に見られる。

シバ亜連には本属ともう1つ、ウロコンドラ Urochondra が含まれる。これは唯一の種 U. setulosa のみを含む。この植物はアフリカから南アジア海岸に生育するもので、高さ40cm程度以下の灰色をした植物である[11]。この2属が近縁であることは分子系統の情報からも支持されている[12]

利害

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シバ属のものの利用というと芝生がまず思い浮かぶ。実際にシバ属を被覆植物として利用することは東洋では古くから行われていたことで、例えば韓国では新羅王国の時代から墳墓をシバで覆うようにさせ、その冬の様子を『黄金』と見ていたことが知られる[13]。他方で西洋における芝生は本属と関わりなく発展してきたもので、本属が利用されるようになったのは1800年代からと言われるが、現在では南北アメリカ、ヨーロッパオーストラリアで広く用いられている[14]。 芝生として用いられるのは主としてシバとコウライシバ、コウシュンシバの3種で、更にこれらの雑種が作られ、それらも用いられてきた[15]。これらは総じて Zoysiagrass と呼ばれる。シバ属の芝生用の種は他の芝生用植物より水分、窒素肥料の要求が少なく、手入れが少なくてもよく、雑草や他の芝生用植物に対する競争力も高い。

ちなみに日本で芝生に使われているものでコウライシバの名で流通しているのはコウシュンシバである[16]

シバの名を持つ植物

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上記のようにシバの名はシバ属以外にも多くのイネ科に与えられている。以下、主なものを記しておく。この中には芝生に用いられるものも幾つかあるが、そうでないものも数多い。

他にカヤツリグサ科スゲ属コウボウシバがある。これは同属のコウボウムギに対してこの種がより小さいことから麦より小さいから芝、と言うことらしい。同じくスゲ属のシバスゲは芝地に生えることによる。マメ科シバハギもほぼ同様である。

なお、イネ科以外にもシダ植物トウゲシバというのがあるがこのシバは芝ではなく柴に基づく[17]カバノキ科サワシバクスノキ科のシバニッケイなどもそちらであると思われる。

出典

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  1. ^ 以下、主として大橋他編(2016) p.73.
  2. ^ 初島(1975) p.676.
  3. ^ 初島(1975) p.676.
  4. ^ 初島(1975) p.676.
  5. ^ 初島(1975) p.676.
  6. ^ 大久保(1997) p.290
  7. ^ 以下もLoch et al.(2017)
  8. ^ 大橋他編(2016) p.73.
  9. ^ Loch et al.(2017) p.12-14.
  10. ^ 以下も主としてCheon et al.(2021)
  11. ^ Dinarvand & Howizeh(2017)
  12. ^ Cheon et al.(2021)
  13. ^ Loch et al.(2017) p.17-18.
  14. ^ Loch et al.(2017) p.18.
  15. ^ 以下もLoch et al.(2017) p.17
  16. ^ 牧野原著(2017) p.447.
  17. ^ 牧野原著(2017) p.1336.

参考文献

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  • 大橋広好他編、『改訂新版 日本の野生植物 2 イネ科~イラクサ科』、(2016)、平凡社
  • 牧野富太郎原著、『新分類 牧野日本植物図鑑』、(2017)、北隆館
  • 初島住彦、『琉球植物誌』追加・訂正版、(1975)、 沖縄生物教育研究会
  • 長田武正『日本のイネ科植物図譜(増補版)』(1993)(平凡社)
  • 佐竹義輔大井次三郎北村四郎他『日本の野生植物 草本I 単子葉植物』(1982)平凡社
  • 大久保忠旦、「シバ」:『朝日百科 植物の世界 10』、(1997)、朝日新聞社、:p.290.
  • Donald S. Loch et al. 2017. Ecological Implication of Zoysia Species, Distribution, and Adaptation for Management and Use of Zoysiagrasses. ITSRJVol.13 : p.11-25.
  • Se-Hwan Cheon et al. 2021. The Chloroplast Phylogenomics and Syztenatics of Zoysia (Poaceae). Plants 2021, 10, 1517. https://doi.org/plants10081517
  • M. Dinarvand & H. Howizeh, 2017. A new record of Urochondra (Poaceae) from of Iran. Iranian Journal of Botany 23(2) :88-90.