オヒルギ
オヒルギ(雄蛭木、雄漂木、学名:Bruguiera gymnorhiza)はヒルギ科オヒルギ属のマングローブ樹種のひとつ。別名アカバナヒルギ(赤花蛭木、赤花漂木)[1]。
オヒルギ | ||||||||||||||||||||||||
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オヒルギ
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分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Bruguiera gymnorhiza (L.) Savigny (1793)[1] | ||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
オヒルギ(雄蛭木、雄漂木) | ||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||
Black mangrove |
特徴
編集形態
編集常緑広葉樹の高木[3]。樹高は最高で25メートル (m) ほどになり、日本国内では樹高10 mまで成長する。幹は直立し、樹皮には皮目ができる。
葉は対生で、長さ10センチメートル (cm) 程度の長楕円形で厚みがあり、先端は尖り、基部はくさび型。葉は濃緑色であるが、葉柄は紫色を帯びた紅色である[4]。根は支柱根は短く少ないが、呼吸根は屈曲膝根と呼ばれ、湾曲し人の膝のように見える根がぼこぼこと泥中から多数出ている光景がみられる[3]。大型個体になると根本が板根状となる。
花期は晩春から夏(日本では5 - 6月[3])。葉腋に単生し、直径3 cm程度の花をつける。この花のうち、よく目立つ部分は萼(萼筒)であり、形状は筒状、赤色で、厚く、真っ直ぐに突き出し、先端はやや内向きに抱える。また、先端が8 - 12枚程度に裂け、櫛の歯状になる。このように萼片が赤く色づき目立つことが別名アカバナヒルギの由来となっている。花弁は萼筒の中にあるためあまり目立たなく、淡黄緑色で、先端は萼筒と同様に8 - 12枚程度に裂ける[注 1]。雄蕊は20個程度で、子房下位。花には甘みの強い蜜がある[5] ことから、小型の鳥類が多く近寄る。
マングローブの特徴の一つでもある胎生種子を作り、種子が樹上で発芽し、幼根をある程度伸ばすと地上に落下する(胎生芽という)[3][4]。果実は赤い萼の内側で成熟し[4]、外見的には確認しがたい。やがて顎筒の内側から根が長く伸び、20 cm以上の棒状となり、緑色から淡黄色である。メヒルギのそれより太く、先端に向けて次第に細くなる様子は、まっすぐなバナナといったところ。胎生種子の生産のピークは9月であり[6]、やがて顎の内側から先端の芽ごと抜け落ち、下が潮の干満がある軟らかい泥ならば、そこに刺さてそのまま生長を続けるが、多くは海流散布により分布を広げる[3][4]。
染色体数はn=18。
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オヒルギの呼吸根(膝根)
(西表島・浦内) -
オヒルギの呼吸根。大型樹木は板根状となる
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オヒルギの花
(西表島・浦内)
生態及び生育環境
編集熱帯および一部の亜熱帯の河口干潟など、汽水域の泥中に生育し、マングローブを形成する[3]。日本のマングローブの帯状分布ではメヒルギやヤエヤマヒルギの内側に群落を作り、もっとも背が高くなる。その内陸側はほぼ陸に接続する。
分類
編集学名について
編集文献などに用いられている学名にはB. gymno r hiza(小種名にrが1つ)とB. gymno rr hiza(小種名にrが2つ)の2つあり、ゆらぎがあるため論争となっている[要出典]。歴史的経緯より前者に正当性があり、IPNI(The International Plant Name Index)[7] でもB. gymno r hiza(rが1つ)の方で登録されている[8]。一方、日本の植物の和名学名のリストを提供する「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)においては、Bruguiera gymnorhiza(小種名にrが1つ)が登録されており[1]、日本国内で発行されている図鑑類ではrrが2つのものを使用しているケースが多い[注 2]。[要検証 ]
種内分類
編集分布
編集東アフリカから中国南部、東南アジア、オーストラリア、ポリネシアなど、太平洋からインド洋の熱帯地域に広く分布する[3]。日本では奄美大島以南の南西諸島(奄美大島、徳之島、久米島、南大東島、宮古諸島、八重山諸島)に分布する[3]。奄美大島が分布の北限である。
日本における生育地
編集奄美大島笠利町を北限とし、南西諸島の河口干潟に広くマングローブ林を構成する。琉球諸島ではヒルギ科三種(オヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギ)のうちでもっとも内陸側に生育し、背が高くなる種である [11]。
奄美大島では分布地点は少ないが、奄美市住用地区において大きな集団を形成している。
徳之島では過去に記録はあるが、現在では分布を確認できない[12]。
沖縄本島では、島北部の東村・金武町等の河口干潟に広く分布している。また島南部の漫湖にも植栽されたものが定着し、繁殖している[13]。
南大東島では、汽水域の河口干潟ではなく、淡水の閉鎖水域(大池)に生育しており、その貴重さから国の天然記念物に指定されている。
八重山諸島にも多く分布し、石垣島の宮良川や西表島の仲間川などの河川河口部では大規模なマングローブ林となっている。
日本国外における生育地
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利用
編集保護上の位置づけ
編集- 種として
- 鹿児島県版レッドデータブックに絶滅危惧II類で掲載されている。
- 地域として
- 日本国指定の天然記念物
- 日本の重要湿地500
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Bruguiera gymnorhiza (L.) Savigny オヒルギ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年6月24日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Bruguiera conjugata Merr. オヒルギ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年6月24日閲覧。
- ^ a b c d e f g h 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 218.
- ^ a b c d 辻井達一 1995, p. 257.
- ^ 亜熱帯総合研究所 平成13年度内閣府委託調査研究 マングローブに関する調査研究報告書・マングローブ植物の花蜜分泌機構
- ^ 亜熱帯総合研究所 平成13年度内閣府委託調査研究 マングローブの植栽技術に関する研究・ヒルギ科樹種の種子生産
- ^ The International Plant Name Index
- ^ マングローブの古い標本が語るもの 日本熱帯生態学会ニュースレター
- ^ 初島住彦・天野鉄夫 『増補訂正 琉球植物目録』 沖縄生物学会、148頁、1994年、ISBN 4-900804-02-9。
- ^ 島袋敬一編著 『琉球列島維管束植物集覧【改訂版】』 九州大学出版会、1997年、366-367頁、ISBN 4-87378-522-7。
- ^ 日本生態学会誌 1975(vol25) 89-100 マングローブに関する研究 II メヒルギ,オヒルギ林の林分構造。
- ^ 鹿児島県環境生活部環境保護課編 『鹿児島県の絶滅のおそれのある野生動植物 -鹿児島県レッドデータブック植物編-』 財団法人鹿児島県環境技術協会、2003年、251頁、ISBN 4-9901588-1-4。
- ^ 亜熱帯総合研究所 平成13年度内閣府委託調査研究 漫湖マングローブ林の林分調査
参考文献
編集- 鹿児島県環境生活部環境保護課編 『鹿児島県の絶滅のおそれのある野生動植物 -鹿児島県レッドデータブック植物編-』財団法人鹿児島県環境技術協会、2003年、251頁、ISBN 4-9901588-1-4。
- 島袋敬一編著『琉球列島維管束植物集覧【改訂版】』九州大学出版会、1997年、366-367頁、ISBN 4-87378-522-7。
- 辻井達一『日本の樹木』中央公論社〈中公新書〉、1995年4月25日、255 - 257頁。ISBN 4-12-101238-0。
- 初島住彦・天野鉄夫『増補訂正 琉球植物目録』沖縄生物学会、148頁、1994年、ISBN 4-900804-02-9。
- 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、218頁。ISBN 4-522-21557-6。
- 大野照好監修・片野田逸郎著『琉球弧・野山の花 from AMAMI』株式会社南方新社、1999年、45頁、ISBN 4-931376-21-5。
- 多和田真淳監修・池原直樹著 『沖縄植物野外活用図鑑 第4巻 海辺の植物とシダ植物』新星図書出版、1979年、86頁。
- 多和田真淳・高良拓夫共著 『沖縄の山野の花』風土記社、1975年。
- 土屋誠・宮城康一編『南の島の自然観察』東海大学出版会、1991年、165-171頁、ISBN 4-486-01159-7。
- 宮城康一「慶佐次湾のヒルギ林、大池のオヒルギ群落、宮良川のヒルギ林」『日本の天然記念物』加藤陸奥雄・沼田眞・渡部景隆・畑正憲監修、講談社、1995年3月20日、526-531頁、ISBN 4-06-180589-4。
外部リンク
編集- oNLINE植物アルバム - オヒルギの写真
- 西表島植物図鑑 - オヒルギの花(花弁と萼片の関係)がわかりやすい写真を掲載。