インディアカ

ドイツで考案されたニュースポーツ

インディアカ (ドイツ語: Indiaca)はドイツで考案されたニュースポーツで、インディアカボールないしインディアカと呼ばれる羽根のついたシャトルコック状のボールを、ネットをはさんで相対した2チームが互いに手で打ち合う団体競技。ドイツを中心にヨーロッパ諸国および日本で競技されている。

インディアカボール
プレーの様子

歴史

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1936年ブラジルリオデジャネイロに滞在していたドイツ人体育教師、カールハンス・クローン(Karlhans Krohn)がコパカバーナビーチを散歩中にペテカ英語版と呼ばれるスポーツを知り、これを持ち帰ったのが始まりである。ペテカは南アメリカインディオの間で行われていたとされ、「インディアン」と「ペテカ」の二つの語を組み合わせて「インディアカ」と命名された。クローンはこれをレクリエーションのための運動として考案していたが、ドイツYMCAやドイツスポーツ連盟を中心に普及が進み、競技スポーツへと発展した[1]。1998年からドイツ体操連盟(DTB)がインディアカのドイツ国内選手権を開催している[2]。2000年にはベルリンで国際インディアカ協会が設立され、ドイツをはじめ、イタリアルクセンブルクスイススロバキアエストニア、日本の7か国が加盟している。

日本には1968年頃にオーストリアから輸入され、当時はピンポンパンと呼ばれた[3]。1970年代に日本レクリエーション協会がドイツのトリム用具としてインディアカを紹介、ドイツ製のインディアカボールを採用し、指導を開始した。1977年10月1日に日本インディアカ振興会が設立、1980年に日本インディアカ協会に改組(1995年に法人化、2010年に現在の一般社団法人に改組)され、以降、同協会を中心に生涯スポーツとして普及活動が行われている[4]全国スポーツ・レクリエーション祭の種目ともなっている。

インディアカから派生したスポーツとしては、ラケットでインディアカボールを打ち合うインディアカテニスがある[5]

ルール

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バドミントンのダブルスのコートを使って、ネットを挟んで4人対4人で対戦する。ネットの高さは、185cm、200cm、215cmがあり、年齢やチーム編成によって設定する。また、新ルールと旧ルールによってフォーメーションや後衛者アタック、サーブ可能エリア、レシーブ方法に若干の違いがある。

基本的にはバレーボールと同じルールで、インディアカと呼ばれる赤い羽根の付いたボールを、手のひらではじいて競技する。バレーボールと同様に、「サーブ」から始まり、「レシーブ」「トス」「アタック」と3回で相手コートへ返球する。

バレーボールと違うのは、片手で羽根を打たなければならないことや、肘より先の手以外の体の部位に羽根が触れると反則を取られること、1〜3打のいずれかにおいて羽根がネットに触れたら、4打までが有効打として認められることである。たとえば、アタックをネットに引っ掛けた場合においても、4打目に相手コートに羽根を返せば反則とならない。

最近では日本インディアカ協会が定めた新ルールが広まりつつある。旧ルールと新ルールの大きな違いは、旧ルールが前衛2人後衛2人であるのに対して、新ルールは前衛2人後衛1人であり後衛者がアタックラインを踏んでアタックをすると反則を取られること、旧ルールはセンターラインの踏み越えは反則とならないが新ルールでは反則(パッシングセンターライン)を取られること、などである。いずれのルールもローテーションは行われる。21点もしくは18点のラリーポイント、2セット先取で争われることが多い。大会によってはサイドアウト制や時間制で行われることもある。

ネット高は、旧ルールの場合は男子・男女混合200cm、女子・シニア185cm、新ルールの場合男子・男女混合215cm、女子・シニア200cmであることが多い。

主な大会

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2001年から世界選手権が、2002年からワールドカップが開催されている。日本国内では全国インディアカ大会やオールジャパンレディースインディアカ大会がある。

日本は2004年に世界選手権を、2015年にワールドカップをそれぞれつくば市さいたま市で開催した。

詳細な結果や最新の結果は国際インディアカ協会ホームページを参照

世界選手権優勝国
開催年 開催地 男子 女子 混合 シニア男子 シニア女子 シニア混合
2001年 タルトゥ
  エストニア
  ドイツ   ドイツ   ドイツ   エストニア   ドイツ   エストニア
2004年 つくば
  日本
  ドイツ   エストニア   エストニア   ドイツ   ドイツ   エストニア
2008年 エッテルブリュック
  ドイツ
  ルクセンブルク   ドイツ   ドイツ   ドイツ   ドイツ   ドイツ 
2013年 ビーティッヒハイム=ビッシンゲン
  ドイツ
  ドイツ   スイス   ドイツ   ドイツ   エストニア   エストニア 
2017年 ロゾギ
  ポーランド
  ドイツ   エストニア   ドイツ   ドイツ   エストニア   ドイツ
2022年 ルクセンブルク市
  ルクセンブルク
  エストニア   スイス   ドイツ   ドイツ   エストニア   ルクセンブルク 

メダルテーブル

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国・地域
1   ドイツ 21 11 3 35
2   エストニア 11 13 8 32
3   ルクセンブルク 2 6 9 17
4   スイス 2 2 9 13
5   日本 0 4 7 11
合計 36 36 36 108
ワールドカップ優勝国
開催年 開催地 男子 女子 混合 シニア男子 シニア女子 シニア混合
2002年 カールスルーエ
  ドイツ
  ドイツ   ドイツ   エストニア   エストニア   ドイツ   エストニア
2006年 ヴィリャンティ
  エストニア
  ドイツ   ドイツ   ドイツ   ドイツ   ドイツ   ドイツ
2010年 タルトゥ
  エストニア
  ドイツ   エストニア   エストニア   ドイツ   ドイツ   ドイツ
2015年 さいたま
  日本
  ドイツ   スイス   スイス   ドイツ   エストニア   ドイツ
2019年 タルトゥ
  エストニア
  ドイツ   ドイツ   ドイツ   ドイツ   スイス   ルクセンブルク
2023年 ルーズ=アン=エノー
  ベルギー
  ドイツ   スイス   ドイツ   ドイツ   日本   日本

メダルテーブル

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国・地域
1   ドイツ 23 8 7 38
2   エストニア 6 18 12 36
3   スイス 4 5 10 19
4   日本 2 4 5 11
5   ルクセンブルク 1 1 2 4
合計 36 36 36 108

レクリエーションインディアカ

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愛知県にはレクリエーションインディアカと呼ばれる地域スポーツがある。レクインディアカとも呼ばれ、日本インディアカ協会が公式球とする赤い羽根のインディアカボールではなく、黄色い羽根のものを用いる。名古屋市では春と秋の年に2回、レクリエーションインディアカ大会が開催されるほか[6]、市民スポーツ祭の種目にも含まれている[7]。ネットは225cmで、必ず3回で相手コートに羽根を返さなければならない(赤い羽根のインディアカはワン返しや2回でもOK)。また、相手コートに羽根を返すときはフワッと返さなければならず、攻撃とみなされるような返し方をすると反則を取られる。

愛知県下では名古屋市以外でもレクリエーションインディアカが行われているが、知多半島北部の東海市大府市知多市東浦町では、名古屋市とは異なり、インディアカ協会の旧ルールと同様にネット高さは男子・混合では200cm、女子185cmで赤い羽根のインディアカボールを用いる。ルールもインディアカに準じたもので、主なレク独自ルールは、必ず3人・3回(羽根のネット接触は1回のみ可とされ、その場合は4回まで許容)で相手コートに羽根を返さなければならないこと、ジャンプして打ち下ろすアタックが認められないこと(但し、床に身体の一部が接触した状態であればアタック可。また、水平より上向きに打ち出す場合はジャンプ可)の2点である。 3市1町のスポーツ部門が合同で主催する大会が毎年6月に開催されるほか、(多くは競技者団体の代表者で構成するレクインディアカ運営委員会の自主運営によるものであるが)各市町にて年あたり1~4回程度のレクリエーションインディアカ大会が実施されている。 試合は1セットあたり15点のラリーポイント制が主に採用される。プライベート大会では1試合10~12分程度の時間制を採用する例もある。

脚注

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  1. ^ DTB Technischen Komitees Indiaca. “Über Indiaca: Geschichte” (ドイツ語). 2009年6月25日閲覧。
  2. ^ ドイツ体操連盟は体操以外にもコーフボールファウストボールなど、いくつかの球技を管轄しており、インディアカもその一つとなっている。 cf.今村悟「ドイツ伝統球技-Turnspiel-について : 第1報 Turnspielの歴史」『日本体育学会大会号』第50号、社団法人日本体育学会、1999年9月15日、641頁、NAID 110001905499 
  3. ^ 野々宮徹『ニュースポーツ用語事典』遊戯社、2000年、p. 152. ISBN 4896596250
  4. ^ 日本インディアカ協会. “協会の沿革”. 2009年6月25日閲覧。
  5. ^ 野々宮徹、前掲、p. 19.
  6. ^ 名古屋市. “スポーツ大会のご案内”. 2009年6月25日閲覧。
  7. ^ 名古屋市体育協会. “市民スポーツ祭”. 2009年6月25日閲覧。

参考文献

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外部リンク

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