アントラニル酸
アントラニル酸(アントラニルさん、anthranilic acid)は芳香族アミノ酸の一種である。哺乳類に対して催乳作用を示すため、ビタミンL1とも呼ばれる[1]。生体内でのトリプトファン合成に関与するシキミ酸経路では、コリスミ酸とグルタミンからアントラニル酸シンターゼによって合成される。また様々なアルカロイドの前駆体となる。一方、トリプトファンの代謝経路であるキヌレニン経路においてキヌレニンより生合成される。メタノールとのエステルであるアントラニル酸メチルはブドウやジャスミンに含まれる香気成分である。
アントラニル酸 | |
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アントラニル酸(許容慣用名) | |
別称 カルボキシアニリン 1-アミノ-2-カルボキシベンゼン | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | 118-92-3 |
KEGG | C00108 |
特性 | |
化学式 | C7H7NO2 |
モル質量 | 137.13 |
外観 | 無色~黄色の薄片あるいは白色~黄色の結晶性粉末 |
密度 | 1.41, 固体 |
相対蒸気密度 | 4.73 |
融点 |
146–148 |
出典 | |
ICSC | |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
日本においては、1991年(平成3年)に改正された麻薬及び向精神薬取締法で、向精神薬原料に加えられた[2]。
化学分析
編集アントラニル酸はカドミウムや水銀など多くの金属イオンと反応してキレート錯体を形成する。このアントラニル酸錯体は弱酸性条件において沈殿を生成するため、金属イオンの定量分析に利用することができる[1]。
法規制
編集アントラニル酸は、キナゾリノン系のGABA受容体作動薬で、乱用が問題となっているメタカロンの原料となる。
国際的には、麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約(寄託先: 国際連合事務総長)に基づき、N-アセチルアントラニル酸及びその塩類等の10物質を追加している。この追加措置の通知日である1992年5月27日から180日以内に、条約締約国内で規制の効力が生じるよう、国内法化を求めている[3]。
日本においては、同条約への加盟に先立って麻薬及び向精神薬取締法を改正している[4][5]。同法の改正は1991年10月2日に成立し、同月5日に公布、同月30日より施行された[6][3]。これにより同法に別表第四が新設され、「アントラニル酸及びその塩類」の名称で取締対象に追加されることとなった[5]。アントラニル酸の含有率が50%を超える物質を輸出入する場合は、地方厚生局長への届出が必須である[7]。
出典
編集- ^ a b 本山、吉川、小川 著、化学大辞典編集委員会(編) 編『化学大辞典』 1巻(縮刷版第26版)、共立、1981年10月、508頁頁。
- ^ “麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局 (2015年6月26日). 2019年12月17日閲覧。 “平成二十七年法律第五十号改正、2016年6月1日施行分閲覧”
- ^ a b “麻薬及び向精神薬取締法施行令及び麻薬及び向精神薬を指定する政令並びに麻薬及び向精神薬取締法施行規則の一部改正について(施行通知) (薬発第九〇七号)”. 厚生労働省 (1992年9月30日). 2020年2月9日閲覧。
- ^ “麻薬及び向精神薬取締法(昭和28年3月17日法律第14号)”. 日本法令索引. 国立国会図書館. 2020年2月9日閲覧。 “「改正:平成3年10月5日号外 法律第93号〔麻薬及び向精神薬取締法等の一部を改正する法律一条による改正〕 」”
- ^ a b “第121回国会 制定法律の一覧 > 法律第九十三号(平三・一〇・五)”. 衆議院. 2020年2月9日閲覧。 “「別表第三の次に次の一表を加える。別表第四 (第二条関係)...二 アントラニル酸及びその塩類」”
- ^ “麻薬及び向精神薬取締法等の一部を改正する法律(平成3年10月5日法律第93号)”. 日本法令索引. 国立国会図書館. 2020年2月9日閲覧。 “「成立年月日:平成3年10月2日、公布年月日:平成3年10月5日」「被改正法令: 麻薬及び向精神薬取締法(昭和28年3月17日法律第14号)」”
- ^ “麻薬向精神薬原料輸入(輸出)手続きについて”. 近畿厚生局 (2019年9月18日). 2020年2月9日閲覧。