ふたご座
よく考えるためのすき間を
世俗とは真逆の方へ
今週のふたご座は、つまらないものを断ち切るためのエンガチョ遊びのごとし。あるいは、神聖かつ汚穢な「無縁の世界」の織り出しを改めて試みていこうとするような星回り。
歴史学者の網野善彦は、『無縁・公界・楽』の中で人間社会の動きを「有縁」つまり「縁が結ばれるめでたさ」の面からのみを見ることは不適切であり、「無縁」つまり「いったん結ばれた縁を拒否する強さと明るさ」とともに捉え、かならずその相互作用において見ていかなければならないのだと述べました。
つまり、縁結びの操作の集積が有縁の世界を構成する一方、縁切りの集積が無縁の世界を生みだしていくわけです。ここで大事なのは、各個人が縁結びと縁切りとを自由に行使することができるならば、両者は分離しないということでした(網野はこれを純粋な神聖領域としての「原無縁」と呼んだ)。
すなわち、縁のなかにはどうしても切れないものがあり、その縁を切ると一緒に多くの縁が切れてしまうような事態が生じる。そうすると、「原無縁」から無縁と有縁とが分離し、両者の独自の世界を構成するようになるわけです。
有縁の世界が「世俗」を志向するのに対して、無縁の世界は「神聖」ないし「汚穢」であり、宗教は本来この無縁の世界の現われを代表するものでした。そうした「非世俗性」こそが人間社会の作動を支えている、というより、それとなしに人類社会は作動し得ない、と網野は考えていたのです。
近年のリモートワーク推進や副業解禁、離婚率の増加などを鑑みると、現代においては次第に伝統的な組織宗教や家族制度などに則ることなく、むしろ解体するような形で個々人がそれぞれの仕方で無縁の世界の生み出しを試みるようになってきているのだと言えます。
12月9日にふたご座から数えて「世俗に対する処方箋」を意味する10番目のうお座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、自分なりの仕方ですこしでも風通しのよい世界を展開していくことがテーマとなっていきそうです。
意志依存に距離をおく
私たちは何かしら自分たちの身に不幸に見舞われたり、つらい出来事が起きると、どこかで区切りをつけて「前向きに進んでいく」ことをよしとする傾向がありますが、ハイデガーという人は、そこで無意識的に行われる「過去を自分から切り離そうとする」ことこそ、実はみんなが有難がっている「意志」の本質に他ならないのだと喝破しました。
そして、それを受けて國分功一郎は、むしろ逆に「意志という概念こそ「薬物的」なのではないか」と指摘しています。
意志にも薬物のような効果がある。「未来志向」というのは非常にライトなかたちで世の中に浸透しているとも言えますよね。子どもたちに対しても、「未来の夢に向かって羽ばたこう」とかそういうことばかりが言われている。何か思い出したくない過去をみんなで必死に無視しようとしているようにも見えます。過去を忘れ、目を輝かせて、微笑みながら未来の夢に向かってジャンプしていく。それはハイデガー的に言えば、「考えるな、考えるな」と言っているに等しい。(『<責任>の生成―中動態と当事者研究』)
今週のふたご座もまた、過剰な意志依存とエンガチョするべく、意志がもたらすある種のパターナリズムを解除して、かすかな違和感やまとまらなさに踏みとどまっていくべし。
ふたご座の今週のキーワード
意志こそ薬物的