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「フレッツ光が遅いアパート」を改善するには? 集合住宅の光回線高速化についてNTT東日本に聞いた
2022年2月8日 11:00
テレワークの普及によって、家庭の高速回線のニーズは高まっている。しかし、集合住宅に住んでいて回線の高速化がままならず、困っている人も少なくないだろう。
集合住宅でより速い光回線を手に入れるには、オーナーの承諾を得た上で、回線またはインターネット接続サービスの事業者からも工事が可能との判断を取り付ける必要がある。オーナーが乗り気でなかったり、相談できる事業者の窓口が分からなかったりして、話が進まないこともあり得る。
本稿では、NTT東日本のサービスエリア内で「フレッツ光」が最大通信速度100Mbpsで利用できる状態の集合住宅を想定し、最大通信速度1Gbpsで利用できる回線を手に入れるにはどのような方法があり、どう手続きをすればいいのか、NTT東日本に取材した内容をもとに解説していく。
最大通信速度1Gbpsの環境を手に入れるには配線方式の見直しが必要
まず、基本的な情報を整理しよう。「フレッツ光」はNTT東西が提供する光回線サービスで、ベストエフォート型で提供される。ユーザーが「OCN 光」を提供するNTTコミュニケーションズや、「ドコモ光」を提供するNTTドコモなどの光コラボ事業者(光コラボレーションモデル事業者)が提供するインターネット接続サービスと契約している場合、直接NTT東西とは契約しないが、フレッツ光の回線を利用することになる。
フレッツ光には戸建て向け(ファミリータイプ)と集合住宅向け(マンションタイプ)のサービスがある。そして、集合住宅向けには最大1Gbps、200Mbps、100Mbpsの3つの品目(プラン)で回線サービスが提供されており、最も速い1Gbpsのプランを集合住宅で利用するには、各戸までの配線方式がポイントとなる。
配線方式は3種類あり、光ファイバーケーブルによって配線する方式は「光配線方式」と呼ばれ、最大1Gbpsで利用できる。ほかの2種類の配線方式、電話用の銅線による「VDSL方式」またはLANケーブルによる「LAN配線方式」の場合は、最大100Mbpsとなる。
LAN配線方式はあまり使われていないため、フレッツ光で最大100Mbpsの集合住宅はたいていVDSL方式と考えられる。これを光配線方式に切り替えれば、最大1Gbpsの回線が手に入るわけだ。そのためには、どうすればいいのだろうか?
配線方式 | ケーブルの種類 | 最大通信速度 |
光配線方式 | 光ファイバーケーブル | 1Gbps |
VDSL方式 | 銅線(電話用) | 100Mbps |
LAN配線方式 | LANケーブル | 100Mbps |
集合住宅で最大1Gbpsの回線を手に入れる方法は2通り
集合住宅で最大1Gbpsの回線を手に入れる方法は、2通りある。集合住宅内を光配線方式にする方法のほか、戸建て向けと同じ方式(戸建て方式)で光ファイバーケーブルを通す方法があるという。順に詳しく見ていこう。
集合住宅に光配線方式を導入する
集合住宅の配線を光配線方式にするには、電柱から建物の共用スペースまで引き込んだ光ファイバーケーブルの先に「スプリッタ」と呼ばれる光回線の分配装置を設置して、各戸まで光ファイバーケーブルを通す。
集合住宅に光配線方式を導入するには、2つの条件がある。1つは、各戸に光ファイバーケーブルを通せる配管があるなど、必要な設備が整っていること。もう1つは、新規にスプリッタを設置する際(新築物件への導入時など)に行われるNTT東日本による収益性の評価をパスすることだ。収益性が低いとみなされた場合には、設置が見送られることもあるという。
VDSL方式の集合住宅では、「VDSL集合装置」と呼ばれる装置がスプリッタと同様に配線を分配する役割を持ち、設置にあたっては収益性の評価が行われる。つまり、VDSL方式での配線が行われている集合住宅は、すでにVDSL集合装置を設置済みで、収益性の問題はクリアされているということになる。
ただし、建物の設備によっては、VDSL方式は可能でも光配線方式は不可能な場合があるという。一例としては「配管が細くて、電話用の銅線は配線できても新規に光ファイバーケーブルを通すことができない」といったことがあるそうだ。
集合住宅内の一戸に戸建て方式で光ファイバーケーブルを配線する
戸建て方式による配線は、集合住宅内の一戸に対して戸建てと同様に、スプリッタを介さずに光ファイバーケーブルを配線する。必要な条件は1つで、近くの電柱などから自室まで光ファイバーケーブルを通せる配管などの物理的な環境が整っていること。工事を行うので、もちろんオーナーの承諾も必要だ。
集合住宅でも戸建て方式での配線が可能な(場合がある)点は、意外と知られていないだろう。私たちは「集合住宅だから集合住宅向けしか利用できない」と思い込みがちだが、そうではないようだ。
なお、こちらの方式の場合は、フレッツ光やインターネット接続サービスの契約も集合住宅向けでなく戸建て向けの内容となり、料金も基本的には集合住宅向けよりやや高くなる。配線の方法は、近くの電柱からベランダなどを通して行う場合のほか、集合住宅の共用スペースを経由する場合もあるようだ。
集合住宅を光配線方式にするためにオーナーができること
光配線方式を導入したい場合、集合住宅のオーナーから、NTT東日本の電話番号「116」へ相談する。この際、オーナーが光回線を利用しているか否か、どこのインターネット接続サービスと契約しているか、などは関係がない。連絡して建物を光配線方式にしたい旨を伝えれば対応してもらえるそうだ。
すでにVDSL方式での光回線が導入され、VDSL集合装置が設置されていれば、収益性の問題はクリア済みだ。NTT東日本で保有している集合住宅の設備のデータ、または現地での設備調査にて光配線工事が可能かどうかが判定され、問題がなければ工事が行われる。
光ファイバーケーブルの集合住宅の引き込み、スプリッタの設置まではNTT東日本の費用負担にて行われ、スプリッタから各戸までの配線に関しては回線の利用者がサービス初期費用として工事費用を負担するため、オーナーの費用負担はない(もちろんオーナー自身も回線を利用する場合には、その分は必要)。そのほかに、もしも配管など設備の工事を行うことになった場合は、集合住宅オーナー側の負担となる。
なお、NTT東日本では、通信サービスの品質向上を目的として、集合住宅のVDSL方式から光配線方式への移行をすすめている。VDSL方式の集合住宅を光配線にしたい場合は、以下の「NTT東日本リニューアルセンタ」に問い合わせると、専門の担当者による対応が可能になるという。
フレッツ光の契約者向けには、VDSL方式/LAN配線方式から光配線方式へ変更する工事が無料になるキャンペーンも行われている。2月7日付記事『NTT東、フレッツ光新規工事費の割引や光配線へのタイプ変更工事費無料のキャンペーン。ADSL等からの移行を推進』も参照のこと。
光配線方式の工事ができない場合でも、オーナーが居住する部屋にだけ戸建て方式で光ファイバーケーブルによる配線を行うことはできる可能性がある。その場合は、以下に記す入居者向けの方法を参照されたい。
集合住宅の入居者が最大1Gbpsの回線を手に入れるためにできること
最大1Gbpsの回線を手に入れるため、集合住宅の入居者ができることは、2通りある。1つは、前述したようにオーナーに依頼してNTT東日本の「116」に連絡してもらい、光配線方式を導入する方法だ。相談などをしたい場合は、入居者から「NTT東日本リニューアルセンタ」に問い合わせることもできる。
もう1つは、戸建て方式で光ファイバーケーブルによる配線を行う方法だ。このとき注意が必要なのが相談する先で、フレッツ光に契約している場合は「116」でNTT東日本に、光コラボ事業者と契約している場合は、光コラボ事業者の窓口に相談する。設備の調査などの結果、問題がなければ工事が行われる。
光ファイバーケーブル敷設に関する工事費は利用者の負担となり、初期費用として支払うこととなる。
「高速回線が使える」は集合住宅の価値を高める!
冒頭にも述べたように、テレワークの普及もあって、家庭の高速回線のニーズは高まっている。もしもこれから引っ越し先を探すなら、最大100Mbpsでは仕事環境としては少々不安で、最大1Gbpsを利用可能な物件を選びたいところだ。
NTT東日本でも、高速回線を求める声や、高速回線で仕事が快適にできるようになったという声が多くなっていることを把握しているという。高速な通信回線が利用できることは、集合住宅オーナーの視点からすれば、物件の価値を高めることにつながる。引っ越しシーズンに向けて入居者を募集している集合住宅オーナーの方には、光配線方式の導入を相談してみることをおすすめしたい。