急遽テレワーク導入!の顛末記

「会社にAmazon Echoを持って行ったら、Wake on LANのハードルが一気に下がった!」――急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記(165)

「アレクサ、会社のPCをつけて」で自宅から会社のPCを起動!

「アレクサ」と呼び掛けては周りの迷惑になるが、いろいろ便利に使うことができる

 会社の据え置きマシンをデスクトップPCからノートPCに交換したことで、自宅から遠隔操作で電源を入れるのにひと手間かかるようになってしまった。テレワークでは頻繁に利用したい機能なだけに、もっと操作手順をシンプルにしたい。

……この記事を書いている時点で、新型コロナが5類に移行されて193日が過ぎた。

 私が勤めている新宿にある中小企業では現在、各スタッフが可能な範囲でリモートによる業務を行っている。その中で今回は会社のオフィスでAmazon Alexaデバイスを運用してみた。

【今回のハイライト】
音声やスマホからPCの遠隔起動が可能に
「呼びかけ」機能で音声/ビデオチャットも可能
アカウント問題はエミュレーターで解決

11月13日(月):アレクサデバイスを会社のデスクに置いてみた

 今日は自宅でテレワークだが、作業中に必要なデータがあったので、会社のPCを遠隔操作することになった。現在、リモートデスクトップを利用するには……

  • 会社のデスクトップPCを遠隔起動する
  • デスクトップPCを遠隔操作して、ノートPCのスリープを解除する
  • ノートPCを遠隔操作する

 という手順を踏んでいる。この時に1度デスクトップPCを経由しないといけないのは手間だし、お役御免になったはずの旧PCにいつまでも頼ってはいられない。

デスクトップPCには“電源復旧時にWindowsを起動させる”機能があったので、スマートプラグで電源遮断/再供給を遠隔操作して起動させていたが、ノートPCではこの手が使えない…
デスクトップPCを起動した上で、同PCからWake on LANのマジックパケットを送信。同じネットワーク内のノートPCを起動させていた

 そこで今回利用したいのが、「アレクサ、PCつけて」でお世話になっているAlexaデバイスのEcho。これならルーター越えしてマジックパケットを送信できるので、会社に置いておけば、遠隔操作でノートPCのスリープを解除できそうだ。

 ということで、まずは試験運用として自宅で使っているEcho Dotを、会社のネットワークに接続してみた。なお、Alexaデバイスの中には、Wake on LANに対応していないものもあるので、利用する際には注意しておきたい。

Echo Dotをオフィスの机に置いて使うことにした

11月14日(火):「アレクサ、PCつけて」で自宅からのスリープ解除を確認

 Echo Dotを会社のネットワークに接続したので、以前と同じように「Wake-on-LAN」というスキルに、ノートPCのMACアドレスを登録。さらに、「アレクサ、会社PCをつけて」と呼び掛けることで、スリープを解除できるのを確認できた。自宅のPCでWake on LANを行う際には、ルーターの設定などを変更する必要があったが、Alexaデバイスを使うとその手間を一気に省けるので助かる。いや、そもそも会社のルーターの設定を勝手に操作することはできないのだが……。

 さらに、声を出さずにスリープを解除できるようにと、スマホの「Amazon Alexa」アプリにも定型アクションを設定。これで、Wake on LANについての初期設定は終了だ。

スキルの管理ポータルにアクセスして、ノートPCのMACアドレスを登録
「Amazon Alexa」アプリで「Wake-on-LAN」スキルの設定画面を呼び出し、1度スキルを無効にして、再び有効にすると……
Amazonアカウントに再ログインした後で、先ほどMACアドレスを登録したノートPCが、新たなデバイスとして検出された

 あとは、会社に持って行ったEcho Dotを、「Amazon Alexa」アプリ内の別グループに移動させれば作業完了……と思ったのだが、この操作にちょっと手間取った。というのも、会社に持って行ったEcho Dotは、自宅の「2階」というグループに登録しておいたのだが、新たに作った「会社」というグループに登録するには、元いたグループから登録を解除する必要があるらしい。その操作がちょっと分かりにくかったので、気になる人は覚えておいた方が良いかもしれない。

デバイスの所属グループを変更するには、1度そのグループを開き、グループ名の横にある「編集」をタップして……
グループから外したいデバイスのチェックボックスを外す。これで、新たに作成したグループに、会社に持って行ったEcho Dotを登録できるようになった

11月15日(水):会社の同僚とのコミュニケーションツールにも使えそう?

 今日は自宅でテレワーク。会社のPCに保存したデータが必要になったので、さっそくアレクサ経由でPCを起動、そのまま「Chromeリモートデスクトップ」で、自宅から遠隔操作を行った。このスキルを実行するだけなら、Echo Dotが光ったり、何か話したりすることはないので、周りの席にいる同僚の邪魔になる心配はない。

 そこで、ふと思いついて「アレクサ、会社を呼び出し」と話しかけたところ、席が近くの同僚に自宅から話しかけることができた。今日のところは珍しがって対応してくれたが、このまま継続して使っていれば、会社の同僚と気軽にコミュニケーションを取れるツールになるかもしれない。カメラ付きの「Echo Show」シリーズなら、社内に誰かいるかを事前に確認できるので、「おーい、誰もいないの?」と何度も呼び掛けて、寂しい思いをしなくても済むだろう。さらに、Echo Dotを会議室にも置いておけば、遠隔ミーティングにも使えそうだ。

会議室で行われているミーティングにEcho Dot経由で参加するのもアリかも

 ただ、翌日会社に出社したところ、Echo Dotに通知が入ったことで黄色いリングが点灯しっぱなしになっていた。恐らく、私用のアカウントで購入した製品について、評価を求める通知だと思うのだが……。会社で「アレクサ、通知」と呼び出して、評価するわけにもいかない。どうやら今日1日は、通知ランプを付けっぱなしにしておくしかないようだ。

11月16日(木):エミュレーターで複数アカウントの使い分けも可能

 Alexaデバイスを会社に置くことで、テレワーク中に結構便利に使えそうなことが分かった。とはいえ、このEcho Dotは元々家で使っていたものなので、いずれは自宅に持ち帰りたいところ。仕事に使うと話せば、会社の経費で買ってくれそうな気もするが、そこで気になるのが利用するAmazonアカウントだ。

 Alexaデバイスに話しかけて、マジックパケットを送信したり、「呼びかけ」機能で音声通話するには、関連するデバイスが全て同じAmazonアカウントに紐づけされている必要がある。さらに、スマホの「Amazon Alexa」アプリでは、1つのアカウントでしかログイン状態を維持できない。このため、会社で購入したAlexaデバイスを、会社で運用しているアカウントに紐づけると、私用のアカウントに紐づけているスマホや自宅のデバイスからは操作できなくなってしまう。

 会社にある他のPCにもEcho Dotからマジックパケットを送信しようとした場合、そのPCの持ち主がアレクサデバイスを持っていると、同じような問題が発生するだろう。実は自宅のPCにはMicrosoft Storeアプリ「Alexa」がインストールされていて、これに会社のアカウントを紐づけておけば、音声での操作が可能なのだが……。しばらく前にこのアプリは配信を終了してしまった。

 そこで、「LDPlayer9」という、PC用のAndroidエミュレーターを使用。エミュレーター内で「Amazon Alexa」アプリを起動してみたところ、会社にあるAlexaデバイスを声で操作できるようになった。これなら、エミュレーター内のアプリを会社のAmazonアカウントに紐づけることで、自宅からマジックパケットの送信などができそうだ。

公式のMicrosoft Storeアプリなら、音声入力での操作が可能。このアプリに会社のAmazonアカウントを紐づけても良いのだが……
「LDPlayer9」を起動して、「Amazon Alexa」アプリをインストール
アプリがPCのマイクやカメラを認識してくれるので、「呼びかけ」機能で音声通話したり…
音声コマンドや定型アクションからマジックパケットの送信もできる

 Alexaデバイスを会社に1台置いておけば、Wake on LANでPCを遠隔起動したり、「呼びかけ」機能で音声通話できることが分かった。他にも、アマゾンミュージックでBGMをかけたりと、いろいろな使い方ができそうなので、会社に1台置いておいても良いかもしれない。

とある中小企業に勤める会社員、飛田氏による体当たりレポート「急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記」。バックナンバーもぜひお楽しみください。

飛田九十九