おいちゃんと呼ばれています

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Vue Fes Japan 2019 開催中止をふりかえる

台風19号の接近に伴い、昨日、Vue Fes Japan 2019 の開催中止を発表した。人生のなかでこれほど台風の情報を見たことはないだろう。まだまだやることはたくさん残っているけれど、中止の決断について記憶が新しいうちにメモしておきたい。いつかまた重要な局面に立ったときに役に立つかもしれないので。

※ただし、ここに書き留めるのはあくまで個人の見解であり、Vue.js 日本ユーザーグループとしての公式の見解ではない。

経緯

10/8(火)

台風19号の報を受けて、興行中止保険の保険会社に、保険が下りる下りないのケースを確認し、開催対応について発表したのが 10/8(火)のこと。

ざっくりいうと「開催当日」に (1) 台風が半径 100km 圏内にある or (2) 交通機関が機能しない という条件を満たさないと保険が下りないため、保険が下りるか否かは開催当日まで分からない。したがって、開催の判断は当日にならないとできないという案内をした。

たしか台風19号は 10/7(月)くらいまでは西日本に上陸する知らせだったし、また進路を変えて逸れてくれるのでは?とか、まだ淡い期待を抱いていた。

10/9(水)

気象庁が上陸予想の 3日前に異例といわれる会見を開いた。「史上最強」とか言われだす。Twitter とかで流れてくる、過去の台風被害の動画を観て、ヤバい台風はヤバいということを感じて震え出す(語彙)

運営スタッフの中にも、これはもうダメなのでは... というムードが漂う。が、保険が下りるか否かは開催当日まで分からないという関係でまだ中止の決断はできずにいた。

10/10(木)

JR 東日本が翌11日に計画運休の詳しい運転計画を発表すると報じられる。つまりこの時点では、運行の全面停止か一部運行なのかということについても分かっていない状況。

コアスタッフとイベント運営会社との MTG を渋谷の貸し会議室で行い、開催中止の決定をした。

ここに主に書くのはそのときの MTG の話。

10/11(金)

Vue Fes Japan 2019 開催中止の発表を行った。

10/10(木)MTG にて

この時点でこのパターンではこうなる、みたいな情報を整理していた。そして、その場合は、こうしようなどと話していた。

やっかいなのは、12日当日に交通機関が一部運行していたり、台風が 100km 圏内にはないような、つまり、興行中止保険が下りないケース(100km というのは意外と狭いんだなと感じていた)

「保険が下りないケースだと、開催するの?」

「開催するしかないでしょう?」

「いや、でも、これ、前日の準備が中途半端にしかできてなくて、やれるの?」

「開催時間を少し遅らせてでもやるしかないでしょう...」

そのような議論をしていた記憶。

「人命を最優先する」ことの意味

ここまでで確認できたのは、どのパターンでも何らかのリスクを取っていかなければならないということ。

しかし話の流れが変わったのは「何が一番大切なんだっけ?」「人命を最優先しましょう」という話になったとき。

わたしは恥を承知で告白すると、今回の件より以前は「人命を最優先する」ということの意味があまりよく分かってなくて。もちろん人命が大切なのは当然だけれども、それがリアリティをもって感じられていなくて。

それをあらためて自分の言葉で理解するために、もうひとつの世界線のことを想像していた。

その世界線では台風のなかではあるが、Vue Fes Japan 2019 は開催されていて、大盛況のうちにクローズした。ただ、翌日、台風の被害について報じられていて、死者〇名、けが人〇名。

「亡くなられた〇〇さんは、Vue Fes というイベントの帰り途中でした」

その文言を目にする。

血の気がサーッと引く。

そして、言葉にならない感情。

きっとそのことは自分や関係者の心に一生ずっと残るだろう。来年の Vue Fes はおろか小さなミートアップすら開催する気になれないだろう。

そういう世界線で生きていきたくない。

はじめてリアリティをもって感じられた瞬間だったと思う。

何をもとに決断を下すかということ

そういう流れになると「我々の決断を、保険会社の判断(= 保険が下りるか否か)や JR 東日本の判断(= 運転計画の詳細)に委ねるのは止めましょう」と誰かが言った。

「それらはもちろん判断材料にはなるけれども、あくまで我々は、我々が最も重要だと考えるファクターに基づいて、決断をすべきだ」

至極まっとうなロジックだと思った。

そのとき自分の頭に浮かんでいたのは、尊敬する結城浩さんのツイートで。

最も避けたいリスクがハッキリした以上、そのリスクを真正面から検討すべきだ。"科学技術の力で「未来に何が起こりそうか」が、かなりの精度でわかるようになった利点" を活かすと、開催中止以外にありえない。

だとしたら、JR 東日本の計画運休の発表を待たずにここで決定をして、できるだけ早く関係者に中止の旨の連絡をしよう。

仮に興行中止保険が下りないケースになったとしても、それはあくまでも金銭面での問題なので、その問題は知恵を絞れば、我々には解決できる。

そういう結論に達した。

おわりに

もうすぐこの東京を台風19号が通過するだろう。

シビアな話をすると、カンファレンスを通してコミュニティを盛り上げるという点では、参加者やスピーカーやスポンサー企業に何のバリューも提供できなかった。

ただその一方で「コミュニティを大きく後退させるリスクを回避した」という点において、我々は正しい決断をしたと思う。

Vue Fes Japan 2019 開催中止の発表を行った後、とても多くのスポンサー企業や個人の方から励ましの言葉や支援の申し出をいただいた。こういう苦しいときこそ、有り難さが身に染みた。

保険契約の関係で代替イベントの開催はできないが、諸々の精算が終わったら、何か別のかたちで関係各位に恩返しできる方法を模索していきたいと思う。