インプラント手術で痛みが出やすいタイミング
まずは、インプラント手術を受ける際に、痛みが出やすい4つのタイミングを見ていきましょう。
原因も合わせて紹介するので、参考にしてみてください。
タイミング①手術中、麻酔を打つ際
インプラント手術は麻酔を使って行われるので、手術中に痛みを感じることは基本的にはありません。
痛みを感じるとしたら、麻酔を打つタイミングでしょう。
インプラント手術の麻酔にはどのようなものがあるのでしょうか?
タイミング②手術後、麻酔が切れた際
インプラント手術後に麻酔が切れると、痛みを感じることがあります。
また、手術した箇所が時間とともに腫れてきて、痛みを感じることもあるでしょう。
特に腫れやすい箇所は、手術で切開や縫合を行った歯茎です。
また、インプラント体をドリルで埋め込む際に、骨に負荷がかかって炎症が出るというケースもなくはありません。
また、手術方法によっては痛みを感じる部分が増えることもあり得ます。
たとえば、あごの骨にインプラントを埋め込むための十分な厚みがないという場合には、その部分へ骨を移植する手術を行う必要があります。
その場合、骨を採取した部分のほうが、インプラントを埋め込む部分よりも痛む可能性が高いです。
さらに、インプラントを埋め込む歯茎が少ないときにも、歯茎を移植する手術が伴います。
この場合も、歯茎を取った部分のほうが、インプラントを埋め込む部分よりも痛むことが多いです。
ただし、術後は所定の痛み止めや抗生物質が処方されるため、それらを飲めば基本的には日常生活に支障をきたすほどの強い痛みを感じることはありません。
タイミング③抜糸の際
インプラント手術では、最初に歯茎の切開した部分を縫合し、傷が安定したら後日抜糸する必要があります。
この、抜糸の際にも痛みを感じることはあるでしょう。
そもそも、インプラント手術で歯茎の縫合と抜糸が行われるのはなぜなのでしょうか。
それは、インプラント体を感染症から守るためです。
インプラント体を埋め込む際には、歯茎を切開しあごの骨が直接見える状態にします。
このとき、歯茎の切開した部分から細菌が入り込むと感染症にかかってしまう可能性があります。
そのリスクを回避するために、歯茎を縫合しインプラント体を保護するのです。
抜糸は基本的に術後7~10日後に行われます。
その際、違和感を覚える程度の痛みを感じられる方もいれば、ちくちくとした痛みを感じて辛く思われる方もいらっしゃいます。
タイミング④治療完了後、トラブルが起きた場合
すべての治療を終えたあとにも痛みを感じたり腫れが生じたりすることはあり得ます。
主な原因は、治療後にインプラント周辺部分が炎症を起こした、もしくはインプラントの部品が緩んだということなどです。
このようなトラブルは、歯科医院で定期的なメンテナンスを行うことである程度回避できます。
そのため、インプラント治療が終わったあとも、定期的に通院してインプラントの状態を確認してもらうことが大切です。
インプラント手術の麻酔について
インプラント治療では、人工の歯根であるインプラント体を顎の骨に埋め込む手術を行います。
歯茎の切開や骨の切削をともなうので、必ず麻酔を使用しなければなりません。
そこでここからは、インプラント手術を受ける際に使用する麻酔法を紹介します。
局所麻酔法
「局所麻酔法」は、局所麻酔薬という神経の伝達を一時的にブロックする薬剤を用いて、患部を局所的に除痛する方法です。
インプラント手術や虫歯などの歯科治療では、一般的に局所麻酔法を使用します。
しかし、局所麻酔法では、患者様の意識は明瞭なままなので、周りの音や会話はすべて聞こえている状態です。
インプラント体を埋入する音や、手術の独特な雰囲気などによって、恐怖心や不安を感じてしまう患者様もなかにはいらっしゃいます。
静脈内鎮静法の併用
患者様によっては、局所麻酔法と「静脈内鎮静法」を併用することもあります。
静脈内鎮静法は、手術前に鎮静薬を静脈に点滴することで、精神的な安静状態をもたらすことができる方法です。
全身麻酔のように完全に眠ってしまうのではなく、ぼんやりとした状態で、ウトウトと眠っているような感覚になります。
局所麻酔法のみを使用して手術を受けるときと比べて、緊張や恐怖心を軽減しながら、インプラント治療の手術を受けられます。
手術に不安がある方や、できるだけリラックスして手術を受けたい方は、手術時に静脈内鎮静法を併用できる歯科医院を選んでみてください。
インプラント手術後に痛みが続く期間
インプラント手術を行ったあとに痛みが続く期間には個人差がありますが、通常であれば術後2~5日程度、遅くても1~2週間で治まるでしょう。
ただし、実際の期間は手術の規模や範囲によっても異なってきます。
術後1~2週間が経過しても痛みが治まらない場合には、医師に相談しましょう。
何かしら重大な問題が潜んでいる可能性があります。
インプラント手術後の痛みや腫れを抑えるためのポイント
ここからは、インプラント手術後の痛みや腫れを抑えるために心がけたい、4つのポイントを紹介します。
手術後の痛みや腫れを少しでも抑えたい方は、以下のポイントを意識してみてください。
ポイント①薬を正しく服用する
手術後の痛みや腫れを抑えるには、処方された薬を正しく服用することです。
インプラント手術後には、痛み止めと抗生物質が処方されるので、歯科医師に指示された用法を守って飲んでください。
痛みや腫れがあまりないからといって、自己判断で服用をやめてしまうと、薬の効果が切れて、痛みや腫れが急に出てくるおそれがあります。
ポイント②患部への刺激は避ける
患部への刺激を避けると、インプラント手術後の痛みや腫れを抑えられます。
細菌の感染を引き起こす可能性があるので、患部をむやみに触らないでください。
インプラント手術直後に食事をとると、患部にはまだ局所麻酔が効いているので、頬の内側などを噛んでしまうかもしれません。
傷をつけてしまわないように、局所麻酔が完全に切れるまでの1~2時間程度は食事を控えましょう。
また、手術後2~3日は固い食べ物や刺激が強い食べ物は避けて、おかゆやうどんなどを食べると患部への負担を減らせます。
ポイント③血行が活発になる行動は控える
インプラント手術後は、血行がよくなる行動もできるだけ控えましょう。
血行がよくなると、炎症が起きる可能性や患部が腫れるリスクがあるからです。
具体的には、激しい運動や、長時間の入浴ならびにサウナなどが挙げられます。
手術から2~3日はプールやジョギングなどの運動は避け、シャワーもぬるめにして短時間で済ませます。
また、お酒やたばこも血行をよくし、痛みを引き起こす可能性があるので、飲酒や喫煙も避けてください。
ポイント④口内環境を整える
インプラント手術後の痛みや腫れを抑えるには、口内環境を整えるのも重要です。
口内に汚れが溜まっていると、歯茎が細菌に感染するリスクがあります。
感染によって歯茎の痛みや腫れといった症状が現れるだけではなく、歯周病に似たインプラント周囲炎を発症するかもしれません。
インプラント周囲炎を予防するためにも、毎日の歯磨きで汚れを落とし、口内を清潔に保ちましょう。
インプラント手術後に痛みが出た際の対処法
ここからは、術後に痛みが出た際の対処法を3つ紹介します。
対処法①痛み止めを飲む
術後に痛みが生じたときには、痛み止めを飲むことが基本です。
術後には痛み止めや抗生物質などの処方薬がもらえますが、これらを所定の期間中はしっかりと飲みつづけることが重要です。
個人差はありますが、処方薬を適切に服用していれば、痛みは2~5日程度、遅くても1~2週間で治まるでしょう。
対処法②医師の指示を守る
術後には医師よりいくつかの指示がありますが、これらを守らないと痛みが生じる可能性があります。
そのため、痛みが生じたとき、その原因に心当たりがある場合は、まず指示を守る心掛けをすることが大事です。
具体的には、以下のようなことがあります。
医師からの術後の注意事項
- タバコを吸わない
- 運動・入浴・飲酒を控える
- 口腔内のケアを怠らない
- 手術した部分に負担をかけない
まず、喫煙者は術後一定期間中の喫煙を控えることを守らなくてはなりません。
タバコを吸うと毛細血管が収縮するため、歯茎の治癒が遅くなりますが、それに伴い細菌に感染するリスクも考えられ、感染すると痛みが生じるためです。
術後一定期間はタバコを吸うことを我慢しましょう。
また、タバコを吸う方も吸わない方も、運動・入浴・飲酒も我慢する必要があります。
これらの行為は血行をよくする作用があり、歯茎の出血や腫れにつながります。
目安としては、術後数日間はこれらの行為を控えたほうがよいでしょう。
なお、入浴に関してはあくまでも温かい湯船に浸かることを避けたいという意図になります。
そのため、熱すぎないお湯でシャワーを浴びることは問題ありません。
そして、歯磨きなど口腔内のケアを怠らないことも重要となります。
口腔内に汚れがたまるとインプラント周辺で炎症を起こす可能性があるためです。
ただし、手術した部分には負担をかけないように、なるべく丁寧に歯磨きすることが大事です。
最後の注意点としては、手術した部分には負担をかけないことが挙げられます。
うがいを強めに行ったり、刺激の強い辛い食べ物を食べたりすることを控えましょう。
対処法③医師に相談する
処方薬を飲んでも効果が出ない場合や、飲んだら下痢や湿疹を発症する場合などには医師に相談しましょう。
処方薬が身体に合っていない可能性が考えられます。
また、手術から1~2週間経っても痛みが引かない場合にも相談したほうがよいです。
インプラントやその周辺の組織に問題が生じている可能性があります。
インプラント手術後に感染症のリスクはある?
歯科医院では、感染症対策を徹底するとともに、医療機器も消毒・滅菌を施して、院内感染を防ぐ努力を行っています。
しかし、天然歯と比べると、インプラントは細菌への抵抗力が弱く、感染症のリスクは完全には避けられません。
手術後は、インプラント周囲炎の発症に特に注意が必要です。
以下の症状が現れたら、すぐに治療を受けた歯科医院に相談してください。
インプラント周囲炎が疑われる症状
- インプラント周囲の歯茎の腫れ
- 歯茎からの膿や出血
- インプラントのぐらつき
- インプラントの脱落
感染対策のために、ブラッシングだけではなく、デンタルフロスを使用することをおすすめします。
デンタルフロスを使うと、歯ブラシでは取り除けない汚れまでケアできます。
また、半年に1回程度を目安に、歯科医院でのメンテナンスも受診しましょう。
インプラント手術による痛みは最小限に抑えられる
いかがでしたでしょうか。
インプラント手術で痛みを感じやすいタイミングとしては、手術中、手術後、抜糸の際、そして治療後が挙げられます。
しかし、手術は麻酔を使って行いますし、術後には所定の痛み止めや抗生物質などを服用するので、痛みは最小限に抑えられます。
一方で、術後には喫煙や運動・入浴・飲酒を控えるなどいくつかの言いつけを守る必要があることには注意しましょう。
きぬた歯科は東京都の八王子にある、インプラント治療の実績が豊富な歯科医院です。
治療に興味があるものの、痛みが出ないかどうかご不安に感じられている方は、まずはきぬた歯科までご相談ください。
この記事の監修者
日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。
日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。
本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。
<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!
<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科
<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia