イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)雑誌には「今年のベスト10」が載る季節になったが、ここでは範囲を広げて2000~09年の10年間のベスト10を選んでみた。私の週刊ダイヤモンドの書評も、まる10年になった。来春には「経済書のブックガイド」を出す予定。原書を除いてリストアップすると、
  1. クリステンセン『イノベーションのジレンマ』
  2. コルナイ『コルナイ・ヤーノシュ自伝』
  3. ネグリ&ハート『帝国』
  4. グライフ『比較歴史制度分析』
  5. タレブ『ブラック・スワン』
  6. アカロフ&シラー『アニマルスピリット』
  7. デリダ『マルクスの亡霊たち』
  8. 中山信弘『著作権法』
  9. レッシグ『コモンズ』
  10. アンダーソン『ロングテール』
1は今や古典になったが、これを日本で世に出したのは私の書評だった、と訳者に感謝された。2は社会主義という壮大な悲劇を経済学者が分析した感動的な本。3も9・11以後の状況を語る上で定番になった。5も版元の副編集長に感謝された。ポストモダンの巨匠もほとんど世を去ったが、7や『生政治の誕生』などは今でも重要な問題を提起している。8は唯一の日本人の著書だが、著者の情熱をもってしても既得権の壁は厚いようだ。9と10は、インターネットを理解する上での必読書。

上のリストの本の多くは、原著が出たとき取り上げたものだ。当ブログは編集者によく読まれているようなので、次の本はぜひ訳してほしい:
  1. Tirole, The Theory of Corporate Finance
  2. Gali, Monetary Policy, Inflation, and the Business Cycle
  3. Mankiw, Macroeconomics [7th edition]
  4. Boldrin-Levine, Against Intellectual Monopoly
  5. Bhide, The Venturesome Economy
  6. Sen, The Idea of Justice
1は企業統治理論の決定版。「株主資本主義」を批判する人は、これぐらい読んでほしい。2はDSGEの教科書としてはコンパクトでわかりやすく、3はそれを学部レベルで解説したもの。これと6は今年出たばかりだから、そのうち訳が出るだろう。