環境保護は、現代の宗教である。科学的に証明されていない教義を多くの人々が信じ、それを道徳的なこととして他人に押しつける。特にたちが悪いのは、これが「国定宗教」とされ、政府が経済活動を統制する根拠に使われることだ。それを布教するのは、政府に保護されているマスメディアである。彼らは科学的根拠のないリスクを針小棒大に騒ぎ、それが嘘であると判明しても訂正しない。そのために膨大な税金が浪費され、多くの人が必要のないコストを負担する結果になる。

武田邦彦『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』は、こうした「環境教」の倒錯した教義の具体例をあげ、その誤りを科学的に明らかにしている。たとえば
  • ペットボトルのリサイクルは、資源の浪費である。リサイクルするには、そのペットボトルの量の3.5倍の石油を必要とするので、リサイクルすると石油の消費量は増える。事実、1993年から10年間で、リサイクルが増えたため、資源の消費量とゴミの量は7倍になった。
  • ダイオキシンは猛毒とされているが、その毒性はラットやマウスの実験によるものであり、人間に対する毒性はきわめて弱い(中西準子氏によればタバコの1/3000)。ゴミ焼却炉からは大量のダイオキシンが出たが、焼却炉で中毒症状が起きた事例は一つもない。全国で1兆円以上の税金を投じて行なわれた焼却炉の改造は浪費である。
  • 「環境ホルモン」と称するものは、まったく人体に害はない。
  • 地球温暖化で北極と南極の氷が溶け、海面が上昇するというのは誤りである。北極の氷は海面に浮いているので、溶けても海面は上昇しない。南極は-50℃で「過冷却」になっているので、気温が上昇すると水蒸気が凍結し、氷が増えて海面は低下する。海面が上昇するのは、陸地よりも海水の膨張率のほうが高いためであり、その影響は限定的だ。
  • DDTが禁止された結果、アフリカでは蚊が繁殖し、その媒介するマラリアによって年間200万人が死亡している。
ただし、最後の章には疑問がある。本当の環境問題は「石油の枯渇」だというが、その根拠はなんと1972年のメドウズの「成長の限界」論だ。これは現在では、環境保護派にさえ否定されている(Lomborg)。また環境教よりたちの悪い「食糧安全保障論」が出てくるのも悪い冗談だ。せっかく「ニセ科学」を撃退した著者が、結論で「水からの伝言」を唱えるようなものである。

追記:IPCC第4次報告書の全文は5月に発表される予定で、そのドラフトがいま研究者に閲読されているが、その概要がChristopher Monckton卿によって明らかにされた。それによれば、
  • 今世紀中の気温上昇のbest estimateは、第3次報告書の3.5度から3度に下がった。
  • 第3次報告書で人為原因説の有力な根拠とされた「ホッケースティック現象」のグラフが削除された。
  • 海面上昇は、19~43cmに下方修正された。
全体として、第3次報告書の予測よりも下方修正されている。そもそも要約版が公表されてから本文が閲読されるという順序が、科学的手続きに反するものだ。この報告書は、科学的データではなく政治文書である。