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大災害を想定、体を守る備え…必須薬確保や家具点検
今年は北海道地震や西日本豪雨といった大規模な自然災害が相次いだ。災害時に持病を悪化させたり、けがをしたりしないようにするため、日頃の備えについて改めて確認しておきたい。
食べ物備蓄も
「普段から薬が欠かせない人は、いざという時に薬がなくならないよう、定期的に医療機関を受診することが備えにつながる」。日本災害医療薬剤師学会副会長で岡山大助教の渡辺暁洋さんは、こう指摘する。
使っている薬は1か所にまとめて保管し、すぐに持ち出せるようにしておく。「おくすり手帳」も忘れないようにする。薬の名前や1日の服用量などの情報が記されているためだ。
薬の写真をスマートフォンなどに保存しておくのも良い。渡辺さんは「離れて暮らす家族らに画像を送っておくと、万一、自分の手元に記録がなくても確認できる」と話す。
食物アレルギーなど、口にできない食べ物がある人は、日頃から1週間分程度を余分に買い、備蓄しておくことを勧める。食べられるものが、避難所などで手に入るとは限らない。
人工透析や在宅酸素、人工呼吸器による治療を受けている人は、災害が起きた時の対応を主治医と話し合っておく必要がある。
地震などでけがをしないための対策も欠かせない。NPO法人・日本ファーストエイドソサェティ代表の岡野谷純さんは、「就寝中が最も危険」と指摘する。
寝室には、テレビやタンスなどをできるだけ置かない。置く場合はしっかり固定する。窓や戸棚のガラスに専用のフィルムを貼り、割れたガラスの破片が飛び散らないようにする。
自宅近くの避難所がどこにあるかを事前に確認し、経路も実際に歩いて調べておく。頭上に落下する危険性がある看板などがないかもチェックし、避難所に向かう途中でけがをしないように注意を払う。
外出中に地震が発生した場合、倒壊の恐れのある塀のそばは歩かないようにする。手近にあるかばんなどで頭を守ることも大事だ。
地域別に緊急医療
災害時は、いつも受診している医療機関にかかれるとは限らない。より緊急性の高い患者の治療が優先されるためだ。
東京都内では、災害拠点病院の前などに「緊急医療救護所」が開設される。けがなどをした人は、まずそこで医師や看護師らに重症度を判定してもらう。軽症ならば応急処置を行い、症状が重い場合は災害拠点病院などに搬送する。
東京都大田区は、災害拠点病院を中心に区内を5グループに分け、各病院に患者の情報を共有するタブレット端末を配布している。今年度は緊急医療救護所で患者のけがの程度などを判定し、必要に応じて医療機関に搬送する訓練を実施した。いざという時に機能するかを確認するためだ。
都の地域災害医療コーディネーターを務める都立広尾病院副院長の田尻康人さんは、「災害発生から数日間は、多くの病院で一般診療が行えなくなる可能性がある。緊急時に、自分が住んでいる地域でどのような医療態勢が取られるのか、事前に確認しておいてほしい」と話している。
(災害医療取材班)
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