ワン、ツー、スリーだけでない――英語の様々な数の表現

概要
英語で数を表す表現には、ワン、ツー、スリー……といった数詞を用いるもののほかに、ラテン語や古典ギリシャ語に由来する接頭辞を使うものがある。こうした接頭辞などを使って普通の数詞以外で数を示す事例を紹介する。

はじめに

数を数える表現には様々なものがある。
数を数える表現には様々なものがある [1]

英語で数を数えるときは、普通ワン、ツー、スリー……(one, two, three…) という数詞を用いる。しかし、こうした数詞では表現しない場合がある。例えば、「三重奏」のことを英語で何というかご存知だろうか。スリー (three) は使わないで、トリオ (trio) になる。それでは、「六角形」は英語で何というかご存知だろうか。シックス(six) は使わないで、ヘキサゴン (hexagon)になる。このように、英語では、ワン、ツー、スリー……という数詞を用いないで数を表現することが少なくない。

この記事では、ワン、ツー、スリー……という数詞以外で、数を示す英語の表現について紹介する。まず、数を示す仕組みとして、英語固有の表現、ラテン語由来の表現、古典ギリシャ語由来の表現の3種類があることを紹介する。その後、様々な分野における英語での数の表現について具体例を見ていく。

英語の数の表現の体系

英語の数に関する言葉は、大きく3つに分けられる。英語固有の表現、ラテン語由来の表現、古典ギリシャ語由来の表現だ。日常用語では英語固有の表現を使うことが多いが、専門用語を作るにあたってはラテン語や古典ギリシャ語に由来する表現を使うことが多い。

英語固有の表現

英語固有の表現には、基数きすう序数じょすうがある。基数は何個あるかを示すときに使う数で、序数は何番目かを示すときに使う数のことである。

英語の基数と序数
数値基数序数
1onefirst
2twosecond
3threethird
4fourfourth
5fivefifth
6sixsixth
7sevenseventh
8eighteighth
9nineninth
10tententh
11eleveneleventh
12twelvetwelfth
13thirteenthirteenth
14fourteenfourteenth
15fifteenfifteenth
16sixteensixteenth
17seventeenseventeenth
18eighteeneighteenth
19nineteennineteenth
20twentytwentieth
30thirtythirtieth
40fortyfortieth
50fiftyfiftieth
60sixtysixtieth
70seventyseventieth
80eightyeightieth
90ninetyninetieth
100one hundredhundredth

「5人の生徒」ならば何人いるかを表すので five students と基数を使って表現する。「5番目の生徒」ならば何番目かを表すので、(the) fifth student と序数を使って表現する。

頻度

「1回」、「2回」、「3回」という頻度は、once, twice, three times…と表現する。「1回」と「2回」だけ特殊なので注意しよう。3回以上については three times のように基数に times を合わせて使う。

倍数

「2倍」を表現するには、twice を使う。3倍以上を表現する場合には、基数に times を合わせて使う。例えば、「3倍」は three times で、「10倍」は ten times になる。

また、基数に -fold という接尾辞をつけて倍数を表現することもある。例えば、「2倍」は twofold で、「3倍」は threefold で、「10倍」は tenfold になる。「人口が3倍に増えた」は The population increased threefold. と表現される。

ラテン語・古典ギリシャ語由来の表現

ラテン語・古典ギリシャ語に由来する数の表現は、単独で用いられることはなく、接頭辞として他の要素と結びついて単語を作るために用いられる。

ラテン語・古典ギリシャ語由来の数に関する接頭辞
数値ラテン語古典ギリシャ語事例
1uni-mono-unicorn(一角獣)
2duo-, bi-di-bicycle(2つの車輪=自転車)
3tri-tri-triangle(三角形)
4quad-, quadr-, quadri-, quadru-tetra-quadruped(四足動物)
5quint-, quinqu-, quinque-penta-quintic(五次式)
6sex-, sexi-hexa-sextant(六分儀)
7sept-, septi-hepta-septuplet(七つ子)
8oct-, octo-octo-octave(8つの音=オクターブ)
9non-, noni-, nona-, novem-ennea-nonane(炭素を9つ含むアルカン=ノナン)
10dec-, deca-deca-decade(10年)
11undec-hendec-, hendeca-hendecagon(十一角形)
12duodec-dodec-, dodeca-duodecimal(十二進法)
20vigint-, viginti-icos-, icosa-, icosi-icosahedron(二十面体)
100cent-, centi-hect, hecto-century(100年=世紀)

接頭辞をつけて単語を作る例を挙げよう。「週に1回」を意味する weekly に接頭辞をつけて新しい単語を作ることができる。「2」を意味する bi- をつければ、biweekly となる。これは「2週に1回」もしくは「週に2回」を意味する。同様に「3」を意味する tri- をつければ、triweekly となって「3週に1回」もしくは「週に3回」を表すことができる。

また、1, 2, 3, 4 を示す接頭辞 mono-, bi-, tri-, quadri- を使って、monolingual, bilingual, trilingual, quadrilingual という単語を作ることができる。前から順に、「一言語使用者」、「二言語使用者」、「三言語使用者」、「四言語使用者」を示す。

ラテン語に由来する順序の表現

ラテン語に由来する順序の表現として以下のような単語がある。

ラテン語に由来する順序の表現
英語和訳
primary第一の
secondary第二の
tertiary第三の
quaternary第四の
quinary第五の
senary第六の
septenary第七の
octonary第八の
nonary第九の
denary第十の

上記の単語を使った表現として、secondary accent(第二アクセント)や tertiary education(第三段階教育 [2] )などがある。

その他の表現

dozen は12個のもの(=「ダース」)を表す表現である。a dozen (of) eggsは、「1ダースの卵」、すなわち「12個の卵」を表す。

この他、20個のものを古めかしい表す表現として、score がある。four score and seven years ago [3] は、「4×20+7年前」で、「87年前」のことを示す。

具体的表現の事例

ここからは、様々な分野における英語での数の表現について具体例を見ていこう。

芸術

演奏や歌唱の数について表現するときには、以下のような表現を使うことがある。

演奏や歌唱の数についての表現
英語和訳
solo独奏・独唱
duo [4] 二重奏・二重唱
trio三重奏・三重唱
quartet四重奏・四重唱
quintet五重奏・五重唱
sextet六重奏・六重唱
septet七重奏・七重唱
octet八重奏・八重唱
nonet九重奏・九重唱

上記の表現は、演奏そのものだけでなく、演奏している人を指すこともあるということに注意しよう。例えば、quintetは5人の奏者のことを指すこともある。

拍子についての表現
英語和訳
duple meter二拍子
triple meter三拍子
quadruple meter四拍子

meter の代わりに、time としても良い。「三拍子で」と表現したければ、in triple meter もしくは in triple time とする。

音楽や文学作品でセットになっているものを表現するときに、以下のような表現を使うことがある。

連作についての表現
英語和訳
duology二部作
trilogy三部作
tetralogy四部作
pentalogy五部作
hexalogy六部作
heptalogy七部作
octalogy八部作
ennealogy九部作
decalogy十部作

例えば、the Star Wars Trilogy は「スターウォーズ三部作」を示す。

会話・劇の参加者数に基づく表現
英語和訳
monologue独白、一人芝居
dialogue対話、対話劇
trialogue鼎談 [5] 、三人劇

ちなみに、decalogueは「(モーゼの)十戒」という意味になる。

葉の模様に関する表現
英語和訳
trefoil三つ葉(の模様)
quatrefoil四つ葉(の模様)
cinquefoil五つ葉(の模様)
sexfoil六つ葉(の模様)
septfoil七つ葉(の模様)
octofoil八つ葉(の模様)

上記の表現については、植物について表現することもあるが、装飾デザインがイメージされることが多い。

数学・統計

関数についての表現
英語和訳
linear equation一次方程式 [6]
quadratic equation二次方程式 [7]
cubic equation三次方程式 [8]
quartic equation四次方程式
quintic equation五次方程式
「二次方程式」でなくて、「二次函数」 [9] を表したければ、equation の代わりに function を用いて quadratic function とすれば良い。他の数も同様である。 なお、「単項式」、「二項式」、「三項式」はそれぞれ monomial, binomial, trinomial になる [10]
記数法についての表現
英語和訳
unary一進法、単項の
binary二進法、二項の、二値の
ternary三進法、三項の
quaternary四進法
quinary五進法
senary六進法
septenary七進法
octal八進法
nonary九進法
decimal十進法
undecimal十一進法
duodecimal十二進法
tridecimal十三進法
tetradecimal十四進法
pentadecimal十五進法
hexadecimal十六進法
vigesimal二十進法
sexagesimal六十進法

「二進数」と言いたければ、binary numberと表せば良い。

多角形についての表現
英語和訳
triangle三角形
square [11] 四角形
pentagon五角形
hexagon六角形
heptagon七角形
octagon八角形
enneagon [12] 九角形
decagon十角形
hendecagon十一角形
dodecagon十二角形
tridecagon十三角形
tetradecagon十四角形
pentadecagon十五角形
hexadecagon十六角形
heptadecagon十七角形
octadecagon十八角形
enneadecagon十九角形
icosagon二十角形
triacontagon三十角形
tetracontagon四十角形
pentacontagon五十角形
hexacontagon六十角形
heptacontagon七十角形
octacontagon八十角形
enneacontagon九十角形
hectogon百角形

なお、「多角形」は polygon と表現する。普通の幾何学では使わない表現だが、monogon(一角形)やdigon(二角形)という表現もある。

分位数についての表現
英語和訳
tertile [13] 三分位数
quartile四分位数
quintile五分位数
sextile六分位数
septile七分位数
octile八分位数
nonile九分位数
decile十分位数
undecile十一分位数
duodecile十二分位数
vigintile二十分位数
centile [14] 百分位数

時間

年に基づく表現
英語和訳
annual1年ごとの
biennial2年ごとの
triennial3年ごとの
quadriennial4年ごとの
quinquennial5年ごとの
sexennial6年ごとの
septennial7年ごとの
octennial8年ごとの
novennial9年ごとの
decennial10年ごとの
undecennial11年ごとの
duodecennial12年ごとの
vicennial20年ごとの
quadranscentennial25年ごとの
semicentennial [15] 50年ごとの
dodranscentennial75年ごとの
centennial100年ごとの
bicentennial200年ごとの
millennial1000年ごとの

上記の表現は、そのままで「○年記念」 [16] という意味を表すことができる。例えば、sexennial は「6周年記念」という意味を表す。

また、時間に関する特殊な表現として fortnight がある。これは主にイギリス英語で用いられる単語で、「2週間」を示す。

政治

「三頭政治」は3人によって支配される政治のことを指す。「四頭政治」、「五頭政治」……も同様に、4人、5人……によって支配される政治のことを指す。

支配者の数に基づく表現
英語和訳
monarchy君主政 [17]
diarchy両頭政治
triarchy三頭政治
tetrarchy四頭政治
pentarchy五頭政治
hexarchy六頭政治
heptarchy七頭政治 [18]
octarchy八頭政治

娯楽

サイコロの目の数を表す古い言い方として、以下のようなものがある。ただし、現代では、単に one, two, three…と言うのが普通であると思う。

サイコロの目についての表現
英語和訳
ace(サイコロの目の)1
deuce(サイコロの目の)2
trey(サイコロの目の)3
cater(サイコロの目の)4
cinque(サイコロの目の)5
sice(サイコロの目の)6

これらの言い方は、古フランス語に由来する。なお、トランプではエース (ace) をいまだに1を示すために使う。

その他

「何重の」、「何倍の」を示す表現
英語和訳
single単一の
double二重の、二倍の
triple三重の、三倍の
quadruple四重の、四倍の
quintuple五重の、五倍の
sextuple六重の、六倍の
septuple七重の、七倍の
octuple八重の、八倍の
nonuple九重の、九倍の
decuple十重の、十倍の
undecuple十一重の、十一倍の
duodecuple十二重の、十二倍の
dual という言葉で「二重」を示すこともある。
多生児・組を示す表現
英語和訳
singleton一人だけで出産された子、単生児
twin双子
triplet三つ子、三個組
quadruplet四つ子、四個組
quintuplet五つ子、五個組
sextuplet六つ子、六個組
septuplet七つ子、七個組
octuplet八つ子、八個組
nonuplet九つ子、九個組
decaplet十個組
undecaplet十一個組
duodecaplet十二個組
centuplet百個組

単数形の a twin は双子の一人を指す。双子の両方を指したかったら複数形の twins にしなくてはならない。他も同様である。

脚注
  1. Pixabayよりgeralt氏のパブリックドメイン画像を使用。 []
  2. 中等教育の次の段階の教育のこと。初等教育を第一段階、中等教育を第二段階と考える。 []
  3. four score and seven years agoとは、アメリカのリンカーン大統領が南北戦争中の1864年に行ったゲティスバーグ演説の冒頭の言葉である。ゲティスバーグ演説は、government of the people, by the people, for the people(人民の人民による人民のための統治)という言葉で有名。 []
  4. duet という言い方もある []
  5. 三人で話すこと []
  6. 英語を文字通り訳せば「線形の方程式」になる。 []
  7. 英語を文字通り訳せば「正方形の方程式」になる。 []
  8. 英語を文字通り訳せば「立方体の方程式」になる。 []
  9. 「函数」は「関数」に同じ []
  10. 「多項式」は polynomial である。 []
  11. quadrilateraltetragonという言い方もある。 []
  12. nonagonという言い方もある。 []
  13. tercile という言い方もある。 []
  14. percentile でも同じ意味になる。 []
  15. quinquagenaryという言い方もある。 []
  16. 「○年記念」は、序数と anniversary を使って表現することもできる。例えば、「6周年記念」ならば、6th anniversary とも言える。 []
  17. monarch になると「君主」を意味する。 []
  18. the Heptarchy はイギリス史における七王国を指す。 []