スマートフォンを構成する全てのパーツを3Dプリントカスタマイズ
グーグルは2014年2月に大手3Dプリンターメーカー3Dsystemsと高速3Dプリンターを開発することを発表した。グーグルが進めるProject Araを完遂させることが目的だが、このたび2015年にサービスを本格始動することが発表された。
Project Araについては以前にもご紹介させていただいたが、簡単に言うと、ユーザーがスマートフォンを自由にカスタマイズして、自分だけのスマートフォンが作れるというもの。
カスタマイズできる範囲はデザインや色、大きさ、内部に搭載されているプリント基板まで含む。まさに、自分だけの完全オリジナルなスマートフォンが作れるプロジェクトだ。
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今回発表されたのは、初の開発キットのリリースで、本格的に使用できるのは2014年の終わりから2015年にかけてになるとのことだ。このリリースはProject Araを統括するリーダー、ポール・エレメンコ氏が、自身のソーシャルネットワーキングサービスGoogle+で発信している。
この最初のスマートフォン開発モジュールキットMDKv0.10は、大中小の三種類の大きさに分かれており、ユーザーは好きな大きさのスマートフォンを作ることが可能だ。
また、タッチパネルのスクリーンを選ぶだけではなく、キーボードやテンキーもオプションで選択することができる。
さらにすごいのが、内部に搭載されるプロセッサやディスプレイユニット、無線LANチップ、バッテリーなどの全ての部品がCADデータから直接3Dプリントできるようになる。
スマートフォン開発モジュールキットMDKv0.10
3種類の大きさから選択可能
内部のプリント基板までカスタマイズする
Project Ara動画
3Dプリンター生産にいち早く先鞭をつけるグーグル
この初回のモジュールキットを生成するために3Dsystemsと共同開発を行っているが、既に600dpiの解像度をもつフルカラー3Dプリントが可能だという。3Dsystemsは昨年末にフルカラープラスチック3Dプリンター「ProJet® 4500」を発表している。今回のグーグルとの共同研究ではフルカラーに加えて高速プリントを可能にしようという試みだ。
本格的な3Dプリンターでの生産が開始されればプリント速度と精度が極めて重要になってくる。3Dプリンターの造形スピードはここ数年で飛躍的に向上しており、各メーカーがこぞってスピード向上の研究開発を行っている。
また、メーカー以外の各国の研究機関などでも3Dプリンターのスピードをアップさせる取組は行われており、ここ数年でさらに高速化されるかもしれない。少なくとも、数年後には3Dプリンターは完全な製造機器として機能し始めるだろう。グーグルはこうした動きにいち早く対応し、クラウドと3Dプリント二つの技術で製造分野にも進出を果たしつつある。Project Araはそのテストモデルになるだろう。
まとめ –iPhoneとの比較から見る商品開発の変化-
3Dプリント技術とクラウド技術は、製品開発の分野にまで消費者の権限を及ぼすものだが、今後のものづくりや人の購買活動にどのように影響するのだろうか。
例えばProject Araと、スティーブ・ジョブスが手掛けたiPhoneを比較してみた場合、そこには相反する真逆な商品開発の概念が存在する。
世界中で多くの人々が使っているアップルの製品はiPhoneもiPadも、あるいはもっとさかのぼって初代のマッキントッシュも、商品コンセプトが徹底して細部までほどこされている。これはアップルが他社の商品開発や製造と一線を画す点だ。
多くの方々は気にも止めないと思うが、iPhoneと他のメーカーのスマートフォンを比較してみると全く異なる点がある。iPhoneを覆う外側のケースのラインはどれだけ拡大しても直線性を失うことはない。
他社は拡大するとどのメーカーも直線性を保っておらず凸凹になっている。スティーブ・ジョブスは人が絶対に見ることは無い、プリント基板の配列や裏側の部品にまで美しさを求めたという。
こうした商品開発、ものづくりに対する徹底した追求(デザインであれ、美しさであれ、インターフェースであれ)が人の心を動かし、価値観を感じさせ、購買活動に結び付けているのではないだろうか。
しかし、Project Araや他の3Dプリンターによるカスタマイズ製造には、こうした細部までのこだわりは求められないのかもしれない。そこにはメーカー側からの強いコンセプトと徹底したこだわりが排除され、消費者が自分で自由にカスタマイズするという真逆の商品設計だ。
今後3Dプリント技術によるカスタマイズ製造が進めば、商品分野によって、徹底した価値観のすみわけが起きることが予測されるだろう。例えば、カスタマイズが消費者ニーズに合う商品と、持つことで圧倒的な価値観を感じさせてくれる高付加価値な商品とに分かれると言ったことがおきるのではないだろうか。
これからの時代のメーカーが行う商品開発は、今まで以上に消費者に価値観を与えるものである必要があるだろう。
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