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2021-12-14

多重知能理論、「多元的知能の世界」のメモ

ハワード・ガードナーの「多元的知能の世界」*を、ちょっとだけ週末に読み進めたメモ。

人の秀でた特徴を、8項目に分類したものがある。それぞれを説明しだすと文章が長くなるので、とりあえず雰囲気で、次の8つを「この人は、◯◯的に優れている」と入れて、具体的な人物をイメージしてみてほしい。すると確かに、それぞれ独立性をもった特徴のように見えてこないだろうか。

言語的
論理・数学的
身体・運動的
人間関係的(対人的とも)
博物的
内省的
空間的
音楽的

この8項目のうち、いわゆる「知能」としてイメージするのは、1つ目の「言語的に」と2つ目の「論理・数学的に」優れている、くらいかもしれない。あとは知能というより、才能、センス、資質、性格、人柄といったイメージが先に立つかもしれない。

これに疑問を呈してガードナー氏が研究発表したのが多重知能理論(先ほど挙げた本では7つとなっているが、後に「博物的」を加えて8つになった)。この8つ全部を同格に並べて「知能」と呼んでみせたのだ。

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IQだけが知能じゃない。人間の知能は単一のものではなく多元的だとして、その知能を8つに分類した。

1)8つはある程度の独立性をもって、それぞれ機能している
2)スキルの量や組み合わせは、一人ひとり異なる
3)知能は統合的に働き、諸々の問題を解決したり、職業や趣味などを通じてパフォーマンスを発揮する

ギリシャ時代には、こうした知能がほぼ等しく尊重されていたが、1905年にアルフレッド・ビネーらがIQテストを作って以来、知能のとらえ方に多元性が失われていったという話。

「地頭でポテンシャル採用」「人柄採用」「論理的思考力が高い人」「コミュニケーション能力が高い人」などなど、人材採用の現場にも募集要項にも、要件を示しているような、ほとんど何も定義できていないような言葉があふれているが、もう一歩踏み込んで、本当に自社の募集ポジションで力を発揮する人、発揮してほしい能力は、どう落とし込めるのか問い直してみると、「IQ高そうな人」を一斉に他社と取り合う競争環境を打破できるかもしれない。

「自分の会社の、ここの部署で、こういう役割をしてくれる人」を多元的に解釈し直して、言葉で再定義してみたら、もっともっと個々人がもつ多様な能力が、うまく社会の役割につながっていくんじゃないか。IQに偏らず、多様な能力が適切に評価される世の中になっていくんじゃないか。そんな期待をもっている。一見すると「性格」とか「人柄」と見えるものも、IQと同等の価値が認められていくといい。

*Howard Gardner (著), 黒上 晴夫 (監訳)「多元的知能の世界―MI理論の活用と可能性」(日本文教出版)

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コメント

やっぱ今の時代は均一な歯車と丈夫な奴隷が求められるんじゃない?

佐藤さん、私はそれだとあんまり幸せに生きられないので別の解釈で今の時代をとらえますが、それぞれの納得解があるだろうとは思います。この自分の書いた文章をすっかり忘れていたので、、読み直せて良かったです。ありがとうございました。

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