社内システム育成日記

デイサービスでの簡単なシステムをファイルメーカーで作成しています。備忘録を綴っていきます。

デイサービスでFileMakerソリューションを作って楽をしています

今回の記事はQiitaのアドベントカレンダーに参加しています。 qiita.com Qiita初登場なので簡単にこのブログを紹介しますと、FileMakerで業務システムを作っていく奮闘記です。

FileMaker導入の経緯

実家のデイサービスで事務として働いていますが、もともと顧客情報がスタッフの記憶だったりエ○セルや紙で管理されていて、それらは更新されたりされていなかったりする‥といった状況でした。業務の流れに沿って情報が行き来する、ということがなかったので、データベースを作ろう、ということでFileMakerに行き着きました。まずはお試し無料期間で顧客情報から作りはじめ、そのまま購入、その後すぐにFileMakerServer導入‥というように、本当に小さく始めてだんだん大きく育っていっています。

今回は改めて弊社での業務システムの紹介をしてみたいと思います。

デイサービスとは

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弊社の業務内容を簡単に説明します。介護保険制度を使って、介護認定を受けた高齢者の方にサービスを提供しています。ケアマネージャーさんが作ったプランに従って、ご利用者さんを朝お迎えに行き、1日レクレーションや入浴で楽しんでいただき、夕方にお送りするのが基本的なサービスです。弊社ではご利用者さんのご家族からの細かい要望にもお応えしており、夕食までの延長利用、お泊りのサービスも行っています。

何に困っていたか?

情報の伝達がうまくいかない

例えばご利用者さんから利用変更の希望があったときに、その旨をケアマネージャーさんにも連絡しなければならないのですが、その利用者さんのケアマネージャーさんはどこの誰なのか?連絡先は?といったことがすぐにわからず、テンプレートはあるのに、そのテンプレートになかなか行き着かない‥という状態でした。社内での連絡も電話か口伝だったので、相手が話し中だったり手が離せない状況のときは再度連絡しなければならないし、行き違いが多々生じていました。

情報の検索が困難

例えばご利用者さんの体温が少し高めのとき、その方の平熱や前回来所されたときの様子などを確認する必要がありますが、紙でファイリングされたものからその情報を引き出そうとすると、かなり時間がかかっていました。ご利用者さん毎ではなく日毎にファイリングされていたので、まずその方が最後に利用されたのはいつなのか?を記憶から引き出し、何枚も紙をめくって該当の箇所を見つけていました。

集計作業や書類作成に時間がかかる

今月の売上金額を把握するのにも時間がかかり、毎月何度かエクセルに今月あったことを転記して大体の金額を把握していました。また介護保険を使っているため行政で決められた書類がたくさんあり、急に新たな書類を作成しなければならない、ということも多々発生しており、その度に右往左往していました。

FileMakerで作った業務システム

PCトップ画面 f:id:hotspiringday:20191211125903p:plain

ipadトップ画面 f:id:hotspiringday:20191211130857p:plain

こんな雰囲気です。1日1人1レコードの利用票というテーブルをメインのトランザクションテーブルに持ち、その子情報としてバイタルデータやご利用中のお写真、特記事項などを持っています。

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レイアウトではあまりフィールドを載せていませんが、このテーブルでは介護保険に基づいて売上を計算したりしています。お泊り料金に夕食代と朝食代を含める、など自社のルールにも対応しています。

▼利用票テーブル f:id:hotspiringday:20191211154226p:plain

この利用票テーブルが予約と実績を兼ねていて、予約状況の確認やサービスの記録、介護保険の請求に役立っています。

▼予約確認用カレンダー f:id:hotspiringday:20191211155332p:plain 介護スタッフはこのカレンダーを見ながらシフトの調整をしています。日々更新される情報なので本当はプリントアウトしたくないのですが、介護スタッフからの要望で週に1度プリントして掲示しています。

介護スタッフがipadからバイタル入力

ipadではその日の利用票を検索して表示しており、介護スタッフがバイタル情報や特記情報を入力していきます。UIは介護スタッフの要望をほぼ取り入れていて、間違ってレコードを消してしまったり‥というようなことがないように自由度は低めに作っています。どう扱っても大きな失敗がないように、あらゆる動きをシステムが先回りして防ぐというようなつくりにしています。 f:id:hotspiringday:20191211160247p:plain f:id:hotspiringday:20191211160523p:plain

FileMakerの標準テンキーだとipadの画面が下から半分以上隠れてしまうので自作のテンキーを使用しています。 再検ボタンを押すと、特記事項に[体温再検してください!]と入力され、ご利用者様名が表示されているボタンを押すと詳細画面に遷移し、バイタルが複数記入できるようになっています。 f:id:hotspiringday:20191211161033p:plain

ipadからその日に行ったレクレーションの登録もしてもらっています。 f:id:hotspiringday:20191211163419p:plain

ここまで入力し終えたら、印刷依頼のボタンを押します。 そうするとslackで事務所にメッセージが届き、事務スタッフはご家族への連絡帳をプリントします。 f:id:hotspiringday:20191211163857p:plain

事務スタッフはPCから

ご利用された時間、要介護度、ご利用内容(入浴をしたか?昼食を提供したか?など)が入力されていれば、介護保険の算定に必要なコードや単位が出てくるので、月末になるとこれをケアマネージャーに報告します。(書き写すだけですが、ケアマネージャーから送られてきた予定に実績を書き込むので、手書きの作業です。) f:id:hotspiringday:20191211164818p:plain

事務スタッフはお問い合わせの対応、利用予約の変更、書類の作成などでこのソリューションを活用しています。 システム導入以前は、記憶していないとすぐに対応できない仕事がたくさんあり、ご利用者さんが何曜日に何時から何時まで利用されるのか?要介護度は?といったことを覚えていたり、個人でメモしたりしていました。

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そのため、変更があった場合にそのことがスタッフ全員に伝わっていなかったり、忘れてしまったり、という場合に間違った処理をしてしまうことがありました。 FileMaker導入によって、記憶しておかなくても何気なく業務ができるようになり(笑)、ちょっとしたことも共有されるようになったと思います。

▼事務スタッフが一番喜んでいる機能はこちら

hotspiringday.hatenablog.com

データベースというまでもないような事務作業もFileMakerで行っています。 例えば今までテプラでしていた名札を作るというようなことも、FileMakerで利用者マスタからレイアウトを整えたものをシールに印字しています。

▼名札 f:id:hotspiringday:20191212103938p:plain

▼請求書や領収書を入れる封筒に印字する機能

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役員は売上をよく見ています

f:id:hotspiringday:20191211172131p:plain ご利用予約があれば、大体売上の見込みがわかります。計算はだいたいスクリプトで足し算のLoopをすればよくて、計算結果は数字フィールドにいれています。リアルタイムで正確な数字を知りたいというわけではないので、この方法で満足しています。 左に一覧、矢印ボタンでその詳細を見る、というレイアウトを私は気に入ってよく使っています。(笑)

その他、書類の作成も大体FileMakerが活躍しています。

ipadから体験利用されている方の様子を入力すると f:id:hotspiringday:20191211173320p:plain

▼こんな書類ができています。 これをケアマネージャーさんにお送りしています。 f:id:hotspiringday:20191211174303p:plain

ご利用者さんにipadでご署名をいただく書類もあります。 hotspiringday.hatenablog.com

その他、行政に提出する書類やデイサービス日誌など‥介護施設にはたくさんの書類がありますが、FileMakerでたまったデータを二次利用したりテキストのテンプレートを使うことで、文章を手打ちする作業を最小限に抑えています。

基本的なところは3ヶ月くらいで開発できた

今回ご紹介したようなこの業務システムのコアな部分はすぐに開発できました。FileMakerの技術の前に一度データベースの基本的な考え方を少し勉強してから開発に着手しましたが、その準備時間を含めても3ヶ月以内には運用スタートしていました。

時間がかかったのは実際に作っていく工程よりも業務フローの整備です。 人によって呼び方が違う曖昧なタスクやサービスのルールを明文化していき、データベースとして扱いやすいように分類していきました。介護保険のルールは扱いづらく、無理やりな部分もあります。

ノーコードで開発できる!とは言ったものの

例えばAPIを使って郵便番号から住所を出すみたいなことは早い段階で必要になってくるし、SQLも使っているし、FileMaker Server の管理はFileMakerの知識だけではなくてネットワークにも少し詳しくなる必要があったり…と、何も難しいことをしなくてもアプリみたいなものを作れるんだ~♪と思ってやってみると、騙された気分になるかもしれません。(笑)

しかし開発に取り掛かってからすぐに使えるものができるというのは嬉しいので、なんだかんだ色んなことに手を出したくなって、気づいたら結構大きくなっていました。

弊社では事務処理がかなり簡単になったものの介護スタッフの仕事はあまり減っていないので、今後バイタルを自動で測ったり、送迎の配車を自動で組んだりといったところで仕事を楽にできたら良いんじゃないかと思っています。(私がやるとは言いませんが笑)