HONZ卒業旅行&忘年会 in 伊豆・番外編「今、読んでいる本」 

2024年12月29日 印刷向け表示
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我々が峠恵子さんをお招きしたのは、彼女の歌が聞きたいという思いがあったからでもある。そのため2次会はカラオケルームを確保していた。ほどなくして峠恵子リサイタルが始まるかと思いきや、いきなり本の話へと大きく舵が切られる。峠恵子の歌声と折り重なるように本の紹介が始まり、「あ〜、あれね!」と懐かしい掛け声が飛び交った。往年の名曲たちと最新のノンフィクション本に、時々お酒の話も添えて紹介させていただきます。

成毛 眞 

作者: ミチオ・カク 翻訳: 斉藤 隆央
出版社: NHK出版
発売日: 2024/12/25
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成毛眞と中野亜海コンビが次に企画している本は、難しい内容を中学3年生向けに作るジュブナイル的な一冊だ。最近は小難しい本の売れ行きが良くないなか、本書は成毛がイメージしている「これから売れそうな本」とのこと。余談だが、私は旅行中の随所に中野の編集者魂を見た! 宴会前や朝ごはんの会場で、成毛を捕まえて見事に企画を進めていく。この企画は宴会前に成毛にGOサインを出させていた企画だ。これぞ、毎年社長賞を取る敏腕編集者の力か……!

仲野 徹 

作者: 松浦 壮
出版社: 日本能率協会マネジメントセンター
発売日: 2024/8/27
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量子力学本が続く。「誰でもステップを踏んで学べる量子力学の教科書決定版」と書かれているが、内容はむちゃくちゃ難しいらしい。仲野でも2週間この本だけに専念してようやく読み切ったそうだが、読み込めば面白いとのこと。仲野先生、師走の忙しい時期に、これまた時間の取られそうな本を紹介してくださる…。

作者: ピーター ロビソン 翻訳:茂木 作太郎
出版社: 並木書房
発売日: 2024/11/6
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翻訳にややクセがあるものの、内容がめちゃくちゃ面白いそうだ。近日、日本人が書いたボーイング本が出版されるので期待しているとのこと。

内藤 順 

作者: 窪田 新之助
出版社: 集英社
発売日: 2024/12/5
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メンバーの多くが「間違いない!」とテンションがブチ上がる。2024年開高健ノンフィクション賞の受賞作である。「JAの神様」と呼ばれた男が溺死した事件をテーマに、緻密な取材が暴いた日本の闇。もはや誰が被害者で加害者なのか分からない。内藤も久しぶりにノンフィクションを読んだにも関わらず、1日で一気読みしたとのこと。

首藤 淳哉

作者: 宮本 常一
出版社: 岩波書店
発売日: 1995/2/16
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『対馬〜』読了後、首藤が導かれたように手に取った本である。対馬の寄り合いの話が含まれており、民主主義の熟議の理想と言われるが、一方で談合のような日本の特徴にもつながるかもしれないと考えさせられた。

作者: 齊藤 英治
出版社: 集英社インターナショナル
発売日: 2024/12/6
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HONZで最もジャンルを横断して読書を楽しんでいるのは首藤かもしれない。量子力学の流れから、本書を紹介してくれた。電流の先にあったもう一つの現象、スピントロニクス。理論上100年前から存在するのは分かっていたが、最近観測できるようになった。科学が大きく変わる予感にワクワクするも、量子力学をクリアしないと理解できないという寂しさ。道のりが長いなぁ。

青木 薫

作者: 佐藤文隆
出版社: 青土社
発売日: 2024/3/19
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青木はサイエンス・ノンフィクションにおいては日本一の翻訳者である。量子力学については青木に聞け! ということで紹介してくれたのは、量子力学を相当理解している人しか分からない一冊だ。「シュレーディンガーの猫」など煙に巻かれて量子力学をすごいと言うのはやめましょう。それは死屍累々の墓場を見ているようなもの。青木は本書を読んで、日々最新情報を追いかけていたけれど、まだまだ遅れていたことを実感したらしい。もしかしたら、本書は量子力学を一度もやったことのない人がレビューを書く方が、全く新しい視座を開拓できるのではないか。青木は内藤をご指名。内藤「俺、読んでいなくても雰囲気で書けますよ!」メンバー一同、ずっこける。

作者: 竹良 実
出版社: 小学館
発売日: 2023/3/30
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作者: 生源寺 眞一 (編集), 太田 寛行 (編集), 安田 弘法 (編集)
出版社: 岩波書店
発売日: 2017/10/21
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農学の爆進ぶりを感じられる2冊。生命科学の発達と環境科学が危機に陥っていることから、ここ20年間で農学という分野が激変している。

◆ 峠 恵子「ウイスキーがお好きでしょう ※峠さんの歌声をイメージして聞いてください!

柳瀬 博一

作者: 滝 久雄 (著), 柳瀬 博一 (著, 編集)
出版社: 中央公論新社
発売日: 2024/12/6
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滝久雄さんが企画、柳瀬がインタビューと編集を行った上野本が12月に発売された。上野という街は、これからの日本の街づくりの理想が全て備わっている。上野の魅力を知った上で上野で遊んでみよう! 

ラリー・タイ (著), 久美 薫 (翻訳)
出版社: 現代書館
発売日: 2013/8/30
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さらに上野本の編集者から、「再来年アンパンマンの朝ドラやるんだよね。流行りそうだから、アンパンマン本やらない?」と依頼が来た。アンパンマン本を100冊以上入手して、1989年から2024年の映画を見通した結果、身体がアンパンマンになりました笑。18万字から9万字に削った力作は春頃出版予定。お楽しみに! 本書は執筆時に参考になった本。ちなみにある記事によると、やなせたかしはスーパーマンのアンチテーゼとして、アンパンマンを生み出したとか。

田中 大輔

「日本酒の話をしろ!」という成毛の無茶振りに応えて、田中は本日持参した日本酒3本を紹介してくれた。 新政 No.6 R-type(秋田)仙禽 レトロ(栃木)手取川 吉田蔵 石川門(石川)である。日本酒トップランナーの新政。スッキリしていて飲みやすい仙禽。そして田中一押しの吉田蔵。ちなみに、新政の佐藤祐輔社長は内藤順の小学校時代の同級生とのこと。世の中、狭いっ!

鎌田 浩毅・聖子

作者: 鎌田 浩毅、蜷川 雅晴
出版社: 講談社
発売日: 2024/12/26
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鎌田夫妻はいつもHONZイベントに夫婦で参加してくださる。奥さんの聖子さんが言うには、以前の鎌田先生は講演がめちゃくちゃ苦手で、ここまで時間をかけて奥さんが育てたそうだ。結果、鎌田先生は引くて数多な有名人に変身し、講演依頼が絶えないらしい。聖子さんも本好きで、京都国立博物館の法然展行くために法然を、法然を理解するためには親鸞を読み漁り、今年は大忙しである。12月に発売された『みんなの高校地学』もよろしくお願いします!

栗下 直也

作者: 細田 昌志
出版社: 小学館
発売日: 2024/5/31
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栗下直也がマイクを持つと、「まだ生きてるんですか!?」と会場からどよめきの声が。「僕、まだシラフなんで」と、栗下からすれば起きているだけでシラフな状態であるらしい。泥酔状態だが、栗下の紹介本は間違いなかった。内藤が「俺も買った!」と続く。

麻木 久仁子

作者: 佐々 涼子
出版社: 集英社
発売日: 2024/4/19
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麻木が紹介したのは、今年惜しまれながら逝去された佐々 涼子さんの作品。麻木の最近の興味は、もっぱらセカンドライフ。放送大学の選科履修生として、死生学やグリーフサポートについて勉強中だ。麻木は本書を「13年間における最高の一冊」でも取り上げている。「悔いなく生きようと思って今日も参加している。みんな元気に明るく生きていこうぜ!」、皆で麻木久仁子につづけー!

◆ 東 えりか

作者: ハリー・パーカー,翻訳: 川野太郎
出版社: みすず書房
発売日: 2024/7/18
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東えりかと冬木糸一の今年ナンバーワンが被った! アフガニスタン紛争地に従軍して両脚を失った作家が、最先端の支援(アシスティック)テクノロジーを使ってハイブリッド・ヒューマンになっていく。障害の支援技術の発展は目覚ましく、装着するもの(ウェア)から身体に接合するステージになりつつある。とにかく読んでほしい! ヒトの姿のイメージを根本から変えてしまうかもしれない。
東えりかのレビューと、冬木のレビューを載せておこう。

◆ 峠 恵子「I Need To Be In Love」※峠さんの歌声をイメージして聞いてください!

◆ 足立 真穂 

作者: SHUN
出版社: 新潮社
発売日: 2024/10/17
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女性陣から「あっ、知ってる!」と歓声が上がる。珍しくメンバーの興味が分かれた本だ。『ホスト万葉集』のトップ歌人で、ホストで寿司屋で歌人という異色の経歴を持つ。「うんちくがあって良い」と足立絶賛。

足立からさらにもう一冊紹介があった。HONZ副代表・東えりかの作品が開高健ノンフィクション賞の最終候補に残った。旦那さんを急ながんで亡くしてしまった東が、原発不明がんと向き合い続けた看病期を、当時の医者や専門医への取材を含めて書き起こした一冊である。現在鋭意改稿中だとのこと。発売は未定だが、必ず出版する!と決意は固い。

その東も『対馬の海に沈む』を絶賛。「あの作品が同じときに候補作であったことが誇りだわ」と言っていた。集英社「青春と読書」10月号に選考委員による選評が発表されている。興味のある方はご一読を。

◆ 水代 優 

作者:マイケル・ルイス, 翻訳:小林啓倫
出版社: 日経BP 日本経済新聞出版
発売日: 2024/6/26
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『マネーボール』でお馴染みのマイケル・ルイスの一冊だ。FTX創業者である天才が、世の中にどのように影響を与えたのかを知りたい。

作者: 柏原 光太郎
出版社: 新潮社
発売日: 2024/6/17
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水代優はグッドモーニングス株式会社を率いて、全国に新たなコミュニティスペース仕掛けている。浜町でオープンしたBook&Cafe「Hama House」に、丸の内にある「Marunouchi Happ」、そして今年8月にはJR大阪駅前で「PUBLIC SCOOP」を始動! 人を動かしブームをつくる水代が、本書はすごく勉強になったと言う。

◆ 鰐部 祥平

作者: ロナルド・ドラブキン, 翻訳:辻元 よしふみ
出版社: 河出書房新社
発売日: 2024/11/27
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成毛眞に文章力を高く評価される鰐部祥平。鰐部の得意分野であるスパイものから1冊。日本海軍に雇われたイギリス人のスパイは、アメリカ軍にも雇われた二重スパイだった。日本海軍の空母の技術発展にも大きく関わっていたという。

作者: ジェレミー・ドロンフィールド,翻訳:越前 敏弥
出版社: 河出書房新社
発売日: 2024/9/27
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最近は書評家としても活動を広げている。『ミステリマガジン』1月号に書評を掲載したのは本書である。オーストラリア出身の親子がアウシュビッツに送られた顛末とは。東えりかのレビューはこちら。東は鰐部と紹介本が被って嬉しそうだ。

◆ 峠 恵子&HONZ 「sing」 ※峠さん&HONZメンバーの歌声をイメージして聞いてください!

最後は、みんなで「SING」を熱唱して終わりましたとさ☆

さて、宴もたけなわであるが、ここで2時間のタイムアップである。内藤順が2次会の冒頭で「最近読んでいる本のコーナーをやろうぜ」と突然言い出した時、メンバーの表情がさっと変わり、皆がスマホを手に取り出した。本の話にモードが変わるときの、ピリッとした瞬間が私には印象的であった。

しかし、皆お酒が入っているので、本のタイトルを思い出せない。仲野や鰐部、そして期待に違わず栗下もタイトルが出てこない。だがそこに、すかさずメンバーのフォローが入る。「俺も読んだ!〇〇だよ」皆、HONZが終了してからも本を読んでいるんだなぁ。

せっかく本を読んでいるんだから、気の向くままに紹介すればいいじゃないか!と私は思う。これからも、日本のノンフィクション業界がどんどん発展し、作家たちの未来と、本好きたちの知的好奇心を明るく灯してくれますように!!

HONZ活動記 in 伊豆① はこちら
HONZ活動記 in 伊豆② はこちら

決定版-HONZが選んだノンフィクション (単行本)
作者:成毛 眞
出版社:中央公論新社
発売日:2021-07-07
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『決定版-HONZが選んだノンフィクション』発売されました!