普遍的価値をもつ社会主義国家批判の書
2009/07/26 23:10
23人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コーチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
民衆の解放を唱え成立した社会主義政権は、どれも最終的には指導者個人や党の独裁を生み、民衆を解放するどころか以前よりもひどい搾取と隷属のもとに置き、より多くの不幸と悲惨を生み出した。これは、ロシア革命以来すべての社会主義国家に共通して言える歴史的事実である。
ジョージ・オーウェルのこのおとぎ話は、そんな社会主義体制への痛烈な批判の書である。主人公は、農場の家畜たち。あるとき彼らは飼い主の人間を追い出し、動物一匹いっぴきがみずからの主人であるような社会の建設をめざして、「動物農場」を建設する。最初は、自由と平等の理想に燃え、共同社会の建設に励む彼らであったが、次第にナポレオンというブタが権力を掌握し...
この物語で、作者が風刺の対象としたのは、スターリン体制下のソ連だが、そこに描かれた一般的状況は、現在の中国や北朝鮮にも完全にあてはまる。すなわち、民衆の洗脳。熾烈で醜い権力闘争。個人崇拝と恐怖政治...その他あらゆる自由の抑圧、不平等だ。物語では、ブタが支配者に、馬や鳥、羊など他の動物は彼らに指示されて働く存在となってゆくが、ブタの唱える理想を愚鈍なまでに信じて疑わない後者の姿は印象的である。殊に、力持ちの牡馬ボクサーのけなげに働く姿とその残酷な最期には、胸がしめつけられる。現実の社会主義国の支配者も、どれほど多くの無垢な人々を騙し、その誠実さを利用してきたことだろう!
社会主義が必然的に独裁に向かうプロセスを、本書は実にうまく描いている。彼らはまず、耳に美しく響くイデオロギーを民衆に吹き込む。やがて強い権威をもつようになったこのイデオロギーを通じて、権力者は人心を掌握する。人々は、いつの間にか彼らの言いなりになり、ついには奴隷と変わらない生活を強いられるのだ。
現代人はいいかげん、階級闘争や発展の概念でわれわれを惑わす社会主義の欺瞞から目を覚ますべきである。どんなに美しい理想も現実の国家を動かす車輪とはなりえないことを、それどころか、その美しい理想こそが詐欺師のようにわれわれを欺き、大きな不幸へと陥れる罠だということを、歴史は十二分に証明しているのだから。
最近、このような理想を信奉する大昔の小説がブームになっているようだ。しかし、そういうプロパガンダ小説を紹介して、いまだに社会主義を標榜している政党の宣伝に手を貸すよりも、同じように古いが、いまだ価値を失わず、ますます強くわれわれの心にアピールするこの『動物農場』を、私は現代の若者に薦めたい。
最後に、今回刊行されたこの新たな翻訳には、『出版の自由』と題された序文も掲載されている。これは、作者が戦時中に本書を最初に出版しようとした際、どの出版社からも断られた経緯を述べながら、ソ連寄りの当時のイギリスの知識人を批判した文章だが、現在の日本の知識層へもそのまま向けられるものとして注目したい。以下の文中、「ロシア」や「ソ連」をたとえば「中国」に、「英国」や「イギリス」を「日本」に変えて読んでみよう。
「英国には口やかましい平和主義者があれだけ多くいるというのに、ロシアの軍国主義への崇拝・・・に対して反対の声をあげられずにいる。・・・赤軍がするのであっても戦争はやはり悪である、と言い切った者が、彼らのなかにどれほどいただろうか。ロシア人には自衛権があるようだが、どうやらわが国が同じことをするのは大罪ということになるらしい。この矛盾を説明する方途はただひとつ。すなわち大多数のインテリゲンチャがイギリス人よりもソ連に愛国心をいだいており、そうした連中に迎合したいという、臆病な欲求によるものなのだ。」
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:メイチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
展開がむごすぎて途中でやりきれなくなったけど、おとぎ話って書いてあるし、最後には救いがあるのかな、と淡い期待を抱いて読み進めたが、そんなことなかった…。
でも動物たちが洗脳されてて、日々辛いけど状況は以前よりよくなっているんだと信じているなら、当人たちにとってはある意味救いなのか?いや、やっぱりそんなことないよな。
善人の掲げる理想は、狡猾な奴等に利用されてしまう脆弱性を孕んでいる。無知もそうだ。社会に生きるひとりの人間として、もっと学ばなければいけないなと考えされられた。だが暴力にはどう対抗したらいいんだ…。
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投稿者:john - この投稿者のレビュー一覧を見る
昔学校の教材で呼んですごく面白かったので、もう一度読みたいと思い、購入しました。買ってよかったです。
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小さい頃、「ベイブ」っていう豚が出てくる映画が好きだったのですが。
この物語に出てくる「豚」はそんな可愛い豚のイメージをぶち壊してくれました。
後味の悪い、シニカルな小説。
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なるけい氏のレビューを見て読みたいと思っていたところに、ゼミで文献紹介をしなきゃいけなかったので、なるけいレビューをコピペしてゼミ内で紹介したらそのまま後期に読む本として採用されたという本(笑)だからみなさんなるけいレビューを見ればいいんです><笑
まぁ結局後期のゼミで読むことになったんだけどその前にちょっくら予習しようと思って読みました。
人間の農場で動物たちが反乱を起こして人間を追放します。ここまではなんかわかります。
ですがここからが面白くて、動物たちの中で一番賢いブタが統率をとるんだけど最終的にこのブタの政治が人間の政治と同じになってしまうというお話。
そんなブタが行う政治は独裁政治そのもので、あらゆる制度や情報操作を利用し他の動物たちを支配していきます。
実際に旧ソ連で起こったことを動物たちを使って巧みに描いています!
<現実/物語>
スターリン/ナポレオン(独裁したブタ)
トロツキー/スノーボール(追放されたブタ)
第一次五カ年計画/農場の風車建設
独ソ不可侵条約の締結/人間とブタの材木売買の取引
独ソ不可侵条約の破棄/風車のたたかい
テヘラン会談/最後の人間との会合
てな感じで風刺的な物語になっています。
さすがにここまでの革命じゃないけど、日本の政治も政権交代を果たした今、どんな政治になるのか?結局今まで通りになってしまうのか?それとも変化していくのか?
その難しさを伝えている本だけになかなか先が思いやられますが、僕たち(=ブタ以外の動物)にもやれることや気づくことはあるかもね!
しかし凄い作品でした!!!
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文体がですます調であえてのひらがな表記が効いているため、角川のよりも「おとぎ話」っぽさが際立っていてオーウェルの狙いがうまく出ていたようにおもいます。より一層の恐怖感を素知らぬふりで味わうにはこちらの方がおすすめかなー。最初に山田詠美さんの風葬の教室を読んだ時のような感覚が味わえます。アニメ化にも適している感じ(しつこい?)。ただしキーワードのカギカッコくくりの是非についてはちょっと悩ましい。
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権力を握るとぶたは皆、恥知らずになるのでしょうかね。
恐ろしい大人のおとぎばなし。
これは忘れてはいけない物語だ。
でも自分は実はひつじなのかもしれない。
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学生の時、英語の講義で原文で読まされました。翻訳するだけの講義だったけども、英語が苦手だったので苦労しましたが、この本の内容は面白かったです。日本語で読むことが出来るありがたさを実感しながら、物語を楽しむことができました。
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1984で有名なジョージ・オーウェルの寓話。寓話だけども、スターリン・トロツキー・レーニンなどのロシア(ソビエト)をモデルとした、風刺の聞いたもの。時代が違うけど日本近隣の国もこんな感じなのだろうと思いつつ読んだ。設定は違うが、1984の動物版といったところかな。
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寓話という形にはあまりに分かりやすく言わんとしていることが分かり、これだけ読みやすい政治的な物語はなかなか無いだろう。1984が有名だが、こちらも傑作です。
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1994年に引き続き、ジョージ・オーウェルの名作を読んでみました。内容はずばり共産主義への強烈な風刺で、1994年もそうでしたが、この作者は本当に共産主義に対して脅威を感じていたのが肌で感じ取れる内容です。実際にこの時代は現実の脅威として存在していたのですから、当然なのかもしれません。動物の共同体を通したおとぎ話ということですが、各動物のキャラクターがそのまま人間社会の個性と社会階層を表しており、最後に君臨するブタの描画は人間の本性を具現化していて、読み終わってため息が出てしまいました。常に人間というのは社会性のある生き物であると同時に、社会を歪めてしまう存在なのだと思わざるを得ません。
それにしても自分が生きていた少し前までソ連が存在していた訳ですし、今も複数の共産国家が生き残っている世界の現実を考えると、いたたまれなくなるのは私だけではないでしょう。自分がいきている間にどれだけの共産国家が残っていることか。。。
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25冊目。『1984年』の土台となったと言われている小説。人間(荘園農場主)を追い出して動物たちの平等なコミュニティを作ろうとする試みが、結局支配者を変えた荘園制に帰着するという皮肉を描いた。
人間にかわる新たな支配者をブタが担う点をはじめ、オーウェルの共産主義の末路に対する特段批判的な立場が見てとれる。『1984年』の読み物としての完成度の高さと比較するとやや物足りない感もあるが、オーウェルの思想をよりストレートに伝える作品と言えるだろう。
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わかりやすい、易しい言葉で描かれた“ディストピアのおとぎばなし”。
何度も本を閉じるくらいにはもやもやしまくった。
おとぎばなしと銘打って、優しい外見を装っている分1984年よりある意味辛辣。
希望を持って自分達の力で作ろうとした場所は、こんな世界じゃなかったと、クローヴァーと一緒に嘆きたい。
それでも、読まなきゃ良かったとは思わない。そんな一冊。
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文学のレポート用に読みました。寓話調の語り口がいい感じに怖さを引き立てます。とりあえず子供向きではないなー以下レポート一部『動物農場〜おとぎばなし〜』は、ジョージ・オーウェルによって書かれ1945年に出版された寓話小説である。寓話とは、視点はいわゆる神視点、全知全能の第3者の視点が語り手となっており、動物などを擬人化し、教訓や風刺を含ませていくたとえ話のことで、これはソヴィエト神話、これはソ連の政治体制について人々が抱いていた間違った思い込みのことで、これとスターリン体制をはっきりと暴いている。−中略−さて内容についてであるが、まず登場動物は以下のようにソヴィエトを形作る人物や組織に置き換えられる。?メージャーじいさん…レーニン?ナポレオン…スターリン?スノーボール…トロツスキー?スクィーラー…スターリンの片腕モロトフ?9頭の犬…秘密警察GPU?ボクサー…赤軍将校または労働英雄?ヒツジたち…共産党の青年組織コムソモール?ジョーンズ氏…ロシア帝国時代の貴族や地主、資本家そして白軍?ピルキントン氏…イギリス?フレデリック氏…ナチス・ドイツ私にはソヴィエトについての知識があまりなく、資料からも探せなかったがウィンパー氏にもモデルがいるのではと考える。さらに、スノーボールの追放はトロツスキーの亡命、風車建設は産業5カ年計画、フレデリック氏との取引は独ソ不可侵条約、裏切りの告白と処刑はトロツスキスト弾圧、最後のピルキントン氏たちとナポレオンのトランプゲームはチャーチル、ローズベルト、スターリン3者によるテヘラン会議といった具合に出来事と史実も重なっている。ここで注意しておくが、その順番は史実通りではない。これは物語のバランスをとるためであるとオーウェルは残している。 『動物主義』の七戒は、平等をうたった完璧なものとして発表されているが、途中どんどん書き加えられて抜け穴だらけのものとなっていく。これは書かれている言語が英語だからこそ説得力があると思われる。―…四、動物はベッドで寝るべからず。五、動物は酒を飲むべからず。…―の部分は後にそれぞれ「シーツを用いては」、「過度には」と書き加えられるが、この細部を主文の後にもってくる英語だからこそ自然に行えるものであり、日本語にすると不自然さが残ってしまう。この書き方はそこが強調されるように用いるものであるため、あくまで最初から、疑問をはさむ余地なくあった文章とするには無理が生じてしまうのだ。これは寓話形式で語られていることも手伝って、日本語訳の形の限界である。この形を日本語以上に上手く表せない言語もあったのではないだろうか。 最後のエンディングであるが、これは出版時期がテヘラン会議と重なっていたためソ連と西欧諸国の和解を示していると考える読者も多かったらしい。しかしー…十二の声が怒って叫んでいましたー(中略)=でも、もうむりです。どっちがどっちだか、見分けがつかなくなっていたのです。おしまい…―と、明らかに不穏な空気を漂わせている点、また寓話にありがちな「幸せに暮らしました」などという文章がない点で、これはハッピーエンドではない。つまりある意味ではオーウェル自身でも述べているように、この小説は世界情勢を予��していたのかもしれない。
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情報を操作し、大衆を操ることを、プロパガンダと言う。ブタと人間は一緒。大衆は流される。ひつじは大衆...
考えさせられた。
わたしは冒頭に登場するモリーに似ている。(笑)ひつじにも似ている(笑)。色の付いたリボンや角砂糖が好きで、一致団結しなくてはならない時は自分だけこそこそと逃げる。
「よつあし、いい~!ふたつあし、だめ~!」
でもこれからはひつじには少なくともならないように気をつけて行こう。