提供:株式会社出版デジタル機構
解説:鷹野凌
こんにちは、ブクログ編集部です。
発売前の本の“ゲラ”を読める夢のようなサービスがスタートしたことをご存じでしょうか? そのサービスは「NetGalley(ネットギャリー)」というサービスです。
実はブクログユーザーも使っている話題のサービスですが、今回は電子書籍市場に詳しいフリーライターの鷹野凌さんに、「NetGalley」の注目ポイントや使い方についてお聞きしました。
こんにちは、フリーライターの鷹野凌です。
読者がレビューを投稿できるサービスは「ブクログ」を始めいろいろありますが、まさか発売前の本を読んでレビューを投稿できるサービスが登場するなんて! 初めて「NetGalley」の存在を知ったときは、ほんとうに驚きました。
試し刷りの「ゲラ(galleys)」データが読める
「NetGalley」はアメリカ生まれのサービスです。アメリカでは300社以上の出版社が参加し、年間2万点の本が掲載され、月間5万件以上のレビューが投稿されています。デジタル技術を活用し、本の販売促進が図れる画期的なサービスとして、注目されています。
日本では、2017年10月に本格稼働が始まったばかり。本稿執筆時点で、朝日新聞出版、イースト・プレス、KADOKAWA、幻冬舎、講談社、光文社、実業之日本社、集英社、秀和システム、主婦の友社、小学館、竹書房、筑摩書房、ディスカヴァー・トゥエンティワン、トランスビュー、白泉社、PHP研究所、扶桑社、ブリッジ、マガジンハウス(50音順)が参加しています。
「NetGalley」が、「ブクログ」を始めとする一般的な本のレビュー投稿サイトと大きく異なるのは、本の発売前に内容が読める点。本の制作過程で校正のために使う試し刷りの「ゲラ(galleys)」データが会員に公開されるため、発売前に評価することが可能なのです。
従来は、本になる前のゲラが読めるのは著者自身や編集者など、本の制作に関わっている方々だけ。それが「NetGalley」の会員になれば、あなたもゲラを無料で読めます。「NetGalley」のサイトには「本の応援団にあなたも参加しませんか?」とありますが、もう1歩踏み込んで言うなら、これは「あなたも本の制作過程やプロモーションに携わることができる」サービスなのです。
リクエストが承認されるかどうかはあなた次第
「NetGalley」の会員登録は、18歳以上であれば誰でも可能です。ただし、会員になったからといって、どの本も無制限に読めるわけではありません。出版社に「この本が読みたい!」と「リクエスト」を送り、承認されると読めるようになるシステムなのです。
出版社は管理画面で、リクエストを送ってきた人のプロフィールやフィードバック率などをチェックし、承認するかどうかを決めます。例えば、自己紹介文がふざけていたり、ほとんどフィードバックしていなかったりすると、出版社に「ほんとにこの人、承認してもいいのかな……?」と疑問に思われてしまうかもしれません。
つまり、フィードバックは義務ではありませんが、あなたの評価に繋がります。なお、出版社が「この人にはぜひレビューを書いて欲しい」と思ったら、特別優待扱いにしてリクエストを即時承認するようなシステムもあります。いずれにしても、リクエストが承認されるかどうかは、あなた次第なのです。
だから、まずはプロフィールを整えておこう
初めて会員登録をするときには、会員タイプを〈書店関係者〉〈教育関係者〉〈図書館関係者〉〈メディア関係者〉〈レビュアー〉から選択することになります。多くの方は私と同じように、〈レビュアー〉を選ぶことになるでしょう。
無事に会員登録が終わったら、いきなりリクエストを送るのではなく、まずは自己紹介と好きなジャンルなど、プロフィールを整えておきましょう。〈レビュアー〉の場合は、レビュアーの種類を〈ブロガー〉〈一般レビュアー〉〈出版事業者〉〈評論家〉から選ぶ形になります。「どこで本を紹介していますか?」の欄には、「ブクログ」のユーザーページも記載してみてはいかがでしょうか?
自己紹介などを整えたら、読みたい本に「リクエスト」を送りましょう。すぐに承認される場合もあれば、出版社の状況次第では1週間ほどかかる場合もあるようです。承認を待つあいだに、読むための準備を整えておきましょう。ゲラは紙ではなくデータで閲覧する形なので、ちょっとした準備が必要となります。
まず、セキュリティ認証のために「Adobe ID」が必要なので、持っていない方は新規で取得する必要があります。登録は無料です。また、ゲラのデータを閲覧するための、アプリも用意しておきましょう。iPhone など iOS は「Bluefire Reader」が、Android は「Aldiko Book Reader」が、Windows / Mac は「Adobe Digital Editions」が推奨されています。いずれも無料です。インストールが終わったら、「Adobe ID」でログインしておきましょう。
EPUBならモバイル、PDFなら大画面で
リクエストが出版社に承認されると、「NetGalley」の「会員の本棚」メニューからゲラのデータがダウンロードできるようになります。以下は、iPhone の「Safari」ブラウザの画面です。
「プロテクトEPUB」や「プロテクトPDF」など、本によってファイル形式が異なりますが、前述のアプリであればどちらも対応しています。メニューに「プロテクトMOBI」がある場合は「Send-to-Kindle」を利用して「Kindle」へ送信することも可能です。
これは私の個人的な見解ですが、文字サイズが変更できる「プロテクトEPUB」や「プロテクトMOBI」は、モバイル端末でも快適に閲覧できます。「プロテクトPDF」の場合はレイアウトが固定されているため、画面サイズがある程度大きいタブレットや Windows / Mac での閲覧をオススメします。
フィードバックして本を応援しよう
読み終わったら、「NetGalley」の「会員の本棚」メニューからフィードバックをしましょう。フィードバック項目には、非公開のものと一般公開されるものがあります。非公開のものは、「この著者にコンタクトしてみたいですか(インタビュー、イベントなど)?」と「この作品をご自分、もしくは友人のために購入したいですか?」の Yes / No、作品の分類や検索に役立つキーワード・タグの提案、出版社に対するコメントです。
公開されるのは、レビュー文章、☆の数によるオススメ度。外部のレビューサイトに投稿した場合はその URL を登録することも可能なので、普段「ブクログ」にレビューを投稿している方はぜひ登録してみてください。「このカバーをどう思いますか?」の評価は、カウントだけ公開され誰が評価したかはわかりません。
また、投稿したレビューは Twitter や Facebook などの SNS へシェアして拡散すると、さらにその本を応援することができるでしょう。ユーザーは発売前の本が無料で読めて嬉しい。著者や出版社は本の宣伝になって嬉しい。これは、みんながハッピーになれる、素敵なサービスなのです。
さあ、あなたも「NetGalley」で、本の応援団になってみませんか?
今回、そんな「NetGalley」にアップされた注目作品をご紹介したいと思います。
その他の掲載作品はこちら。
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