リモートワークの勘所と限界について1年くらいの感想、組織にとっての選択肢作りの話
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1年くらいリモートワークを続けてみた感想
まず当然ながら「リモートワークは生産性が高い!これこそ未来のワークスタイル!」のような感想はありません。 生産性やコミュニケーションに関連するメリット、デメリットをうまく相殺しきれれば、生活の自由度だけ向上してハッピー、と考えています。
今は自宅かレンタルオフィスのいずれかを作業場として開発などを行いつつ、本社がある渋谷には1泊2日の出張を月2回するようなペースで仕事をしています。基本は Slack でテキストチャットによるコミュニケーションをメインとしつつ、必要があれば MTG に Hangout でビデオチャットで参加します。
生産性は大して上がらない
期待していた生産性は、それほど向上することはありませんでした。
東京にさえいなければ気軽に MTG に呼び出されることもありませんし、開発に充てることが可能な時間は若干増えています。通勤時間が長いひとはもっと恩恵があったかもしれませんが、私の通勤時間は家から10分ちょいだったので、そこまで恩恵を得られませんでした。生産性が上がる環境をどこにでも自分で作れる人と、やっぱりオフィスが一番という人も分かれるので、その辺もケースバイケースでしょう。
生活の自由度は上がる
生活の自由度はすごく上がります。ものすごーく上がります。
家庭環境的なところから娯楽的なところまで含めて、リモートワークを代表するメリットのひとつです。就業規約的に指定時間分を働く契約でなければオフィスワークよりもリモートワークのほうが、その日の必要量を生産し終わったあとの時間を自由にしやすい(仕事モードをさっさと終わらせやすい)という利点も働くと思います。いわゆる定時がある職場でも、リモートなら人の目を気にせず定時あがりしやすくなります。
自分的なリモートワークの勘所と限界
現状、自分のリモートワークが成功しているかどうかで言えば、まあ及第点にはなっているように思います。今後の課題としては、直近で自分がやっている仕事とリモートワークの相性がそんなに良くないという齟齬を解消していく必要があります。
当初、開発に専念していたころは良かったのですが、狭い範囲とはいえマネジメント、体制強化の中途採用、理想に向けた技術組織の推進 etc の仕事が増えると出張の頻度が上がってしまいました。リモートワークでその類の仕事を進める自信を持てないのは、これから改善すべきポイントです。
リモートワークを始めたときに、東京勢にパスしたつもりの仕事が結局自分の手元に戻ってくる現象が多発しています。あと名古屋と渋谷って、日帰り可能な距離なんでつい出張で解決しちゃうところもあったり...。
勘所 - チャットでの存在感を示していく
勘所として挙げるならば下記の箇条書きになりました。
- テキストベースの情報共有を丁寧にやること
- チャットで存在感を醸し出すこと
- 仕事スイッチの入れ方を形式化すること
- 自宅で働くならばちゃんと投資をすること
- 出張時などの対面機会を大事に使うこと
- オフィスワーカーの同期的コミュニケーションにも付き合うこと
改めて眺めるとリモートワーカーの心得として良く聞く話がばかりですが、個人的にはチャットでの存在感は最重要と考えています。存在が希薄になると悪気も無く蔑ろにされるので、全員がリモートワークを前提にしていないスタイルであれば必須といっても過言ではありません。まあ、それでも情報共有というものが苦手な人類も存在するので、そういうのは個別につつきましょう。
開発や業務におけるチャットを使った情報共有の民度、潜伏あるいは揮発してしまう情報のリスクについて ::ハブろぐで述べたような点については、誘導したり何だったりは多少ありますが、元々いつかリモートする気でチャットを主戦場としていたの為、在籍チームではさほど大きな変化は感じませんでした。 もちろんチームの各位は色々気遣ってくれていたと思いますし、やりづらいところも互いにあったでしょうけど、オフィスワークでも生じうる程度の連絡の齟齬であるとか、その程度だったように思います。
限界 - ビデオチャットのIT技術に期待するしかない
限界というか、遠隔地コミュニケーションに関する IT 技術の現状という趣です。
- オフィス側とのビデオチャットで向こう側のテンポについていけない(タイムラグが共有されていない)
- オフィス側とのビデオチャットで多人数の集音がうまくいかない(MTG相手が複数いるので、全員に対して設備を充実させるのは困難)
- ビデオチャットのストレスを強いれない相手(人事的な面談や来客)との対話
- オフィスでフェイストゥフェイスで盛り上がっているところには、もちろん入れない
むしろ限界というには大げさで、ビデオチャットに関連する設備の不足と、対面しなければ難しいケースもある、という話です。渋谷、秋葉原、大阪、福岡といった拠点間を結ぶテレビ会議システムはありますが、一介のリモートワーカーはただの Hangout なのも現実のひとつ。
逆に、このようなビデオチャットに類する環境が、タイムラグや集音の違和感も何もない世界になれば出張する必要はグンと減るはずです。このへんは10年くらいかけたら大分シームレスなコミュニケーションが可能な環境になるのではないでしょうか。
組織がリモートワークという選択肢を作るということ
リモートワークの普及に対して前向きな思いはある反面、全社的にリモートワークという働き方にシフトすることに少なからずハードルがあることも認める立場にいます。一方で、セミナーレポ:「働き方」の選択肢をつくる – リモートワークの今とこれから – the Collaboration Energizer でレポートにあがっているリクルート社とIBM社におけるリモートワークの試みは、いわゆる大企業における事例として見習える事例です。
従業員のリモートワーク導入に対するモチベーションが無邪気すぎるのは良くありません。サラリーをもらっている側としては、単なる制度として恩恵を享受したいところですが、前述したとおりリモートワークには恩恵と同時に相応の制約もつきまといます。諸問題を解決して全員が公平にリモートワークできるようにするためには、全体の課題として取り組まなければなりません。
個人の多様性を認めつつ、組織で取り組む動機付け
個人の「オフィスから解放されたい」という利己的な欲求を認めつつ、「組織にとっても必要なもの」として捉えて、それを従業員に向けて打ち出して理解を浸透させ、一丸となって取り組む意義を見いださなければリモートワークという選択肢は成り立たないと考えています。
組織は何のためにリモートワークを認めるのか? 働き方について課題感があって「オフィスに依存しないメリット」が組織にとっても明白であればリモートワークという選択肢の導入が現実味を帯びてきます。
リモートワークは平等に与えられた選択肢であるべき
オフィスワーカーもリモートワーカーと共に働く心構えが必要です。組織の全員がそのどちらにもなり得ることを自覚し、どちらも経験したことさえあれば、その心構えは十分に実現可能です。
全員が必ずしも完全なリモートワークにシフトする必要はありません。誰しもがライフステージの変化によって、リモートワークを必要とする瞬間は訪れます。そのときにリモートワークという選択肢を選べるということが重要であり、それを普段からカジュアルに行使することで全員がリモートワークとは何たるやを意識できるようになることこそが必要な体験になるのではないでしょうか。
オフィスに依存しないメリットは最後にやってくる
リモートワークとオフィスワークを行き来することで、組織やチームにとっての課題も明らかになってきます。はじめは皆が試行錯誤することになるとは思いますが、それによってリモートワークが働き方の選択肢として機能するようになれば、それは組織が新しい環境に順応できたと言えます。
洪水、大雪、災害、誰もがリモートワーカーになる可能性があります。オフィスに依存しないようにしておくメリットもあります。勤務地に依存しない採用が可能になるメリットもあります。
組織がリモートワークに順応できるようになれば、ようやっと組織にとっての「オフィスに依存しないというメリット」が享受できるようになります。導入の目的を明確に設定した上で、従業員のワークスタイルに多様性を認めるという、それなりのビジョンと段取りが必要な取り組みでしょう。
おわり
いつでもどこでも働けることはメリットですが、誰もがいつでもどこでも成果を出せるかは別問題です。組織、社会としては時間をかけてリモートワークを許容できるように移行していくことになるでしょう。十数年前なら一切考えられなかったことですが、IT技術の進歩と共にリモートワークの物理的な違和感は減っていきます。技術が進歩しても、人間側が旧態依然としていれば使いこなせないので、自分と身の回りの働き方は早めにアップデートしておくべきです。
とりあえずうちの会社におかれましては、自席に築城したがる族の力を削ぐためにフリーアドレス制を導入し、無駄に多い拠点間の移動を減らすためにビデオチャット用のブースでも配備したらいかがでしょうか。従業員を信頼するか否かとかクサいこと言わないから、まず合理的な所から始めましょうという提案。このへんの温度感を理解しているトップダウンかボトムアップがないと、建設的な話が進まないだろうなぁと思う次第です。
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— あほむ (@ahomu) June 17, 2016
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— あほむ (@ahomu) June 17, 2016
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