【専門家監修】愛着障害とは?医学的な診断名、愛着障害と発達障害との関連について

ライター:発達障害のキホン
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愛着障害とは、親など特定の養育者との愛着形成がうまくいかないことで現れる困難の総称です。愛着障害に関しては、現在、医学・心理学などでさまざまな定義や考え方があります。このコラムでは反応性アタッチメント障害(反応性アタッチメント症)、脱抑制型対人交流障害という医学的な診断に関する症状や発達障害との関連について紹介します。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
目次

愛着障害とは?

愛着障害とは、一般的に親など特定の養育者との愛着が形成されず、情緒や対人関係に困難が生じる状態を示しています。相手から極端に距離をとろうとする「反応性アタッチメント障害(反応性アタッチメント症)」と、誰に対しても距離感が近い「脱抑制型対人交流障害」の大きく2種類に分類されます。

愛着障害の医療的な定義と診断基準とは?

愛着障害の医学的定義は「反応性アタッチメント障害(反応性アタッチメント症)」と「脱抑制型対人交流障害」に分けられます。

「反応性アタッチメント障害(反応性アタッチメント症)」も「脱抑制型対人交流障害」も、5歳以前に発症するとされています。「反応性アタッチメント障害(反応性アタッチメント症)」は人に対して過度に警戒するという特徴をもち、「脱抑制型対人交流障害」は過度になれなれしいという特徴をもっています。

以下が診断基準です。
◆反応性アタッチメント障害(反応性アタッチメント症)
反応性アタッチメント障害(反応性アタッチメント症)は、心的外傷およびストレス因関連障害群に分類される障害で、つらいときも最小限しか甘えない、またはやさしさに反応しないといった様子が常に見られます。
また、他者に対して最小限しか反応がない、喜び、希望、満足といった陽性の感情が限られている、大人に対する脅威や不安を感じるような場面ではないにも関わらず、説明のつかない苛立たしさ、悲しみ、恐怖などを感じているといった3つの症状の中で2つ以上が当てはまります。
こうした症状の背景には、ネグレクト、養育者がたびたび変わる、養育者に対して子どもの人数の比率が高い施設などで育った、など安定した愛着が形成できない不十分な養育環境にいたという経験があります。
このような症状は5歳以前にあらわれます。
なお、診断にあたっては、自閉スペクトラム症の診断基準を満していないこと、生後9ヶ月以降であることが必要となります。

◆脱抑制型対人交流障害
脱抑制型対人交流障害は、心的外傷およびストレス因関連障害群に分類される障害です。見慣れない大人への接近と交流に伴うためらいのなさ、文化的・社会的な規範を逸脱していると判断できるほど過度になれなれしい言動やしがみつきなどの愛着行動や他者の注意をひく行動、不慣れな新奇の場面でも養育者の存在を確認するために振り返る様子が見られないこと、よく知らない大人に自ら進んでついていこうとすることのうち、2つ以上が子どもの行動様式として見受けられます。また、これらの行動が衝動的に見え、ADHDの症状のように思えることもありますが、そのような衝動性に限らず、大人への愛着行動を抑制することが難しいという特徴があります。
これらの子どもの行動様式の背景には、社会的ネグレクト、養育者の頻繁な交代、養育者が著しく不足した養育環境のいずれかが認められます。そして、それらの養育環境は上述の愛着に関する行動様式の原因とみなすことができます。なお、この診断がなされる子どもは、少なくとも9か月の発達年齢であるとされています。

定義

世界保健機関(WHO)が定める『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)(※)という診断分類ではこのように定義づけられています。
「反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)」
5歳未満に始まり,子供の対人関係におけるパターンの持続的な異常によって特徴づけられ,情緒的混乱を伴い,それは環境の変化に応じて変わる(たとえば, 過度の警戒と恐怖,仲間との対人相互反応の乏しさ,及び相手に対する攻撃,精 神的苦痛,及びある例では成長の停止)。 この症候群は,重篤な養育放棄,虐待,重い養育過誤などの直接の結果として生じると見られる。


「脱抑制型愛着障害」
異常な社会的機能の特殊なパターンで,5歳未満に生じ,環境的状況に著しい変化 が生じても,持続する傾向が見られる。 たとえばびまん性の非選択的に向けられる愛着行動,注意を惹こうとする,しかも誰かれかまわぬ親しげな行動,仲間との節制の乏しい相互作用及び状況に応じ情緒的あるいは行動的障害が伴うこともある。

引用:厚生労働省|疾病、傷害及び死因の統計分類|ICD-10(2013年版)準拠 内容例示表|第5章 精神及び行動の障害(F00-F99)
出典:https://www.mhlw.go.jp/toukei/sippei/dl/naiyou05.pdf
※ICD-10について:2019年5月、世界保健機関(WHO)の総会で、国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)が承認されました。日本国内ではこれから、日本語訳や審議、周知などを経て数年以内に施行される見込みです。
参考:ICD-11 | 世界保健機関(WHO)
https://icd.who.int/en/

具体的な行動特徴は?

子どもに反応性アタッチメント障害(反応性アタッチメント症)や脱抑制型対人交流障害がある場合の具体例を見てみましょう。

◇反応性アタッチメント障害(反応性アタッチメント症)
「反応性アタッチメント障害(反応性アタッチメント症)」がある場合、相手が養育者であっても極端に距離をとろうとするために以下のような様子が見られることがあります。

・養育者へ安心や慰めを求めるために抱きついたり、泣きついたりすることがほとんどない
・笑顔が見られず、無表情なことが多い
・他の子どもに興味を示さない、交流しようとしない など

◇脱抑制型対人交流障害
「脱抑制型対人交流障害」がある場合、養育者に限らず誰に対しても距離感が近かったり、自分に目を向けてほしいがために不注意や乱暴な行為に走るなど、困りごとが生じることがあります。

・ほとんど知らない人に対してもなんのためらいもなく近づく
・知らない大人に抱きつき、慰めを求める
・落ち着きがなく、乱暴 など

◇どちらにも見られること
また反応性アタッチメント障害(反応性アタッチメント症)、脱抑制型対人交流障害のどちらの場合でも強情・意地っ張り・わがまま、と捉えられるような態度が目立ちます。「反応性アタッチメント障害(反応性アタッチメント症)」も「脱抑制型愛着障害」も子どもと養育者との愛着形成が不安定であることによって起こるため、子どもは養育者を頼りにし、自然に甘えることが苦手です。

また、子どもが特定の養育者を安全基地と見なしていないために、子どもの視線や行動に養育者の方が違和感を覚えることもあります。

・養育者との別離・再会のときに、養育者に対して視線をそらしながら近づく
・抱っこされている間、全然関係ない方向を見つめている
・見知らぬ場面において、特定の養育者を頼りに(安全基地に)する素振りが見られない など

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