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将来の世代に豊かさや希望を渡すことが大事! 有権者と政治家のコミュニケーションを変える「日本政治.com」

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いよいよ明日の総選挙投開票がせまっていますが、みなさんは今どのような心持ちでしょうか。「政党が乱立しているけれど、実はあんまり違いが分かっていない。」「原発、増税、外交、TPP、社会保障などとにかく争点が複雑化しすぎてる!」「恥ずかしくて聞けないけど、そもそもTPPってなにが悪いんだろう?」「後期高齢者って何歳から?」などさまざまな声が聞こえてきそうです。

そんな中、とあるウェブサイトが注目を集めています。12月に入ってから10日間で、PV数が100万を超えたという「日本政治.com」です。

今回は、選挙を目前にした有権者を惹きつけるそのアイデアとビジョンを知るべく、代表の鈴木邦和氏にインタビューをしました。キーワードは「仙台のパチンコ屋」と「有権者と政治家のコミュニケーション構造」、そして「平成世代がつくる希望」という3つのフレーズでした。

日本政治.comとは

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「日本政治.com」代表の鈴木邦和氏

Q. はじめに 「日本政治.com」がどのようなウェブサイトなのか簡単に説明していただけますか?

鈴木 「日本政治.com」は、私が9月に創業した日本政治経済報道株式会社の運営する「政治メディアサイト」です。 政治の批評記事やインタビュー記事の発信といくつかのサービス運営を行なっています。その中で現在ご好評いただいているのが、「投票マッチング」というサービスです。

これは利用者の方に簡単な数十の設問に答えていただき、その結果をもとにそれぞれのユーザーの志向性が、どの政党の政策方針と近いのか簡易診断するものです。それ以外にも、まだ実験段階ですが、Facebookの「いいね!」で気軽に政策を支持できるサービス「web署名」などを公開しています。

Q 「日本政治.com」のユニークなポイントはどこでしょうか?

鈴木 記事はいわゆるニュースサイトと違い、速報性ではなく「批評性」を重視しています。それでいて、専門用語や政策背景はきちんとかみ砕き、内容のわかりやすさには細心の注意を払っています。ほかにも、政党ごとのイデオロギーを端的に2軸で示す「政党マトリクス」や、 1500名の国会議員候補者の主なデータを掲載した議員候補者辞典も当サイト内で掲載中です。「有権者の関心を誘発する」ようなコンテンツと、圧倒的な基礎データ量が特色だといえます。

創業のきっかけ

Q なぜこのようなサイトを作られたのでしょうか。

鈴木 私はいま東京大学の4年生なのですが、去年はUTAIDという東日本大震災のボランティア団体の代表として1年間、東北の復興に関わっていました。私なりに真剣に復興を考え工夫をし、この1年半で2000人を派遣するかなり大規模な団体にまで成長しています。でも、ちょうど震災から1年たった今年の3月に仙台で一つショックなことを体験したんです。それがきっかけです。

Q その出来事とはなんでしょうか。

鈴木 仙台に、新しいパチンコ屋さんがぼこぼこ建っていたんです。いま東北の被災者の方は、厳しい生活をいまだに強いられている一方で、義援金や国の保障で、一部の方はお金に余裕ができてきています。でもそれは、働く場所もお店も固定の家もなければ、お金の使い道が自然となくなるからです。娯楽もないですから。そこにパチンコ屋さんが需要を見つけて、というわけです。

Q 自分たちのやっていたことが、無意味だと思ってしまったのでしょうか。

鈴木 決してそういうわけではありません。ガレキ撤去やドロのかきだしは本当に大事なことです。それにパチンコ屋さん=悪ではありませんし、パチンコ屋に行かれる被災者の方も全体から見ればごく一部です。その一部の方を責める気もありません。ただ、それでもやはり悲しさは感じました。私たちが1年間必死にボランティアをしてきたこととは別のどうしようもないところで、そういう状況が生まれてしまっていたことに対して。

Q その出来事から日本政治.comへとつながるプロセスを教えてください。

鈴木 パチンコ屋さんは一例で、東北の復興はまだまだ進んでいません。いまだにガレキ撤去が必要な地域もあります。そういう広範囲で複雑な課題にブチ当たって、つくづく行政のはたす役割の大きさに気づいたんです。そしてその行政に対して、私たち有権者はあまりにも無関心で責任を持たずにきてしまったんじゃないか、と思いました。そのとき課題を感じたのは行政自体にではなく、アクションをとろうとしない有権者に対してだったんです。そこには政治オンチだった自分も含まれています。

投票マッチングの真の狙い

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Q では有権者にアクションを促す=投票率を上げる、というねらいが投票マッチングにはあるのでしょうか?

鈴木 もちろんそれはあります。でもそれだけではなく、あのサービスを通じてユーザーの皆様に本当にやって頂きたいのは、ひとつひとつの争点について関心を持ってもらって、「こうすべきなのかな」ってあれこれ考えることなんです。

Q 関心を持ってもらうための工夫はなにかありますか?

鈴木 たとえば「後期高齢者医療制度~」と新聞に書いてあったら「後期高齢者って何歳からだっけ??」と思ってしまう若者が多いと思います。私もその1人でした。そういう人にとっては原発であろうとTPPであろうと、どの争点にも「?」がたくさん含まれています。だから気持ちが萎えて、考える気をなくしてしまう。それをふせいで少しでも関心を持ってもらうため、私たちの投票マッチングでは、争点と一緒にそれについての詳しい説明がすぐ画面上にすぐ表示できるようにしています。それが政治への関心の第一歩になるはずです。

Q 一人ひとりが前提知識を持ったうえで熟考して答えられるぶん、正確な結果が出そうですね。 一般的な抜きうちの電話調査などより濃いデータが得られそうですが、その一方で、ネット上では回答した個人情報への懸念も取り沙汰されると思います。そこについてはどうお考えですか?

鈴木 もちろん個人情報の扱いは厳重に行なっています。特定の個人の政治主義などは、いっさい外部に出ません。ただ、ここはあえてはっきり申し上げますが、マクロとしてのデータ、たとえば「◯◯地区の20代女性は、XX党や□□政策の支持傾向が強い」などは、しっかり統計をとっているので、それはマネタイズに使う予定です。

Q 会社としての収入源はそこというわけですね。ちなみに今後予算はどのように充てていくおつもりですか?

鈴木 いまは社員が自分1人で猫の手も借りたいくらいなので、積極的に人材拡充にあてていきたいとおもいます。安定したメディア運営の体制をつくることがいまは第一です。あとすべての選挙区で、候補者同士の討論会をネットで公開したいという野望もあります。そういった野望やアイディアは他にもあるので、どんどん挑戦したいですね。

Q 面白そうですね!ところで念のためお聞きしますが、特定の政治家や政党に、その情報が融通されるということはありますか。

鈴木 もちろんありません(笑) 。情報は完全にビジネスライクに取り扱います。私たちは政策ベースでだれかを支持する論調で記事を書くことはありますが、根本的なモラル上、どこかの政治団体の紐付きになるようなことは、メディアとして絶対にあってはいけないことです。私たちは政治というデリケートな分野を扱うからこそ、透明性を持ってきちっと姿勢を示さないといけない。マネタイズは普通いちばん曖昧な部分です。しかし、だからこそ、今ここであえてはっきりと申し上げました。

有権者と政治家の正しいコミュニケーションとは

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Q 「メディアとしてのきちっと姿勢を示す」とさきほどおっしゃりましたが、署名のプラットフォームを政治メディアが提供するというのはかなり異例なことですよね。

鈴木 有権者と政治家のコミュニケーションを変えたいんです。たとえば、今回の選挙はTPPや原発など5つくらい大きな争点がありますが、有権者がするのはその大ざっぱな争点を、限られた情報で大ざっぱに考えることだけです。そして、選挙が終われば、また無関心に戻ってしまう。でもそれは、有権者の意識の問題ではなくて、「コミュニケーション構造の問題」なんです。

Q ネット上ではよくマスメディアが悪者にされていますが、そういうことでしょうか?

鈴木 「誰それが悪い」という問題ではありません。マスメディアにしても、かれらの速報性や扱うデータの大きさ、情報処理能力は私たちにも誰にもマネができません。だからかれらがその役割を維持することには意味があります。愚痴り半分の指摘だけでは、かれらを含めた「構造」全体の悪い部分を変えることはできないんです。

Q ではその構造をアクションで変えることが、日本政治.comの使命なのでしょうか。

鈴木 「有権者と政治家のコミュニケーションを変える」を言い換えると、そういうことになります。そういう意味では、投票マッチングよりweb署名のほうがメインコンテンツだと言うこともできます。いまは選挙前のお祭りムードなので、マスメディアもネットも、私たちの投票マッチングも賑わっています。

しかし選挙が終わったあとの数年間、またつぎの選挙まで、いかに有権者の方々に政治への関心を持ち続けてもらうかということは、私たちの大切なミッションのひとつです。それが上手くいくかどうかは、私たちのメディアとしての記事運営や、ウェブ署名のワーク具合にかかってきます。

Q いまサイトにあるweb署名は実験的でまだイメージがつきにくいので、もう少し説明をお願いします。

鈴木 私たちはいわゆる「署名」よりあえて緩いかたちをとっています。Facebookの「いいね!」だけで賛同表明できる形式です。そこには、ネット上の特性を活かした、実効性を優先したいという想いがあります。たとえば100万の「いいね!」を集めた政策や提言があれば、たとえ法的な効力がなくてもれっきとした説得力と社会的影響力を伴います。先ほど構造的な問題を有権者視点でお話しましたが、それは政治家にとっても困難な課題には変わりがないんです。

ネット選挙運動規制などが代表例ですが、いま政治家は、ポスターや選挙カーなど限られた武器しか使えません。自分の人間性や実績をアピールするツールが、本当に限られてしまっています。「有権者の声がとどかない」という定型句がありますが、実は「政治家の声もとどいていない」。それは有権者と政治家ともに、構造的な問題にしばられているからなんです。

Q そういわれると、現状に悪循環があるような気がします。

鈴木 そうです。現状はミスコミュニケーションの負の連鎖とも言えます。そこを変えたいんです。日本政治.com では、まずはじめに私たちの記事や投票マッチングで関心と基礎知識をユーザーの方に蓄えてもらい、その後、web署名などに参加していただく。そこに政治家が注目して、例えば署名をもとに法案化したり、もしくはTwitterやサイト内のインタビューなどで、法案化出来ない理由や議論の進捗状況を語ってもらう。これはPDCAサイクルとして当たり前の構図です。でも政治の世界だけ、それがいま出来ていない。私は、日本政治.comで、そういう正しいコミュニケーションの土台を作りたいんです。

平成世代の役割

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Q 最後に、意気込みや今後の展開についてお聞かせください。

鈴木 私は平成元年生まれで、生まれてから一度も「日本がよくなった」という話を聞いたことがありません。それはすごい悲しいことです。でも客観的に見れば、いまの日本ほど便利で豊かな国は、歴史的にも世界的にもないんです。この豊かさを享受している私たちの世代は、戦後の焼け野原から上の世代の人達が希望を持って本当にがんばったその凄さに、感謝しなきゃいけない。

そしてそれを踏まえて、今度は私たち世代が希望をつくる順番だと思います。私たちがちゃんと課題に対してアクションをとって、将来の世代に豊かさや希望を渡していくことが、すごく大事です。いま自分でこんな事業をやっている1番の理由は、そこにあります。「みんなが考えて、ちゃんとこういうアクションをとれば社会は変わるんだ」と実感できるプラットフォームを、これから作っていきたいと思います。

明日の投票日を前に

インタビューを終えて、いま一度日本政治.comを見直すと、「既存の大きな構造や法律は急には変わらないんだから、できることからやろうよ」という鈴木氏のメッセージが、サイト全体から伝わってきます。インタビュー中にも何回か出てきた「自分たちがとるアクション」という言葉も、決して大げさなものではないのでしょう。

まずは面白半分でも、投票マッチングをしてみるのはいかがでしょうか。設問に答える中で「?」が見つかったら、儲けものです。画面上の説明を読んだり記事を読んだり、検索をかけていくうちに、いつの間にか1人の国民として真剣に考えているあなたがいるかもしれません。

その考えた結果を今度の衆議院選で、私たちはさっそく投票としてアクションに置きかえることができます。選挙が終わったあとも、日本政治.comにはweb署名というアクションの受け皿があります。

このように「政治」という大きく遠くに見える世界でも、私たちひとりひとりには必ずできることがあります。それを教えてくれるのが、日本政治.comというメディアなのです。

(Text:テントセン小川未来) 

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