もし10年前に憲法9条が改正されていたら、と想像してみよう
安倍首相は、自身の内閣での憲法改正ということを以前から言ってましたね。この夏の参院選では、年金が最も話題を呼んでいますが、国民投票法が強行採決によって成立したこともありますし、憲法についても念頭に置きながら投票先を考えています。
自衛隊を憲法の中に位置付け、集団的自衛権を行使できるようにする、という9条の改正がやはり一番大きな論点だというのは、賛成・反対問わず多くの人が同意されることと思います。日本にも諸外国と同じように軍隊を置いて国民の生命や財産を守るべきだ、国際的な紛争解決のために日本も武力による貢献をするべきだ、というのが賛成する人々の考えのようです。
9条の変更に賛成する人々は往々にして、反対派に向かって「理想も結構だが現実を考えるべきだ」というようなことを言います。しかし僕には、むしろ賛成派の人々の言うことのほうが抽象的で現実離れしているように思えます。軍事力を正当化し、集団的自衛権の行使を認めることで、日本は今よりも安全になるのでしょうか?この「今よりも」を具体的に論じる人が賛成派に少ないように思います。今、日本はどの程度危険で、9条の改正によって比較としてどのくらい安全になるのか、専門家でもなければ大抵の人はあまり考えていないように思います。
そこで、想像しやすいように例を考えました。
もしも10年前に憲法9条が改正されていたら、どうなっていたでしょう。
1997年の段階で改正され、自衛軍が創設され、集団的自衛権の行使が認められていたら。歴史に「もし」は禁物とはいいますが、抽象的な未来よりは少しは想像力が働きやすいのではないでしょうか。
1997年以降というと、2001年にはアメリカで同時多発テロがあり、直後にはアフガニスタン侵攻、2003年からはイラク戦争が始まりました。もし日本に自衛軍があり、集団的自衛権が行使できていたなら、何が起きていたでしょうか?
程度の差こそあれ、今よりもっと深くこれらの事態にコミットしていたであろうことは、間違いないのではないでしょうか。アフガニスタンやイラクでの戦闘に「自衛軍」も直接的に参加したかもしれません。というか、その可能性はかなりあるように僕には思えます。戦死者だって出たかもしれない。
もしそうなっていたら、その架空の「9条が改正された日本」は、いま僕達が生きている日本より安全でしょうか。僕はかなり怪しいと思います。そうなっていたら、イギリスのように、もっと具体的にテロの標的になっていたかもしれないと思います。
もちろん、もっと違った考えの方もいるでしょう。改憲に賛成の人などは、全然違う想像をするかもしれませんね。でもいずれにしろ、「もし10年前に9条が改正されていたら」という仮定は、具体的な問題として憲法を考える想像力の助けにはなるんじゃないかな、と思います。