正月から『若おかみは小学生!』を観て精神崩壊

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ありがちな話ってので、悪の大魔王とか、不幸な身の上の悪鬼羅刹だとか、心を持たぬ殺戮コンピュータなんかに、正義の味方が力や技では勝てなくて、それでも、なんか愛とか慈愛とか、優しさに包んだりして、「わ、私にもまだ心というものが……」とかいって浄化されて倒されたりするじゃん。まさにこれなんよ、わかる? わからんか? おれが悪の大魔王で『若おかみは小学生!』は光や、そう言いたいのよ。べつにおれが「くさったしたい」で、『若おかみは小学生!』がニフラムでもええよ、なんでもええよ。劇場ではもう、クライマックスのところで涙に涙を重ね、このままシネマ・ジャック&ベティの外に放り出されたらどうしよう、がんばれおれの涙腺とか思ってたんだけど、いや、それでも、外に出て寒風に当てられたら、今度はもう「ギギギ……解析フノウ……」みたいになって、おれの精神に崩壊の予兆が訪れたんよ。感情とかそれよりも別のところにある、脳の機能が作り出す精神、そういうところに何らかのウィルスが入り込んだ感じなんよ。異常な緊張感、歯の食いしばり、「あ、これ、双極性障害の悪いやつじゃん」ってところに症状が出てきたのよ。それ、鎮めるために、古本屋とか入って、適当に立ち読みとかしてみても、これがもうまったく頭に入ってこないし、何も買う気が起きない。すごくやばい感じって思って、そんで、なんとかゆっくり自転車漕いで帰宅したんだよ。人間らしい心を失って久しい黄金頭さんは、すっかりこの映画の光に当てられて、どこかぶっ壊れてしまったらしいんだよ。悲惨な話だよ。いや、この映画のすべてが光というわけではないのだよ。暗い陰があるのだよ、そこがきっついのだよ。しかし、主人公のおっこ、これはもう演技が実に見事というか、演技以上のはまり具合だったんだけど、まあそれはそうとして、おっこがやけに気丈じゃん、平気そうじゃん、そこが逆に怖くてならんのよ。時限爆弾よ。そのうえで、話が進んでいくのよ。常に、その陰というものを意識しつつ、生と死の境、現と幻の境をいくのよ。とはいえ、そんなに暗くないのよ。コミカルで楽しいやり取りも何度も出てくるし、それが決して上でもなく抑制が効いていて、それゆえに、そこんところで、「おっこ、できすぎなんじゃない?」と思わせもするんだけど、そこがクライマックスへの用意よ、仕掛けよ、そこんところにぶっ込んでくるんだから、まあもう、これは降参なのよ。笠原和夫、っていきなり『仁義なき戦い』の脚本家の名前出すけどよ、話の「コロガリ」は見事だし、主人公の「カセ」、すなわち宿命は冒頭で描かれるように強烈だし、ピンフリの「カタキ」もいい、「ヤマ」はおっこがすべてを乗り越えよう、受け入れようという強さがあって、「オチ」を冒頭の神楽に持ってくるところ、そして、作品全部、おっこの全部を含んでいて、なにかを失いつつも、現実という「オタカラ」を手に入れて、この上なくスカッと終わる。マジ、この設定、構成、鬼だし、おれの精神に乱調をもたらすにふさわしい。そして、それを支えるのが実にきめ細やかなアニメーションいうものであって、もうおれは白旗をあげるしかないんよ。そして、やっぱりこれを観てきた先人たちのように、「原作の対象年齢に惑わされないように」、「タイトルに惑わされないように」、「絵柄に惑わされないように」と言うしかないんよ。ぜひ、劇場で観ておくれよ。ジャック&ベティならまだ数日やってるよ。だから、なあ。ああ、ほんと。

 

 

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