家族の形や女性の活躍、少子化問題や憲法改正など、様々なテーマにもつながる「選択的夫婦別姓」の是非について、インタビュー形式で、さまざまな立ち位置の方の声を紹介する当連載。
3回目となる今回は、自民党・衆議院議員の長尾敬(たかし)さんです。前内閣府大臣政務官で「日本の尊厳と国益を護る会」の副代表を務め、保守派の論客として知られる長尾氏は、夫婦別姓についてどう捉えているのか?お聞きしました。
選挙ドットコム編集部:選択的夫婦別姓導入について反対のお立場ということですが、まずはその理由についてお聞かせください。
長尾敬議員:理由はいろいろとあるけど、まずは子どもにとって、お父さんとお母さんの苗字は同じほうが良いということです。それが、これまで日本を形作ってきた家族制度です。
こうした家族を中心とした日本の社会制度を護る考え方に共感する方は多く、十数年前までは、圧倒的に夫婦別姓の導入には慎重な方が多かっですが、時代がだんだん変わってきて、「選択的」なら認めても良いのではないかという流れになってきましたね。もちろん違う意見にも耳を傾けることも大事だと考えています。
選コム:子どもから見て両親の苗字が同じほうが良いのではというお話ですが、両親の苗字が違っても家族仲良く、すくすくと育っているお子さんもいます。
長尾議員:もちろん、ご家庭の事情でご両親の苗字が違ってもすくすく育っているお子さんもいます。それぞれの個別のケースを問題視するつもりはありません。
ただ、社会全体として見たときに、これまで「氏」が家族や社会を支える一つのタガになっていたのではないかと思います。今、夫婦別姓が選択できないことで起きている問題は、その制度をなくさないと解決できない問題なのか?というのは議論すべきところだと思います。
選コム: そうですね、そのタガが外れてしまうと、全体の制度が混乱するかもしれないという心配は理解できます。
長尾議員:「サザエさん」のような三世代同居の家族の形は珍しくなってきて、家族の形をめぐる時代の変化はあり、議論が出てくるのは理解できます。夫婦で違う姓を認めてもらいたい、というのは一つの流れだとは思います。
選コム:夫婦別姓の議論は、「別姓賛成派は家族破壊運動だ」というレッテル貼りで具体的な議論が進まないという問題がありますね。
長尾議員:そう、お互いレッテルを貼りあっているんですよね。賛成派も反対派も、お互い遠いところで陰謀論のようなレッテルを貼りあって進まない。もう10年以上そんな状態ですね。だから具体的な議論をすればいいと思いますよ。
でも、例えば国民全員に「女性天皇・女系天皇を認めるか?」というアンケートを取るとして、その説明をしたうえで聞く場合と、説明せず聞く場合、結果は変わってきますね。その中でも、「賛成」「反対」と表明する人はごく少数。ほとんどは全く関心がない、知らない。
夫婦別姓もそうで、ほとんどの人は全く関心がないか、問題を知らない。またはどっちでもいい。そろそろ前提の「説明」部分を共有して、みんなを巻き込んだ議論をして、結論を出したほうがいいんじゃないかと思う。
選コム:保守系の議員さんの中では、議論をすること自体がタブー視されていると聞いていたので、長尾さんがそうおっしゃるのは意外な気がします(笑)
長尾議員:そうですか(笑)LGBTsの人たちが、ここ(長尾議員の衆議院事務所)に来て話をすることもありますよ。少数派と言われる人たち、困っている人たちの声を聞きたいと思っています。
LGBTsの人たちの中には、性的マイノリティの議論については「自分たちは自分たちで完結している。幸せに暮らしているので、巻き込まないでほしい」という声もあります。賛成派側も反対派側も、性的マイノリティ問題を取り上げて政治利用しているのではと話す人もいます。
でも仮に、選択的夫婦別姓が導入されたとしても、実際に利用する人は少ないのではないかと思う。高度プロフェッショナル制度にしても、入管法の改正にしてもそう。入管法の改正で認められるようになった海外からの技能実習生なんて、実際は定員の1割くらいですよ。
選コム:事実婚でいいんだという人と、結婚制度自体を廃止してくれという人と、本当にいろいろな立場のひとがいますね。先ほどお話のあったようにひとくくりにしてレッテル貼りするのではなく、困っている人の問題が、どうしたら解決するのか、個別の議論をする必要がありますね。
長尾議員:「別姓じゃないと結婚できない」と真剣に悩んでいる人たちの悩みをどう取り除くか、真剣に考えなきゃいけない。それは行政の運用で何とかなるならそれでもいいとも思います。
もっと言えば、家族の問題を法律で定める必要があるのか?と思います。日本人の生活を法律で縛るのはどうかなと思うんですよ。お父さんとお母さんを敬いなさいというのは、当たり前のことでしょ?
意外と言われるけど、国旗国歌法も反対だった。なにかを敬う心は、本来当たり前のことで、法律でがんじがらめにすることではないと思います。法律で縛らずに道徳や秩序で世の中が成り立つということが、個人の信条を尊重し、結果として多様性を認めることにもなると思います。
選コム:きょうはお忙しいところ、ありがとうございました。
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