おはようございます。
医師が転職や開業を失敗しないために
キャリアプランの重要性を唱え続ける
ジーネット株式会社の小野勝広です。
お金は大事です。
単に生活費を稼ぐだけではなく、
未来への蓄えだって必要ですし、
医師は医学書、学会費用など
かなり必要経費が掛かったりしますね。
またそもそもの生活水準が高いために
生活費だって結構掛かりますよね。
なかには自分なんて家族のATMだよ…と
自虐的に話す先生もいらっしゃいますが(笑)、
稼いでも使う暇がなく、
家族ばかりが使ってるなんて事もあるかもしれません。
貨幣は人類が発明したものの中で
最も素晴らしいものだと言われますけど、
お金に翻弄されて、人生を壊してしまう人もいます。
お金との付き合い方。
お金との距離感。
自分らしい価値観でもって
お金をしっかり哲学しておかないと
おかしなことになりかねませんから
充分に気を付けたいですね。
本日のブログのタイトルは、
【 足りない分はバイトをして稼ぐ…ができなくなる近未来? 】
といたしました。
<目次>
1.どうなるんだ?医師の働き方改革
・勤務時間の合算
・時間外が加算されてバイト医を雇うか?
2.常勤医師に手厚く報いて欲しい!
・当直明けには帰宅できる体制づくりを急ぐべき
・当直、オンコールに手当てを加算して給与アップを実現?
*まとめ
目次
1.どうなるんだ?医師の働き方改革
コロナですっかり忘れ去られた感がある
医師の働き方改革。
いえいえ、これはきっちり進めて欲しいですし、
コロナによって過重労働になっている医師もいますよね。
そもそも応召義務があり
時間外労働が出やすいですし、
夜間救急や当直、オンコールなど
構造的に過重労働になりやすい職業でもあります。
労働基準法が合致しにくい部分も多く、
この働き方改革でしっかりと適正化して欲しいものです。
しかしここ数年の経緯を見ると、
それじゃ意味ないじゃん!とか
結局骨抜きになるの?とか
忖度だらけだよね?とか
やっぱり現場に負担を押し付けるの?とか
机上の空論で終わるんかいとか
何だか腑に落ちない事は多かったです。
一進一退、行ったり来たりで、
このままで大丈夫なのかと心配ですが、
押し通すところは断固として押し通すんですよね。
勤務時間の合算。
これはどうやら押し通すようですね…。
・勤務時間の合算
副業・兼業の労働時間も通算される。
そもそも常勤先以外に
アルバイトとして非常勤やスポットの仕事を
普通にしてきた医師たち。
特に大学院時代は収入がなく、
アルバイトだけで収入を確保する時もありましたよね。
大学医局に所属している期間や
自治体病院に勤務している期間は
どうしても給与は抑えられる傾向にあり、
生活費を稼ぐためにバイトをせざるを得ないという
先生も少なくありませんよね。
しかしそれが長時間労働のひとつの要因であると捉えられ、
医師の健康確保の面からも望ましくなく、
適正な労務管理の阻害要因とされたわけですね。
こういう展開を見ると
官僚というのは個々の生活などはスルーして、
自分たちの目的だけはきっちり果たす。
まさに上に政策あれば下に対策ありで
我々はいかにして対策を練るかが問われてきますね。
ただ実態として
常勤先で何時間勤務して
バイトで何時間勤務をしたのか、
これを誰が管理するのでしょうか?
常勤先はバイト先まで把握できるでしょうか?
先生方は常勤先にどこで何時間勤務しているのかを
きちんと報告しますでしょうか?
洩れなく把握できるものでしょうか?
この辺りについては
どうやら現場に丸投げするようですから、
果たしてどこまで管理しきれるのか。
おそらく無理だと思います。
厚生労働省だけじゃなくて、
ホント我が国のお役所はいつまで経っても
昭和の時代と同じことしかできませんね。
書類が多すぎる。
ルールが多すぎる。
しかもズレてる。
現場の負担が増すばかり。
結果的にやりきれない。
問題になると処罰する。
でも問題は日本中で起こってる。
たぶん今回もお題目は立派だけど
どこまで実行できるものやら。
穴はかなり大きくなると思われます。
・時間外が加算されてバイト医を雇うか?
医療機関側の事情としては、
常勤医師だけでは現場が回らず
また常勤医師を採用するのは簡単ではなく、
定期非常勤の医師やスポットの医師に
頼らざるを得ないという実態があります。
特に当直は在籍医師だけで回らないケースは多く、
外部の力を借りることも多いですよね。
これからはバイトで来てくれる先生方の
常勤先での勤務時間を把握しなければならなくなるのですね。
そしてすでに常勤先で週40時間の勤務をしていたら
割増賃金を支払わねばならないのですよね。
もし80時間を超えていたら
勤務をしていただくわけには行かないのですよね。
医療機関は果たしてそれで回るのか?
割増賃金を支払う余裕はあるのか?
知人の医師は何も変わらないんじゃないかと
おっしゃっていましたけど
そうとも受け取れる稚拙な策にも見えますよね。
2024年…果たしてどうなりますでしょうか。
<参考>
雇用条件が悪化する時代に勤務医が今考えておくべきこと!?
2.常勤医師に手厚く報いて欲しい!
ざっと総論について述べてきましたけど、
「上に政策あれば下に対策あり」とも言いますし
私たちは実施される政策に対して
いかに個々が対応すべきかを考えねばなりませんね。
結局この問題は常勤の勤務先だけでは
収入が足りないところから出発しているように思えます。
大学病院や自治体病院での収入は適正なのか?
大学院生の待遇は現状のままでよいのか?
ここにメスを入れずに
医師の働き方改革を進めても
その実効力はあまりないかもしれません。
また収入面以外の待遇も
総合的に見直していかねばならないとも思えます。
個人的にはそれぞれの職場が
常勤医師に手厚く報いるという方針を
打ち出していくのが良いのではないかと考えております。
・当直明けには帰宅できる体制づくりを急ぐべき
収入以外の待遇改善で
できるだけ早期に実現して欲しいのは
当直明けの勤務をなくすことではないでしょうか。
若い時分ならいざ知らず、
さすがに40代、50代になってくると辛いですよね。
まして60代で当直をして
翌日も普通に勤務となると
これはもう疲労感が半端ないと思われます。
おそらくどの病院でも
その弊害はよくわかっているのでしょうが、
在籍医師数が少なければ
いかんともしがたいところもありますし、
ましてこれから非常勤の先生が雇用しにくくなるのであれば
さらに当直の負担は増しかねませんよね。
イチ病院だけで何とかできるものではなく、
それこそ地域の開業医の協力なども得ながら
適切な体制づくりを急いで欲しいですね。
当直がない、もしくは少ない、
当直明けは帰宅できる。
これだけで医師の招聘に有利となります。
ニワトリと卵はどっちが先かではありませんが
医師の在籍数を増やすのか、
当直の体制を整備するのか、
医師の働き方改革の実現のためには
避けて通れない施策なんですよね。
・当直、オンコールに手当てを加算して給与アップを実現?
千葉県の某総合病院さんの話しです。
こちらは中堅どころの規模であり、
自治体病院や大学病院とともに
市内の基幹病院のひとつとなっています。
大手法人のグループであり、
民間病院の良さを遺憾なく発揮しており
医師やコメディカルスタッフは当然のことながら
患者数も年々増えており、
入院ベッド数も増床が決まっています。
実はあるドクターの面接同行で
こちらの院長先生とお話ししていた時です。
うちは当直をしたい若手医師が多くて、
中堅からベテランのドクターには
原則としては当直に入ってもらわないんです。
もちろん希望されれば入ってもらうようにしますけど
それでも順番が来るのは月に1~2回です。
こうおっしゃっていました。
他では月に4~5回とか、
多い先生ですと月に7~8回なんて話しも伺うなかで
この病院は何でこうなるのだろうと思い
いろいろ質問をしていましたところ、
要は「当直手当」をしっかり出しているんです。
外病院でバイトをするよりも
内病院で常勤医として当直をしたほうが
有利になるくらいの金額設定なのです。
しかも当直明けは午前勤務までで
午後は帰宅できるんです。
だから皆さん競って当直をしたがるようなのですね。
私がお連れした先生も
当初はできれば当直はなしにしたいとおっしゃっていたのですが
この手当の金額を聞いて、
できたら自分も月に1回くらい当直したいと変わっちゃいましたから。
そもそもこちらの病院さんは
年収水準がやや高くて
他病院より選ばれることが多いのですが、
年収とは別に当直手当が支給されるので
外病院でバイトをする必要がないのですね。
常勤先1本で充分。
これこそが本来的な医師の働き方改革と言えないでしょうか?
できもしない(手間の掛かる)勤務時間の合算よりも
働いた分にしっかり報いる、そして医師の心身を労わる、
こういう策のほうが実効力があるように思います。
常勤医師の当直代は年収に込みという病院よりも
こちらの病院のほうが人気が出るのは当然ですよね。
こんなことを私ごときが言うのもなんですが、
医師の働き方改革の議論って
「管理」が最優先になっていて、
「現場目線」が入っていないように感じます。
上から目線のマネジメント志向なんて
現場では通用しないことが多いですよね。
それを何年も続けてきているのですから
医療現場を離れる医療従事者が続出しても
おかしくないと思うんです。
実際に看護師などは
有資格者のうち約半数しか
医療現場で働いていないと言われていますし、
医師ですら臨床現場から離れたがる方もいらして
産業医を志したり、
ビジネスを目指したりしているのですよね。
日本経済が停滞し続けて、
私たちの給料が先進国中最下位に落ち込むひとつの要因は
こんなところにあるのかもしれません。
官僚が管理したがるのは宿命みたいものですが、
そんな管理最優先で上手く行くわけがありません。
大事なのは現場です。
現場で働く医療従事者です。
この人たちの生活を守り、
やりがいを支えていかねば
どんな策を打ち出しても
絵に描いた餅になってしまうと思うのです。
私が思う医師の働き方改革は
現場を支えること。
もうこれに尽きると考えています。
<参考>
当直の順番が回ってこない病院といつもバイト医に当直してもらう病院の違い
*まとめ
医師の働き方改革…。
果たして今度どのようになっていきますかね?
産業革命に始まり
石炭から石油へ、
レコードからCDそしてデータへ、
IT革命でもそうですが、
改革、革命には痛みを伴うのが普通ですね。
いや痛みというか、
求められるのは柔軟な変化への対応でしょうか。
医師にとっては
足りない分はバイトをして稼ぐという
今回のタイトルにしたような行動は
今までごく普通に行われていました。
しかし2024年からは
もしかしたらそう簡単ではなくなっていく
可能性が高くなってきています。
医師の過重労働をなくすという
お題目に関しては賛成せざるを得ませんから
総論賛成各論反対のような議論になりがちですが、
こればかりは上に政策あれば下に対策ありというように
賢く対応するしかありませんね。
ただ私はよい常勤先を確保しておくことは
今後益々重要になっていくと思いますし、
もう1点、いつも述べていることですが
キャリアプランの重要性は飛躍的に高まると考えています。
臨床研修を終えた後に、
どんなキャリアプランを描くのか?
これによって大学医局への入局が必要になるのか?
専門医や学位を取得すべきか?
大学医局には何年くらい在籍すべきか?などが
決まってきますから若手時代から
キャリアプランを思い描くことが必要不可欠になってきます。
今までは若手時代は思い切りキャリアドリフトをして
多様な経験を身に付けて、
その上で30代後半から40代前半に
自分ならではのキャリアプランを確立すればよいと
私は医師のスケジュールを考えてきましたが、
今後は少し変わっていくかもしれません。
医師の働き方改革によって
皮肉のような話しですが、
今までのような働き方ができなくなります。
医師としての人生設計、
医師としてのキャリア設計を
早めに打ち立てることが
リスクマネジメントにもなるかもしれませんね。
それでは、また…。
*ジーネットTV 医師のキャリア(転職・開業)を語ってます!