「子どもを欲しくない」と思う私、変ですか？【劇団雌猫 愛と浪費のおなやみ劇場 vol.42】

平成元年生まれのオタク女子4人組からなるグループ「劇団雌猫」が、オタク心を持つ読者の日頃の悩みをズバっと解決。応募フォームに集まったお悩みに、メンバーである、かんさん、ひらりささん、もぐもぐさん、ユッケさんが月替わりで回答します。前回のお悩みはVol.41 地方への引っ越しをきっかけにオタ友と疎遠に。この寂しさ、どうしたらいい？

質問

今月の悪友: mimuさん

悩みというのは、全く子供が欲しくならないことです。どうも看護師として働いたこの10年の中で、他人のお世話をすることにかなり疲れてしまいました。耐え難い環境の中お給料がもらえるから…。と常にギリギリの気持ちで働いてきました。

お給料がもらえるからお世話する、という価値観が根付いてしまい、子供を産んだら無償でしかもつきっきりでお世話をしないといけないんだなぁ〜とぞっとしてしまいます。看護師でもお子さんがいるかたはたくさんいらっしゃいますし、自分の考え方はおかしいんじゃないのかなと落ち込むこともあります。

劇団雌猫からのアドバイス

今月の回答者: ひらりさ・かんさん

ひらりさ　今回はひらりさ・かんのペアでお送りします！

かん　2022年最後のお悩みかな？「年忘れ」と言いますし、このコーナーでお悩みも忘れちゃいましょう！

ひらりさ　「子どもを欲しくならない」というお悩みだけど、私とかんはどちらも子供がいないよね。そもそもかんは、人とこういう話、する？「子どもが欲しいか、欲しくないか」とか。

かん　自分からはしないなぁ。相手がどんな事情や気持ちを抱えているかわからないから。

ひらりさ　こっそり妊活している場合もあるし、なかなか話しにくいよね。結婚よりも話題にしにくいかも。

かん　でも、聞かれたら全然答えるよ。

ひらりさ　今、聞いてもいい？

かん　いいよ。私は全く産みたいとは思わない。

ひらりさ　それはどうして？

かん　理由は2つあって、まず痛いのが本当に苦手だから、出産の肉体的な負担を経験したくないのがひとつ。もうひとつは、自分が人間を生み出すという責任のところかな。自分が生きてきて大変だったこととか、なんとか命からがら乗り越えたこととか、ゼロからやるのか…って。

ひらりさ　そういう人は増えている気がするよね。今の世の中、「産みたいけれどいろいろな事情で断念している」という人だけではないのではとは思う。まあそこまででもないかなあと悩みつつなし崩し的に産まない方にしている人と、正直全く産みたくはないけどその潮流に合わせて産みたくない気持ちを隠している人もいて、出生率が低くなっているんじゃないかなって。わたしはそういうタイプ。

かん　私の場合は、夫と私の遺伝子が混じった人間がどんな人間なのか見てみたいとは思うけど、自分の好奇心を満たすためだけに人生を始めさせてしまうのは申し訳ないって思っちゃうのよ。

ひらりさ　なるほど。

かん　子どもを持ちたいっていう時に、自分の遺伝子を残したいのか、人間を育ててみたいのか、家族を増やしたいのか、生物学的な機能を使ってみたいのか、何が本当の欲求なのかをよく考えることは必要だと思う。

ひらりさ　相談者さんは「これ以上、人のお世話をしたくない」って言っていて、もしかしたらそれをすごく人間として大切なものが欠如している状態だと感じているかもしれないけど、私はむしろお世話をしたい欲がないってすごく健全な状態だと思ったんだよね。自立してるというか。

かん　なるほどなぁ。

ひらりさ　私の場合は一人だとなんかフラフラしちゃうから、ひとところにとどまって頑張る理由が欲しいと思って、猫を飼いたいなと人生で初めて思うようになった。ただ、それって本来一人で頑張れよって話じゃん。なので考え中！

かん　猫がいなくなったら大変になっちゃうもんね。

ひらりさ　でも人間は弱いから、守るものとか、託して期待するものが必要で子どもを欲しくなるのかな、とか思うわけよ。そう考えると、誰かをお世話したいと思わない相談者さんは健全だなぁと。

かん　たしかに。ただ、私も産みたくはないけど、脈々と受け継がれてきた遺伝子をここで絶やすことへの申し訳ない感情はあるなぁ。でもまぁ、先祖のほとんどはもう死んでるわけだから、実際のところは誰にも怒られないけど…。

ひらりさ　うちは従兄弟にはすでに子供がいるから、まぁ…みたいなことはうっすら思ってるところはある。でも、誰が産むかはわからないし、そもそも結婚してるから産みたいとも限らないからね。

かん　そうそう。実際私、10年結婚してるけど全然産みたくない。

ひらりさ　たださ、今の社会、産みたくないのってマイノリティ扱いになっちゃうんだよね、きっと。かわいそうがられるというか。だから、相談者さんが「自分が異常なのかも」と心配する気持ちはわかる。

かん　社会の風潮によるプレッシャーは少なからずあるよね。

ひらりさ　そもそもこういうことは全てが意思でコントロールできるわけではないし……。現代ではそれが女性の選択に委ねられて、自己実現と絡めて語られることがあるのを、辛いと感じる人もいるだろうね。

かん　それだけ社会が成熟してきたのかもしれないね。

ひらりさ　それこそ昔の女性は、専業主婦として人に養われるには子どもを産まなければいけない、みたいなプレッシャーがあったと思うの。だから、私はこの相談者さんの考えは現代の女性として自然だと思う。みんな敢えて口に出さないだけで、同じように考えているひとは多いんじゃないかな。

かん　子どもを産み育てるのって、無償でお世話するどころかめちゃくちゃお金かかるもんね。逆に、産み育ててる人がすごすぎるのよ。

ひらりさ　経済の問題だよね、普通に。産むのはどうしても女がしなくてはいけなくて、しかもお金もかかるんだから、それに対価が必要と考えるのはおかしいことではなくて普通のことだと思う。むしろ、みんな本来の水平線を思い出して欲しい。

かん　「本来の水平線」ってどういう意味？

ひらりさ　相談者さんの悩みの前提には、「無償」で女が「世話」をしなければいけない、という発想があるのかなあと。もちろん今はできるだけ公平に分担して育児をしている人たちもたくさんいるのだから、相談者さんは仮に分担したとしても嫌、ということかもしれないけど。

かん　たしかに。相談者さんは10年も看護師として人のお世話をしているわけだけど、それは全然違うやりがいがあるのかな。

ひらりさ　プロフェッショナルな対価が得られるのであれば嫌いではない、ということなのかな。ただ、「子育て＝無償の世話」という認識は少しもったいない気もする。

かん　いずれにせよ、どうしても産みたい人と、産みたくない人、感情面では全然理解しあえないこともあると思うけど、それぞれの人生や選択を遠くや近くで励まし合えたらいいよね。私だって、今は産みたくないけど、ある日突然妊娠したり、産みたいと思うこともあるかもしれない。その時に嘘つき扱いされると、きっと悲しいと思う。

ひらりさ　気持ちが変わることは全然あり得ることだよね。私も産んでないし産むつもりもあんまりないし、相談者さんには「あなたは別におかしくないよ」と伝えたい。今の生活に人間の世話をさらに足したくない、という気持ちもめちゃくちゃわかるし、逆にそれは今看護師として人の世話をすることに疲れているからであって、自分の生来の性質じゃない可能性もあると思うから、「自分は人の世話をしたくない人間なんだ」と決めつけなくてもいいのかも、とも思った。

かん　産みたくないなら、それでいいよ！

ひらりさ　それに尽きる！産む選択をした人もしなかった人も、選択にかかわらずどちらかになっている人も、みんなのこと応援してます！

☆次回ユッケ、かんが登場します☆
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