幹部は呆れ、社員は逃げ出し…日本電産 「永守帝国」の崩壊がついに始まった
7月20日の決算発表では、過去最高益をマークしたと発表した日本電産。しかし、同社のカリスマ創業者・永守重信氏(77歳)はこのところ、社内の状況に強い怒りを抱いているという。
「『ゆでガエル』集団」「計画達成のためには部門長は社員の先頭になって休日返上で、率先垂範で当たること。休むなどもってのほか」……永守会長が幹部に送ったという「檄文メール」には、そんな目を疑うような文言が並んでいた。さらに、永守氏が自ら日産から引き抜いた社長・関潤氏との対立も激化している。前編記事「『休むなどもってのほか』衝撃メールにア然…日本電産・永守会長の『復活』で社内は大混乱」にひきつづき、日本電産の内情をジャーナリスト・井上久男氏がすっぱ抜く。
永守会長への関社長の「反論」
永守氏が関氏を批判したのは、短期的な収益と株価を第一に考える永守氏と、「売上高10兆円」の目標達成だけでなく、全ての判断を永守氏に依存する組織風土の改革も同時並行で進めたい関氏との間に、経営方針を巡って食い違いが出始めたからだった。
ある幹部がこう語る。
「会長が『役員や幹部への賞与をカットしろ』と命じたのに対し、『業績が悪いわけではないし、これから売上高10兆円達成のために今まで以上に頑張ってもらうことを考えたら、社員に借りを作る局面ではない』と社長が反論したことも対立要因になったようだ」
要は、関氏はボトムアップで「脱永守商店」を進めなければ今後の成長はないと考えたのだが、これが永守氏には面白くなかった。氏のモットーの一つは「足下悲観、将来楽観」である。短期的に危機感を持って死に物狂いで仕事をすれば、将来は道が開けるという意味だ。
檄文を発したころから永守氏は関氏を遠ざけ、3月上旬までの4ヵ月近く、コロナが蔓延する欧州に追いやった。全体を見るCEOの仕事を事実上取り上げ、自身が経営の指揮にあたったのだ。
その間に、関氏の後継となる人材を再び外部に求めた。元三菱商事常務執行役員の吉田真也氏に白羽の矢を立てると、2月1日付で密かに顧問として次期社長含みで入社させたのである。