「ブスは自虐すら許されないの?」「美しく生まれた者にも地獄がある」ルッキズムをめぐる女性たちのリアル
自分の顔が好きになれなかった…
「どうしてブスが…差別されている側の人間が変わらなくちゃいけないんだよ!
本当に容姿差別があると思ってるなら 社会を…社会のほうを変えろよ!!」
近年、「ルッキズム(外見主義)」という言葉が広がりを見せている。日本で長く続いてきた「画一的な美の基準」で人を判断する価値観にようやくNOが突きつけられているのだ。そんなルッキズムをテーマとしたマンガ「ブスなんて言わないで」(とあるアラ子)が、SNSを中心に大きな注目を集めているのをご存知だろうか。1・2話を発信したツイッターの投稿は1.8万いいねを超え、様々な議論を巻き起こしている。
主人公の山井知子は、33歳のアルバイター。勤務内外問わず、帽子、メガネ、マスクを取ることなく、なるべく顔を隠して生きている。彼女には高校時代、ブスだからという理由でいじめられていた経験があり、それ以来、自分の顔を好きになれなくなってしまった。顔を隠しているのは、「これ以上、誰かに『ブス』って言われたら心が壊れてしまいそうだから」という。
そんな彼女だが、近年のルッキズム批判の風潮に一筋の希望を見出していた。
「明日はメガネなしで出勤してみようかな。辛くなったら途中でかければいいんだし!」
自分のトラウマと初めて前向きに向き合い始めていることを実感する日々。だがある日、ファッション誌のルッキズム特集を読んで愕然とする。そこに取り上げられていたのは、白根梨花。忘れもしない高校で自分をいじめていた主犯格だったのだ。
「ブスなんて一人もいない」(は? ここにいますけど?)
「自信を持ちましょう」(自信を失ったことないお前に何がわかんの?)
インタビューでそう語る梨花に知子は殺意を覚える。これまでに感じたことのない強い衝動に駆られ、知子の足は梨花の働くオフィスへと向かった。
「勝手に抹消すんなよ」
知子は梨花に記事冒頭の叫びをぶつける。
「美人にルッキズムの何がわかるっていうんだよ。いくらお前らが『自分に自信を持ちましょう』と喚き立てても、現実ではテレビでもネットでも雑誌でも広告でも、自分と真逆の顔の人間が美しいともてはやされている」
「『この世にブスなんて存在しない』ってなんだよ。都合が悪いからって勝手に抹消すんなよ。ちゃんと目ぇ向けろよ!」
知子の声にじっと耳を傾ける梨花。じつは梨花も知子のことを覚えていた。そのうえで(あんたは何もわかっていない。いまだに何もわかっていない)と心中で嘆息する。
「美しく生まれてしまった者には、美しく生まれてしまった者なりの地獄があるんだよ」
こうして二人の女性による社会を巻き込んだ「革命」が始まろうとしていた―――。美醜に深く切り込んだ問題作といえる「ブスなんて言わないで」。記事では、作者・とあるアラ子さんに作品の構想を聞いた。